第6話 束の間の休息





「”宝物探知”(トレジャー・サーチ)!ここからは結構近いようだな・・・素早く回収して合流しよう」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「よし全て回収出来たな!脱出するか・・・“転移門”(ゲート)!」


「やはりゲーム内とこの世界の貨幣には差異があるか・・・」


「レアなアイテムは無かったがかなりの量の金貨が手に入った・・・流石に無一文はマズイからな、宝物庫に来て正解だった・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・


「そろそろ砦が崩れます!皆さんもっと離れて下さい!!」


「騎士殿はまだ戻ってこないのか!?」


「そろそろ砦が限界だニャ!」


「ヴァルディさん・・・!!」


「待たせてしまったかな?」


 後ろから声をかけると全員が振り返り驚いたように声をかけてきた。


「き、騎士殿一体何処から?入り口は一つしか無いはず・・・」


「ああ、もう崩れて分からないだろうが地上に出る抜け道が偶然見つかってね・・・おそらく非常時の脱出経路だろう 」


「そうでしたか!ご無事で何よりです!」


「君達も全員無事のようで何よりだ」


「君達はこれからどうするのかね?」


「私達は王都に戻ろうと思います 依頼を続行できる状態じゃないので・・・」


 王都か・・・さすが異世界だ・・・よし決めた! その王都に行ってみよう!


「そうか、クレア殿 ここに来る前に話した事だが・・・」


「は、はい! 案内して欲しい場所があるんでしたよね? ヴァルディさんは何処に向かわれるんですか?」


「実は私も王都に向かっている最中だったんだが、方向が分からなくなってしまってね、王都まで案内を頼みたいのだが・・・」


「・・・え?そ、それだけですか?他には・・・」


「いや、これだけだが?」


「「「「「・・・・・・・・・・・・(ポカーン)」」」」」


 な、なんで全員 口を開けてポカーンとしてるんだ? おかしな事でも言ってしまったのだろうか・・・。


「ヴァ、ヴァルディ殿・・・私達が言うのもおかしいですが、その・・・金銭などを要求したりは・・・」


 ああ、そういう事か・・・確かに救出した報酬が道案内だけというのは少し不自然かもな・・・。


 うーん、そうだな・・・そうだ! 金銭を要求する訳にはいかないし代わりにこの世界の情報を怪しまれない程度に聞こう、辺境の田舎から出て来たことにすれば王都の場所を知らない事の辻褄も合う。


「ハハ、金銭を要求するなどとんでもない ただ・・・私は辺境の田舎から出て来たものでね、この辺りの地理や金銭感覚などが分からない なのでそういう事を教えてくれるとありがたいのだが・・・」


「ヴァルディさんは変わった人ニャ・・・」


「わ、分かりました!よろしくお願いします!」


「ああ、よろしく頼む」


「「「「「よろしくお願いします(ニャ)!!」」」」」


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「そろそろ暗くなってきましたね まだ歩いてあまり経っていませんが今日はここまでにしましょう」


「ああ、この近くには川もあるしこの場所は開けていて丁度いいじゃないか」


「お腹ペコペコだニャ〜」


「・・・そういえば・・・食べ物・・・ない・・・」


「ニャ!マジかニャ・・・」


「そうだ!確か食料は盗賊達に捕まった時に・・・」


 食料がないのか・・・ゲーム内では”調理師”(コック)という職業がありゲーム内で入手できる食材を使い様々なバフがかかるアイテムを調合できたが・・・ここではどうなんだろうか?


「(ゴソゴソ)」


 アイテムボックスを開きその中を探るとぶにぶにした何かががあった。


 それを引っ張り出すと。


「(これは・・・)」


 下級食材の“肉”だ かなり大きく5人じゃ食べきれないほどのサイズだ。


「君達 よければこれを使ってくれ 多少の腹の足しにはなるだろう」


「ニャ!?デッカイお肉ニャ!(クンクン)いい匂いニャ〜!」


「き、騎士殿それはどこから!?」


「魔法で別空間にしまっていたんだ 自分に明確な所有権のあるアイテムしか出し入れ出来ないのが難点だがね」


「・・・空間・・・魔法・・・!?・・・すごい・・・」


「よければ使ってくれ 快く同行を許可してくれた礼だ」


「騎士様!ありがとうございます!」


「騎士さんはふとっぱらニャ!!今夜は宴だニャ!!」


「命を助けて頂いただけでなく 食料まで恵んで頂けるとは・・・感謝します!騎士殿!」


「・・・ありが・・・とう・・・」


「ありがとうございます!ヴァルディさん!」


「いやこの程度なら礼をいわれるほどではない・・・だが君達の感謝の言葉はありがたく頂いておこう」


「では早速調理するとしようか!といっても焼くだけだが・・・」


「もともと貴女は料理なんて出来ないでしょう?パーティーの料理はいつもボクがやっているじゃないですか」


「し、失礼な!私だって調理ぐらい出来る!!き、騎士殿違うんです!今は練習しているだけで・・・!」


 見た目通り努力家みたいだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る