一緒に住んでもいいですか?

「ルーはハウスバーモンドカレーでいいですよね?」

不意に言葉をかけられて俺は百合の方に振り返った。


そして軽く頷きながら彼女に微笑んだ。

「俺もバーモンドカレーよく使うよ。」


いつものカレーの香りがしてきて・・・

お腹が空いていた事に俺は気がつく。

仕事の疲れと空腹で俺のお腹が変な音をたてて鳴る。

変な音だったので彼女に聴かれるのが恥ずかしかったが、彼女はジッと鍋を見てかき混ぜていた。

少しだけ俺はホッとした。


ダイニングテーブルにカレーライスとサラダが並んだ。


「佐藤さんはカレーの付け合せは福神漬け派なんですか? それともラッキョウ派ですか?」


「俺、その日の気分で決めているんだ!」

こんな事言って俺の事を変な人だと思われないだろうか?

少しだけ不安になった。


「ヘェ~ そうなんですね~? それで今日はどっちの気分なんですか?」

彼女が普通に応えてくれてチョトだけホッとした。


「今日の気分は・・・ ラッキョウかな・・・」


なんだか百合がホッとした様に見えた。

「実は福神漬け買って来るのを忘れちゃって・・・ 福神漬けって言われたらどうしようかと思ったんです。」


「えっ? 福神漬けって言われたらどうするつもりだったの?」


彼女は「素直に買い忘れた事を言うつもりだったよ。」ってニコッと笑った。


いつも食べてるバーモンドカレーなのに今日のカレーライスは特別に美味しく感じた。

俺は頬張るようにカレーライスを食べ進める。


そんな俺をからかう様に彼女は言った。

「隠し味に私の愛情を入れておいたんだよ。 嘘で〜す。チョコをちょこっと入れておきまた。」


何だよ、"オヤジギャグかよ?"と思って彼女を見ると・・・

頬杖つきながらコッチを見ていて俺はドキッとした。


百合はそんな俺の気持ちを知ってか知らずか話し出す。

「昨日、『一緒に住まないか?』って言ってくれましたよね? 佐藤さんとなら良いですよ。」


俺は百合が言ってる内容が理解出来ずに少しの間固まった。


「一緒に住んでもいいですよ! というかココに住ませてください!」


百合にもう一度言われ、俺は彼女の目をジッと見た。

「職場が近いから?」


「もちろんそれもありますが、佐藤さんがとても良い人そうなので・・・」


「俺だって男だよ。襲われるかもしれないよ?」


「佐藤さんなら良いですよ。」


彼女の真剣な眼差しに俺はどう応えればいいのか迷ってしまった。

「そこまで俺のこと思ってくれたんだ、ありがとう。でもご両親が心配じゃないかな?」


「大丈夫です。両親の許可は取りましたから。」


なんだか話しが急すぎて疑いの目で見てしまう。


そのうち彼女は少しモジモジした様子で話しだした。

「えっと・・・」


「何? まだ何かあるの?」


「もう終電に間に合わない時間なので、今日泊めてください。」


「えっ、今日も? 俺の心の準備が・・・ 」


「心の準備なんて普通は女がするものですよ。佐藤さんが嫌なら諦めますけど・・・」


「横田さんの押しには負けました。」

俺は断る理由をいろいろ考えたが彼女を納得させる理由は思いつかず、また泊める事に成ってしまった。


俺の頭の片隅には遙の顔がうかんだ。

明日、会社でこの事をどう説明しようか?

また、ゆすられて何かをねだられるんじゃないのか?


ん? 百合と一緒に住んでれば遙が何を言おうが俺はある意味、責任を果たしている様に見えるのではないか?

俺は百合と一緒に住む事に成った事だけ明日隠さずに話そうと思った。 

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アフターダーク アオヤ @aoyashou

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