ツンデレ彼女はデレを隠せない

朝霧 紅魔

ツンデレ彼女はデレを隠せない

「鈴、帰るか」


学校終わり、俺こと、朝日和也あさひかずやは一ヶ月前くらいから付き合っている彼女、琴宮鈴ことみやすずを誘う。

鈴は黒く綺麗な髪を肩のあたりまで伸ばしており、まつ毛は長く目はぱっちりして、唇は赤くぷっくりとしていて、顔立ちはかなり整って、身体も年相応の成長をしており、出るとこは出て、身体のメリハリがついて、身長は俺の10センチほど下だろうか。


「あ!鈴!彼氏が来たよ!」


「あっ..」


鈴は友達の声に俺へ視線を向ける。


「一緒に帰ろうぜ」


俺が改めてそう言うと、鈴は顔を赤くしながら言う。


「べっ、別に和也が帰りたいなら帰ってもいいけど?」


鈴はそう言うと、俺の方へ来る。


「ま、まあ和也と帰んなくても私はいいけど?仕方ないから帰ってあげる」


鈴は口ではこんなことを言っているが、俺はそれが一緒に帰りたい、ということを指していることを俺は知っている。


「おう、行こうか」


俺はそう言って、軽く頭を撫でてやると、鈴の顔は更に真っ赤になる。


「や、やめてよ!別にそんなことされても嬉しくないし!」


と言いつつも顔はとても嬉しそうだ。

ところで、先程までの言動を見れば分かると思うが、鈴はいわゆるツンデレというものである。

付き合って間もない頃は、嫌われているのかと思っていたが、半年ほどするとそれは好きの裏返しだ、ということに気づいた。

しかし、それは俺の前だけで、他の人だと普通に喋れるが、俺と喋るとどうにも緊張してしまうらしい。

そんな素直になれない彼女もまた好きな理由の1つである。


「じゃあやめておくよ」


俺が鈴の頭から手を離そうとする途端


「あっ...」


鈴は先程までの勢いが一気に冷め、悲しそうに顔を曇らせる。

そんな様子を見て鈴の友達は「ふふ」と微笑ましそうに笑っている。

俺も鈴のそんな表情が可愛くて、少し意地悪をしたくなってしまうのだ。


「さ、帰ろうか、鈴」


「うん...」


俺が手を差し出すと、鈴は素直に俺の手を取る。

普段は素直にならないが、今はそんなことも気にできない程にショックだったのだろう。

鈴はまだ残念そうにしながら、校門を出る。


「そういや駅前に新しいケーキ屋ができたらしいぞ」


「あ!そこ知ってる!」


俺がケーキ屋の話を持ち出すと、鈴は途端に顔色が戻る。


「そうか、鈴も知ってたんだな」


「うん..」


そこから少し沈黙が流れる。

鈴を見ると鈴は何か期待したような目で、ちらちらとこちらを見ている。

おそらくそのケーキ屋に行きたいのだろう。

こういうところも俺の前では素直になれない様だ。


「どうかした?鈴」


俺は鈴の気持ちに気付きながらも、あえて気づいていないふりをする。


「えっ..と、ま、まぁ?和也がそのケーキ屋に行きたいなら行ってもいいけど?」


鈴はあたかも自分は行きたくないかのような雰囲気を出しながら言う。


「へーまあ俺は別に行かなくてもいいかな、また今度行こうか」


「え..うん...そだね..」


「あーでもやっぱ今日行きたいかも」


鈴があまりに悲しそうな表情をするので、流石に可哀想になってきた。

こういう時は俺から言ってやると、鈴はテンションが上がりながら乗ってくる。


「ほんと!!じゃあしょうがないなぁ!私もついて行ってあげるよ!別に私は行かなくてもよかったんだけどね!」


鈴は満面の笑みでそう言うと、俺の手を引っ張ってさっさと行こうとする。


(それじゃあ行きたいのバレバレだよ..)




「じゃあ早速食べよー!」


鈴は目を輝かせながらスプーンを手に取る。


「おう、そうだな」


俺たちは店のテラス席に向かい合わせで座りながら、ケーキを食べる。


「ん〜おいしっ!」


鈴は幸せそうな表情をしながらケーキを食べている。

ケーキを夢中で口に頬張っている鈴を見ると、こっちまで幸せな気持ちになってくる。


「ははっ、鈴は可愛いな」


「っ⁉︎..やめてよ..ばか..」


鈴を誉めると鈴は唇を少し尖らせ、耳まで真っ赤にして、目線を逸らしながらも、再びケーキを口に運ぶ。

そんな姿もまた可愛い。


「ほら、鈴!あーん」


俺は自分のケーキをスプーンで一口すくうと、鈴の口元へ運ぶ。


「えっ⁉︎..か、和也⁉︎そ、そんな突然...まだ心の準備が...」


鈴はかなり困惑し、今にも爆発しそうだ。

ちなみに、鈴にあーんをしたのはこれが初めてだ。

そのため、俺もかなり緊張している。


「ほら鈴、早く食べてくれよ、もしかして照れてるのか?」


「てっ!照れてないし!!言われなくたって、今から食べるもん!」


鈴はそんなことを言うが、俺がスプーンを鈴の口元に近づけると「あうあう..」と照れてしまい、なかなか食べない。


「早くしてくれよ鈴、持ってるのも大変なんだからな」


「わ、わかってるよ!こっちのタイミングでいかせてよ!」


鈴は少し深呼吸をした後、思い切った表情で


「あむっ!」


俺のスプーンに乗っているケーキを食べると、すぐに俺とは逆の方向を向く。

鈴はもぐもぐと味わっているようだが、俺の方に顔を向けようとしない。


「鈴?どうした?」


「なっ!なんでもない!」


鈴はそう言いながら、勢いよく振り返る。

その顔はとても嬉しそうで、ニヤけた口が閉じていない。


「随分と嬉しそうだな、俺もやってよかったよ」


「うっ⁉︎嬉しくないし!自意識過剰すぎ!」


「え〜?そうかぁ?」


俺はそんな鈴が可愛くて仕方がなかった。

俺がニヤニヤしながら鈴を見ていると


「っ〜⁉︎トイレ行ってくる!」


鈴はガタンッと音をたてながら、トイレの方へ歩いて行ってしまった。




「はぁ、美味しかったね」


「そうだな」


あれから少し雑談して、俺たちは今帰路に着いている。


「また今度食べにこようか」


「いいよ!和也がどうしてもって言うなら、私も仕方なく行ってあげるよ!」


鈴は上機嫌で答える。


「ああ、頼むよ」


「じゃあね!」


俺たちは別れ道まで来たため、鈴は俺と違う方向を向く。


「鈴」


俺は少し鈴を呼び止める。


「なに?」


「好きだぞ」


「..ふぇっ⁉︎」


俺が突然好きということを伝えると、鈴は顔を真っ赤にして、とても焦ったような表情をする。


「じゃあな」


最後に鈴の可愛い表情が見れて満足した俺は、自身の帰路へ着き、家へ向かって歩く。


「..私も..好きだよ...」


鈴が俺の去り際に言った言葉は、俺の耳に入ることは無く、夜の空へと消えていった。






〜あとがき〜

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