第22話 修羅場





「私はヴィス・ヴァルディ、冒険者している」


「冒険者様・・・なのですか?騎士様ではなく?」


「ああ、少々訳ありでね・・・まあ私の事はこれくらいでいいだろう?君は何者でここで何をしているのか知りたい」


「この国の男爵様に命令され奴隷を隣国に運搬していました・・・」


「その衣服は相当質がいいようだが“男爵”とやらの側近か?」


「はい・・・確かに私は男爵の側近と世話役をしています」


「今まで奴隷達をコッソリ逃したり匿ったりしてきましたが・・・今回私は男爵に逆らってしまいました、先ほど逃げた傭兵が私の行動を報告しているでしょう」


「何故、男爵に逆らった?」


「逆らっても君にメリットは無いんじゃないのか?」


「もう・・・嫌だったんです、私は孤児院で育ち先代の男爵様に引き取られました・・・なので恩に報いなければと従ってきましたが数々の非道な行いを手伝わされるうち罪悪感で押し潰されるようになって・・・」


 なるほどそれで今回、溜め込んだものが抑えきれずに行動してしまったという訳か・・・


「だが・・・」


「はい、分かっております・・・私のしてきた事は決して許される事ではありません、私の事はこの場で殺すなり役所に突き出すなりして頂いてもかまいません」


「なので、どうか・・・男爵を倒し奴隷達を解放してあげてくれませんか!!?」


「見ず知らずの冒険者の方にこのようなお願い・・・身の程を弁えない申し出であるのは理解しております・・・!」


「ですが・・・もうこのような事があってはいけないのです・・・どうか・・・」


「分かった、君の事を信じよう・・・だが解放した奴隷達はどうするつもりだ?」


「あ、ありがとうございます騎士様ッ!それなら奴隷を匿っている場所があります!」


「そのような場所が・・・何処にある?」 


「ここからはかなり遠いですが森の更に奥深くに男爵が放置した村があります」


「住人はもう僅かですがそこで奴隷達を匿ってもらっています、案内なら私にお任せください」


「待ってくれ、ここにいる囚われた者達も解放し村まで連れて行かなくてはなるまい?とりあえず牢から出してあげよう」


「!!いけない!すぐにカギを!」


「頼む」


 とりあえずここにいる人達をどう村まで運ぶか・・・あとこの件が片付いた時に行く宛のない奴隷達を管理する者が必要だろう・・・!!いや、目の前にいるじゃないか!。


「・・・・・・騎士様?」


「君、この件が片付いたら私に協力する気はあるか?」


「!!は、はい!もちろんです!奴隷達を救って頂けるならなんでも致します!!」


「そうか、ならば今から君と私は協力関係だ、よろしく頼む」


 よし、あとは乗り物か・・・。


「騎士様・・・本当にありがとうございます!!」


ーーギュッ


 !!?


「ヴァルディ殿!!こんなところ・・・に・・・」


「リゼ殿か、丁度よかった今終わったところだ」


「終わったって・・・女性と抱き合って”ナニ”が終わったんですか!!」


「ヴァ・・・ヴァルディさん・・・?」


「ヴァルディさんがニャ・・・」


「・・・大胆・・・」


「ルル!?見ちゃダメニャ!?」


「ヴァルディ・・・さん・・・」


 な、なんかあらぬ誤解をしてないか?確かにこの状況だと、いかがわしい事をしていてその余韻に浸っていると思われなくも無い。


「い、いや君達は誤解しているよ 話を聞いてくれ」


「じ、じゃあ今抱き合ってるのはどう説明されるおつもりですか!」


「落ち着いてくれリゼ殿これには色々訳がある」


「す、すいません!騎士様!ついご無礼を・・・」


「こ、この方達は・・・」


「私の仲間たちだ 安心してくれ」


「そうだったのですね・・・お一人だと思っておりましたがお仲間が・・・」


 お一人だと思ったって・・・確かに元ぼっちプレイヤーだけど・・・そんなにぼっち感出てるか?


「と、とりあえず抱き着いていた事は後でじっくり聞くとして・・・周りの死体は・・・」


「リ、リゼ・・・あれワイバーンの死体じゃないかニャ・・・!?」


 後が大変だな・・・。


「うむ、話すと長くなるのだが・・・」


「騎士様!ここは私からお話しさせて頂きます」


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「という訳です・・・どうか奴隷達をお助け下さい!」


「そんな事があったのですか・・・でも男爵を殺害するなんて国家転覆ものですよ!!?」


 リゼの言う通りだ中世で貴族といえば絶対的な権力者・・・基本的に冒険者なんて身分の低い者がどうこうできる相手じゃない。


 だが放ってもおけないしコネもないから力押ししか出来ないしな・・・一応作戦も”言い訳”も考えてある、なんとかなるだろう。


「安心してくれ、君達に迷惑はかけない それに策がある」


「君達はひと足先に王都に帰り今回の成果をギルドに報告しておいてくれ」


「え・・・?まさか騎士様がお一人で行かれるつもりですか!?」


「男爵の屋敷には鍛え上げられた衛兵が山ほどいます!しばらく待って頂ければ私のツテで戦力を手配しますから・・・」


「必要ない 数は少ない方がいい」


「でも・・・」


「仮にその戦力とやらの一人が捕まって拷問でもされたらどうする?」


「それは・・・」


「それに正面衝突は避けた方がいい、場合によっては国を敵に回す事になるからな・・・」


「そ、それでも一人なんて無謀です!!」

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