第3話 魔眼あげるので手伝ってもらえませんか?

「分かりましたから、天使さんも顔を上げてください」

「本当に顔上げていいんですか? 顔上げたら手伝わないとか言われたら困るので顔は簡単に上げられませんよ」


 この人いやこの天使はどんな性格の悪い物と関わってきたんだ、そんなこと言うもの絶対ロクな奴じゃないだろ。


「もっと詳しく話を聞かせてもらいますから、そのうえで判断します」

「じゃあ、失礼して」

 天使はそう言ってこちらの顔色をうかがいながら頭を上げる。


「それで、『この世界でも使える目』ってなんなんですか?」

「文字通り、城戸崎さんが生きている世界でも使える目です!」

「それは分かるんですけど、もっとなんか効果とかそういう事を教えてください」


「ハッ そうでした! こちらの世界で能力を与えようと思った事なんてなかったのですっかり忘れてました。

 『使える目』人によっては魔眼とかって呼ぶ人もいますね、例えば視力が2.8くらいまで上昇して人間じゃ届かない所まで見れたり」

 なんだか大層な名前とは違って、意外と微妙だな。


「そんな微妙だな、みたいな反応しないでください! 今からもっと凄い能力出しますから、驚かないでくださいね!いいですか?今から言いますからね!」

「分かりましたから早く教えてください」


「魔眼はですね、なんと探知能力を使うことが出来るんです!自分の思い浮かべた人の事を遠くからでも観測することが出来ます!」

「それは何というかプライバシーの問題にならないんですか?」


 人には誰だって知られたくないこともあるだろうに、本当に天使の言う『目』がそんなことが出来たら、人間にプライバシーなんてあったもんじゃない。


「プライバシー?なんですかそれ、天使や異世界にはそういった概念がないのです」

 明らかにしらばっくれるように天使は言う。


「流石に嘘ですよね? そんなダメな目簡単に人に上げちゃだめですよ」

「そう言わずお願いしますよ、天使助けだと思って見逃してくださいよー

 城戸崎さんも気になるでしょ? 好きな子が何してるかとか、ちょっとくらいなら見ても私の権限で見逃しますから~」


「さらっと凄いこと言いませんでした? 僕はそんな事しませんよ」

「なら尚更城戸崎さんみたいな人にこの目を使ってほしいなって、私は思うんですよ」


 さっきまでプライバシーを知らないと言っていた天使は白々しそうな態度をする。いや絶対この人、いやこの天使絶対手伝ってもらいたいだけだろ。


「まあとにかく、この目さえあれば転生する人を探すのには苦労しませんから手伝ってください! 最初手伝ってくれるって言ってましたしいいですよね?」


 それを言われると弱い、確かに最初は解決する方法を考えると発言した記憶がある。

「まあそれは、」

「言いましたよね?」

「はい。」

 渋々答えると目の前の美しい女は心底嬉しそうな表情をした。


「では、具体的な目の使い方や詳細はそちらの世界に戻してからお伝えしますね! また近いうちに!」

「あの、ちょ、まって、」


 こちらが全てを話終える前に、天使がどこかへ行こうとする。それと同時に太陽のような大きな無色の光が全身を包んでいき、思わず瞼を閉じてしまう。


 瞼を開いた瞬間、目に入って来た場所はいつも目覚める見慣れた場所、そう自室だった。

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