若紫(わかむらさき)

 病にかかった源氏は、加持のために北山を訪れます。そこで、密かに思いを寄せる藤壺にどこか似た少女を垣間見ます。少女の大叔父だった僧都そうずによると、少女は兵部卿宮ひょうぶきょうのみやの娘で、正室の嫌がらせに病んだ母の死後、祖母の尼君に養育されたといいます。この兵部卿宮は先帝の皇子、藤壺の兄です。つまり、少女は藤壺の姪だったのです。源氏はこの少女、若紫の後見を申し出ますが、あまりに歳が離れているため尼君は冗談だろうと思うのでした。


 4月、藤壺が病で実家に戻ります。源氏にとっては再会する千載一遇の好機でした。源氏は藤壺に仕える女性、王命婦おうみょうぶに、執拗に藤壺のもとへの手引きを頼みます。それに折れた王命婦は源氏を手引きしてしまいますが、この時、ついに源氏と藤壺は逢瀬を交わしてしまいます。源氏は父帝のきさきに手を出してしまったのです。その後、藤壺は源氏からの文も拒むようになりますが、このとき既に彼女は源氏の子をその身に宿してしまっていたのです。


 秋、若紫の祖母である尼君が亡くなります。若紫は父の兵部卿宮に引き取られることとなるはずでした。しかし、源氏はこれに先んじて若紫を連れ去り、藤壺の代わりに、理想の女性に彼女を育てることを決めるのでした。



登場人物

若紫・・・のちの紫の上。源氏にとってはとても大切な女性となる。

兵部卿宮・・・紫の上の父。藤壺の兄。この時点では娘が源氏に養育されていることを知らない。正室に配慮して若紫をかえりみないためもあって、源氏とは決して親しい関係ではない。

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