捨てる人あれば拾う魔王あり

紅 蓮也

第1話 魔王、幼女を拾う

 我は、第六十六代目の魔王であるシルフォール・カエサルだ。


 世界中に世界征服をすると宣言だが、自分でやる気はない。


 この世界で、最も多い種族は人族で、人族の国が最も多いが百年も生きられない短命種で、力も種族で最弱だ。

 たまに勇者や賢者、聖女など強力な力を持った者も現れたりする。


 逆に魔族は、そこまで多くないが、強力な力を持ち、何千年、長生きの者は一万年以上生きている長命種だ。


 他にもエルフ族、妖精族、精霊族、小人族、巨人族、ドワーフ族、獣人族などの種族がいるが、人族は、自分たちが一番という考えの者ばかりなので、他種族を差別したり、奴隷にしたりしているので、魔帝国の属国となり、争いは人族対他種族という感じだ。


 なので人族側では、魔族以外の種族も魔族として認識している。


「勇者たちが、魔王城に来ておるみたいだし、城下の街にでも出掛けるか」


 そして、魔王城を抜け出し、街に出掛けたルシフォールは、人族の子供を見つけた。


「人族の子供じゃな。こんな小さな子供がどうして魔帝国におるんじゃ?」


 魔族の国に人族の小さな子供が一人で、来ることなどあり得ぬことである


「子供よ。言葉は話せるか?名は何という?」


「ルーシー・フォン・リヒタニア。リヒタニア王国の王女です」


 聞くと幼女の名は、ルーシー・フォン・リヒタニア。リヒタニア王国の王女で、年は五歳。


 髪と目が黒いため、そして生まれてくすぐに言葉を話せたので、不気味がられ、家族からも国民からも忌み嫌われていたてきて、父である国王の命で、騎士に魔帝国に連れてこられて、捨てられてしまったらしい。


「自分の子を捨てるなど愚かなことだ。こんなに可愛らしいのにな」


 ルシフォールは、そう言ってルーシーの頭を撫でながらルーシーを鑑定した。


(鑑定)


 名前:ルーシー・フォン・リヒタニア


 種族:人族


 年齢:五歳


 称号:リヒタニア王国の元王女、転生者


「!!……なんとルーシーは、転生者であったか」


「!!」


 我がそう言うとルーシーは、驚いた顔した。


「すまんな。鑑定魔法で鑑定させてもらった。

 これでも魔王だかな。小さな子であったとしても全て真実を話しているかわからないからな」


「危険を回避するためだよね。気にしないよ。

 魔帝国に人族の子供が一人でいるなんてあり得ないからね」


「そうである。ルーシーよ。よかったら我と一緒に来るか?

 我がルーシーの新しい父となってやる」


「私は助かるけど、魔王さんはいいの?私は人族だよ」


 あまりの可愛さにルシフォールは、ルーシーを我が子として育てることにした。


「構わぬ。ルーシーは、リヒタニア王国に復讐したいと思っているか?」


「うん。見た目とかだけで、差別して、更に捨てるような親も国民も居なくなっちゃえばいいって思っている」


 しかし、リヒタニア王国の国王も愚かなことだ。

 黒髪や黒目は、魔力が高い証だというのに、その事を知らぬのだな。

 そういえば、リヒタニア王国以外の人族の国々でも黒髪や黒い目の子は、差別されていると聞くな。

 魔族が黒髪、黒目だからなのであろうな。


 ルーシー以外にも同じような子供がいるなら助けてやるのもありだな。こちらの戦力にも出来るしな。


 そして、やる気の無かった世界征服に乗り出すこととルーシーの様な子供をこちら側に引き入れる決意をするルシフォールであった。


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