第9話 華凛のてぇてぇ計画

「~♪」

 

 風呂上がり。華凛は頭を拭きながら、ご機嫌に鼻歌を歌っていた。そして着替え、自分の部屋に行くと明日のキャンプの用意を再度チェックする。

 

「よし……と。明日のキャンプ楽しみですな」

 

 ふふふ、と華凛は一人微笑む。

 

「しかし、愛美もやればできるじゃーあないですか」

 

 華凛は誰目線なのか、そんなことを言う。先日。愛美が陽太にゴールデンウィークに遊びに誘ったことをすぐさま部活で華凛に言っていた。多分彼女は努めて冷静に何でもないように言っていたのだが、どう見てもドヤ顔だったその表情を愛美は思い出して笑う。

 

「んーキャンプなら陽ちゃんも気軽に来れるし、何とか陽ちゃんと愛美の二人の時間も頑張れば作れるでしょ」

 

 そして華凛は愛美にすぐさまキャンプに行くことを提案したのだ。キャンプなら当日各自に様々な役割分担があるし、そこでの分担で必然的に二人きりにもなれる……と力説した。その話を聞き愛美は目を輝かして了承した。その後はLINEグループを作り、4人で当日について話し、あれよあれよと話は進み、主に華凛主導で当日の手配などを進ませたのだった。

 

「あ、武瑠?」

 

 そして華凛は武瑠に電話をかける。そして明日のキャンプについて話し合い少しの間雑談をする。

 

「そういや華凛」

「ん? どしたん?」

「あの二人……というか正確には川瀬さんだけど……」

「あーまあ考えてる通りで合ってるよ」

 

 華凛は軽い感じで答える。その反応に武瑠がため息をついているのが電話の向こうから聞こえる。

 

「そういうことね……ということはもしや今回のキャンプはあの二人の仲をくっつけるっていう意図があるのか?」

「うっ……まあ、そうなりますね。あ、でもみんなでもちろん遊びたいって言うのは本当だよ! ……えーと怒った?」

 

 華凛は少し気まずそうに聞く。考えてみたら武瑠は自分たちの都合に無理やり巻き込んだようなものだ。ある意味騙して、利用していると言われても間違いはない。そのことに気づき配慮が足りなかったと思い至る華凛だが、武瑠は笑い飛ばし

 

「いや、別に。みんなで遊べるんだ。異存はないよ。それに華凛と遊ぶのも久しぶりだし、川瀬さんともあんまり話したこと無かったしこれを機に交流できるのはいい。それに親友に春が到来しそうなんだ。嬉しく思うことはあれ不快に思うことなんてないよ」

「おお。さすがはモテ男の武瑠。噂は聞いていますよ~」

「からかうなよ……」

 

 まいった、というような口調の武瑠に華凛はあはは、と笑う。

 

「それにしても……愛美のこと、いつから気付いてたの?」

「んー。まあ、最近。なんとなく、ってレベルだが。今回キャンプに誘った時なんだけどさ」

「うん」

「なんか違和感感じて。お前なら一気にみんなを勝手にグループ招待して遊びに行こーって誘いそうだし。で、違和感感じて翌日の川瀬さんを見たら……あーそういうことねってなった」

「いや、察し良すぎんか?」

 

 華凛は思わずジト目になる。

 

「ははは。でもこれでよかったろう? どうせ川瀬さんが陽太を誘うってことでわざわざ最初は別で連絡してたんだろ?」

「はは。そうだね……ナイス」

 

 まったく……と華凛は思わず苦笑する。

 

「っと……もうこんな時間だ。遅いしそろそろ寝るか」

「そーだね。また明日」

 

 そして華凛は通話を終え、ベッドに入る。

 

「さてさて。どーなることやら。とりあえず二人の仲を見てるだけで楽しいので極力手は出しませんけど♪」

 

 ふふふ、と華凛は楽しそうに笑い眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る