第18話 信頼

青海が俺達の仲間になることになった。


青海が去ったあと、凍堂が話しかけてくる。


「青海さんを仲間にして良かったんですか?」


まあもっともな質問だな。


「別に心から信頼してる訳じゃない。アイツの能力は間違いなく役に立つから引き入れておいて損はしないだろ」


凍堂が珍しく深刻そうな顔をしている。なんだ?青海を仲間にしたことがそんなに問題か?同じ女子同士気が合うと思ったんだが.....


「それと、俺はあと少ししたら学校を出ていこうと思ってる。凍堂ともそこまでだな」


「え!?な、なんでですか!?」


こういう反応をするのは予想できていた。良くも悪くも凍堂は俺に信頼を寄せてくれているから。ホブゴブリンの時は自分で考えて行動したみたいだが、それでもまだ足りない。


「元々俺はレベルを上げたら学校を出るつもりだった。家族を探さなければいけないからな。お前もそうだろ?」


「そ、それは.....」


凍堂の表情が陰る。家族についてはあまり聞くべきでは無かったか?デリカシーが無いと言われれば否定できない。


「ま、そうじゃなくてもずっと学校にいるってわけにもいかない。食料にも限りがあるし何よりここにホブゴブリンよりも強力なモンスターが出てこないとも限らないし」


ショッピングモールを壊滅させたようなモンスターが学校に来れば、俺でも太刀打ちできずに殺される。そうならないためにも上げられるだけレベルを上げてここから撤収するのが俺の計画だ。


「だ、だったら!私がついて行っても問題無いですよね...?」


「.....本気で言ってる?俺についてくるなら俺の指示に従ってもらうよ?」


この問いに対する凍堂の答えは.....


「勿論です!」


当然こうだろう。わざわざ頼み込んで来たんだから。


「本当に?なら人を殺せるか?誰かを見捨てろと言われたら見捨てるのか?君にそれができるとは到底思えないな」


心にも無い言葉を吐き出す。こうでもしないと凍堂を納得させることはできないと俺は判断した。


「それ、は....っ!」


凍堂は悔しそうに下唇を噛む。それほどまでに俺に着いて来たいと思われるのは悪い気分ではない。それでもここは拒否しなくちゃいけないんだ。


「今決める必要はないよ。俺が出ていくまでにお前の考えを聞かせてくれ」


俺は立ち上がり凍堂から目を離すと、青海の方に歩いていった。そして、青海に話しかける。


「仲間になるからには相応の仕事をしてもらうぞ。お前には必要とあらば人も殺してもらう」


「分かっているわ。人殺しも貴方のように躊躇なく、とまではいかずともこなして見せる。私の名誉にかけてね」


凍堂にはああ言ったが、コイツにそんな気遣いをする気はない。.....まあ人を殺める必要が無ければそれにこしたことは無いだろう。


そう一言二言交わすと、俺は梶木の被害者達に向き直りこう告げる。


「後少ししたら体育館への移動を開始する。そのつもりでいてくれ」


俺の目の前にいる生徒から騒めきが広がる。被害者は15人にも及び、倉庫の中が窮屈なほどだ。早く出ていって欲しい。


凍堂のところに戻り目を合わせようとしない彼女に声をかける。


「そういえばレベル上がった?」


「え、あ、はい。三つ上がってました」


三レベルアップか。てことは今レベルは8。かなり順調だと言える。この調子でいけば凍堂が職業を手に入れる日も遠くないな。


「なら必要なスキルとかとった方がいいぞ。外じゃそんなことしてる暇もないから」


「えっと、何をとればいいですか?」


これだ。これが駄目なのだ。俺になんでもかんでも聞くべきじゃない。俺だって間違えるし、それじゃ知識が身に付かない。凍堂が自分でそのことに気付いてくれればいいんだが。


「魔法一択に絞るのもよし、近距離もこなせるオールラウンダーを目指すのもよし、だ」


そう言うと、凍堂は困ったように眉を顰めてステータス画面とにらめっこを始めた。


さて、俺もステータスを確認するか。


「『ステータス』」


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名前 戦場 蓮


性別 男


レベル: 14


職業 暗殺者アサシン lv.5


体力:2020 筋力:200 速度:270

防御:180 知能:166 器用:184


スキル

【無限魔力】【魂操】【短剣術 lv.7】

【察知 lv.8】【神童】【疾駆 lv.9】

【成長促進】【隠密 lv.3】【弱点看破 lv.5】

【体術 lv.3】【火種】

空間収納ストレージ lv.3】


称号

【先立つ者】【小鬼殺し】【狼殺し】

人殺マーダー


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結構上がったな。でも【人殺マーダー】これは不名誉すぎる。誰かに見られたら絶対警戒されるじゃねえか.....。新しいスキルは買えるのかな?


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取得可能スキル

・身体強化 II (40SP) ・投擲 (20SP)

・剣術 (20SP) ・槍術 (20SP)

・斧術 (20SP) ・弓術 (20SP)

・初級火魔法 (20SP) ・初級水魔法 (20SP)

・初級土魔法 (20SP) ・初級風魔法 (20SP)

・初級光魔法 (20SP) ・初級闇魔法 (20SP)

・直感 (30SP) ・初級回復魔法 (20SP)

・影操 (50SP)


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そこまで変わったスキルはないな。ていうか二つしか新しいのがない。【初級回復魔法】は確実に取るとしても、気になるのは【影操】だ。スキルの効果は文字通り影を操れるらしいけど、それの性能によりけりだよなあ。


50SPか。無駄になるかもしれないけど取っておこう。これで70SPの支出だ。まあ、まだまだSPはあるから問題ない。


どうやら凍堂も新しくスキルを取り終わったみたいだ。青海はまだSPがほとんど無いだろうからスキルについてはまだいい。


「凍堂。そろそろ行こう」


準備もできたし、体育館に出発するとしますかね。


俺は【空間収納ストレージ】から「純黒」を取り出し、ゆっくりと立ち上がるのだった。




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