第5話 力の差




「後悔するぞ!!


“貫通特性付与”(ブレイクスルー)!


”砕破特性付与”(ハード・ブレイク)!


“防御力上昇”(プロテクション)!


“魔法防御力上昇”(マジック・プロテクション)!


クックッ!今更降参しても遅いからなぁ?」



 武器を持っていない所をみると”拳闘師”(モンク)か・・・スキル的にもモンクがよく使うスキルだな。


「終わったか?わざわざ待ってやったんだ 楽しませてくれるんだろうな?」


「いつまでもスカしてんじゃねぇぞ!!オラァ!!!」


 丸太のように太い腕から放たれる拳には対重装に特攻のかかる2つのエンチャントが乗り 並みの騎士では上半身ごと吹き飛んでもおかしくないほどの威力を纏いこちらに向かってくる。


「き、騎士殿!避けてください・・・!」


「騎士様!」


「騎士さん!避けるニャ!!」


「避け・・・て!」


 クレアのパーティーメンバー達はそれぞれの言葉で回避するよう声を飛ばすが俺は回避行動を取ることなくその攻撃を受けた。


 ドカッ!!!!!という硬いものを殴った時の音と共に地面が砕け大量の瓦礫が舞い上がる。


「クックッ!感触はあった!今ので完全にくたばったなぁ?」


「い、いや !ヴァルディさん!!!!!」


 パラパラと舞い上がった瓦礫が牢獄の中へと降り注ぎしばらく経った頃 煙が晴れその悲惨な死体が露わになると誰もがそう思っていた。


 だがその予想は見事に裏切られる事となった。


「どうした?お前の攻撃は私に届いていないようだが?」


 パッシブスキルによる全攻撃耐性EXの効果により男の攻撃は見えない壁に阻まれていた・・・つまりバフを盛った攻撃すら”一定値以上の攻撃”には届き得なかったのだ。


「無傷・・・?」


「あ、ありえねぇ!!!!!俺の全力の攻撃が効かねぇなんて!!!!!無傷なんてあるはずがない!!!!!」


「さっきの自信はどこにいったんだ?私は実際にここに立っているぞ」


 さっきの攻撃には相当の自信があったのか男は取り乱し恐怖に怯えて後ずさりしている。


「う、うぁぁぁぁあ!!!!!く、来るな!!!!!化け物!!!」


「剣を使うまでもないな」


「ゆ、許して!!!助けてくれ!!そ、そうだ宝物庫の宝を全部やる!!それでどうだ!?」


 俺はそれでも歩みを止める事なく男に近づく。


「ひぃ!わ、わかった!今までの事は全部謝る!そ、それに俺は好きで盗賊の頭なんてやってるんじゃねぇ!他の盗賊達を痛めつけたら勝手にそう呼び出して・・・!!!」


 男は言い訳を連ね何とか生き延びようとするが 男に歩む足は止めない・・・そうして座り込んだ男の前に立ち無慈悲に攻撃の構えをとった。


「言い残す事はそれで全部か?」


 そう言い男の顔に向かって拳を繰り出すと ボンッ という破裂音と共に頭が砕け 脳漿が辺りに散らばり男は情けない最後を迎えた。 


「うっ・・・倒した・・・のか?」


「・・・倒した・・・?」


「やったのかニャ・・・?」


「・・・・!」


「す・・・凄いです!ヴァルディさん!!!」


「ありがとうクレア殿、君の案内のおかげだ」


「それよりリゼ殿・・・でよろしいかな?」


「ええ、そうです・・・貴方は一体・・・?」


「クレア殿から君達を助けて欲しいと頼まれてね 助けに来た」


「私は“ヴィス・ヴァルディ“よろしく頼む」


「傷を負っているようだな・・・確かポーションがあった筈だ」


 アイテムボックスを開き下級の回復薬を手渡す。


「これは!最高級のポーション・・・!頂けませんこんな高価なポーションなんて!」


「なに気にする事はない 私にとっては女性の顔に傷が付いているほうが耐え難い それに比べればポーションなど安いものだ」


「・・・そんな・・・私のような男女にはもったいない///」


「なに真に受けてるニャ!社交辞令に決まってるニャ!」


「(ギロッ!)」


「ビクッ!にゃ〜んて じ、冗談だニャ・・・」


「ゴクッゴクッ・・・!傷が治っていく・・・!!」


「気分が悪いなどはないかね?」


「は、はい!それどころか力が湧いてくるようです!」


「前に一度飲んだ時はこんな回復量は無かったのですが・・・」


「何はともあれ傷が治ったようで安心した」


「騎士さん私達も早く牢から出して欲しいニャ!」


「ああ、すまない君達もすぐにそこから出そう 待っていてくれ」


「騎士様カギならあっちの通路の奥に・・・」


「鉄格子を掴んでなにしてるニャ騎士さん?」


「ふっ!!」


 “ベキベキベキ”


「ニャ!?」


「嘘でしょう・・・?」


「!・・・!?」


「バ、バカな!」


 牢屋の鉄格子を両手で捻じ曲げたあと砦が限界を迎えたのかガラガラと音を立てて崩れ始めた。


「こちらの方が早いだろう?さあ、君達は先に脱出してくれ」


「騎士殿はどうされるのですか?」


「少し気になる事があるものでね・・・後から合流するとしよう」


「(まあ本当は宝物庫とやらにレアアイテムがないか探しに行きたいだけだけど・・・まあ期待できそうにはないが・・・)」


「(この世界じゃゲームの貨幣が使えない可能性があるし先立つものを確保しておきたい)」


「そうですか・・・分かりました!では私達は先に脱出しています!」


「ああ、気をつけてくれ、また後で会おう」


「「「「「はい!(ニャ!)」」」」」


 クレアが先導し彼女らは通路の奥へと消えていった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る