第8話

 学園からマンションに帰るまで愛菜はモジモジ……と、落ち着きの無い様子だった。彼女はマンションの部屋に入るなり、急いでドアを閉めると寛に飛び付く様にして激しくキスを迫る。


 チュウ……


 彼女は、キスするなり頰を紅潮させて興奮した表情で、寛を見つめる。愛菜は顔を俯かせて困惑した表情をしていた。


 「どうしたの、病気なの?」


 彼女は黙って頷く。


 「医者に行く?」


 「ダメよ……これは、私個人の問題なんだから、お願い……私を愛して、イッパイ……イチャイチャして欲しいの……」


 「分かった……」


 寛は少女を抱き抱え、ベッドの上へと彼女を横にして、そのまま愛菜を抱いた。


 二人はしばらくベッドの上で一緒だった。


 ピンポン


 玄関のチャイムが鳴り出した。


 寛はドキッとして、急いで玄関のモニターを見ると、オートロックの前には今日、学園で会った大野瑠美の姿があった。


 「今日、学園で会った子が来た!」


 「え……何で、ここに来たの?」


 寛に抱かれた愛菜は、直ぐに起き上がれなかった。彼にイチャイチャされたばかりの愛菜は、直ぐに起き上がれなかったし、衣服も着てなかった。


 「帰ってもらってよ……今の、こんな私……誰かに見られるなんて、イヤよ……絶対に」


 「分かった」


 寛は、モニター越しから挨拶する。


 「や、やあ……どうしたの?」


 「中に入れて、お願いだから……」


 「え、どうして?」


 「貴方に会いたいのよ」


 「それは……?」


 「いるんでしょ?今日、学校見学に来た子が……」


 「そうだけど……君は、何故、僕に会いたいの?」


 「私……貴方が好きになっちゃったの……お願い、私を愛してくれる?」


 「そ……それは、ちょっと……」


 「ダメなの?そう……分かったわ、じゃあ、今日学園に来た子と貴方がイケナイ事をしているって、明日学校中に言い振らすわよ」


 「それは困る、それに何で、そう思えるの?」


 「簡単なことよ、今日……彼女が学園で、貴方の元に戻る時、彼女は人目を気にせず貴方に抱き着いた……と、言うことは、既に貴方とは友達以上の関係が予測できるわ。それに……二人だけで生活している、て言うとなると……普通に考えて男女が生活していて、何もしない訳無いでしょう?まさか……性的な関係無しで生活するなんて有り得ないよね?普通に考えて……」


 瑠美の言葉に寛は焦った。まさか……此処まで考えているとは、予想しなかった。


 「じゃあ、早く玄関開けて中に入れてよ。何時まで私を此処に置いて置くわけなの?入れないなら、私……このまま回れ右するわよ。そう言えば、この近くに交番があったわね。私がお巡りさんに貴方が少女とイケナイ事してる……なんて言ったら、どうなるかしらね?」


 「わ……分かった、入れるよ」


 「だったら、早く開けてよ!」


 瑠美は大声で言う。仕方なく寛は玄関を開ける。


 「悪い、ちょっと相手と話して来る」


 「絶対に、部屋に入れないで……」


 「分かった」


 寛は玄関を出て、エレベータの前まで行く。


 しばらくして瑠美がランドセルを背負った姿で現れて、彼と会うなり抱き着き、背丈の大きい寛に背伸びしながら口付けを交わす。


 「部屋に入れて、そしてイッパイ私を愛して!」


 「ま……まって、今日は、その……」


 「部屋に入れてくれないなら、私……一晩中、貴方の部屋の前に居るわよ」


 「それは困るよ……」


 「あんな女が良くて、何故私はダメなの?」


 「それは、その……」


 返答に迷う寛に瑠美は両手でドンと彼の後ろの壁を両手で叩いた。


 「部屋に入れるの?入れなの?どっちかハッキリしなさい!」


 「分かりました。部屋に入れます」


 「素直で宜しい」


 彼は瑠美に逆らえず、部屋に入れる事に決めてしまう。

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恋人達の関係 じゅんとく @ay19730514

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