モブ村人俺、魔王と勇者を従え黒幕になる ~【究極属性付与】スキルで助けてあげたら彼女達は俺に夢中です。なので二人が戦わなくて済むよう八百長する事にした~
第3-4話 王都近くに突然新ダンジョンが!? というシナリオ
第3-4話 王都近くに突然新ダンジョンが!? というシナリオ
「ふむ……やはりお前はキャラが薄いな、あと胸も」
「!?!?!?」
「聖剣エクスカリバー並みの切れ味!?」
「う~~~、いきなりなんだよぉラン」
「すまん、俺も緊張していてな……幼馴染の軽いじゃれ合いという奴だ」
「罵倒のキレは全然軽くないよ!?」
わふっ!(思わず吹き出すポチコ)
最前列に並んだ俺たちは、緊張を紛らわすため小声で会話する。
ここはライン王国大聖堂の大広間。
俺たちの背後には世界各地から集まった勇者候補たちが整列している。
そして、大広間の奥に設置された壇上に上がるのは……。
(おお……あれが)
(世界初のSSS+ランク到達、人類の守護者と言われる大長老だ……)
背後の勇者候補たちが僅かにざわめく。
ライン王国の国王すら跪く圧倒的な権威。
数十万を数える冒険者の頂点……魔王対策の総責任者でもある大賢者ウルテイマである。
「ふ……ふおおおお……後光が差してる……」
ミーハーなルクアが俺の隣で感動に打ち震えている。
かくいう小国のギルド職員な俺も、直接見るのは初めてだ。
「人類の希望……勇壮なる勇者候補の諸君」
良く通る渋いイケボが大広間にこだまする。
「予想外の事態が起きた。 落ち着いて聞いて欲しい」
シン…………憂慮を含んだ大賢者の声に静まり返る大広間。
多分あの事だろうな……次に大賢者から放たれる台詞の見当がついた俺は微妙に居心地が悪い。
「……ここ数百年以上、魔王軍が利用するダンジョンに変化はなかった」
「冒険者ギルド対魔王対策特務機関の分析では、勇者をダンジョンで排除するより、四天王など側近の実力で排除する方針に変化したのだと考えていた」
「だが10日ほど前……魔王軍は数百年堅持していた方針を突如転換し、新しいダンジョンを……しかも各国王都の近くに出現させたのだ!」
うむ……知ってた。
馬鹿な!?
話が違うぞ!?
驚きの声を上げる勇者候補たち。
ダンジョンに変化がなかったのは魔界資材の値上がりのせいで、新ダンジョンが出現したのは魔王フェルーゼの方針転換と俺の助言のせいなのだが、この事実をまだ公開するわけにはいかない。
「うっ、うおおおおおっ……人類のピンチだよラン!」
わふわふんっ。
隣で驚愕に打ち震える勇者ルクアとは対照的に、何かを察したポチコは尻尾をぶんぶんと振る。
大賢者ウルテイマの演説は続く。
「だが案ずるな若人たちよ!!」
「われら特務機関の解析により、迷宮の最深部には今次魔王軍に特別攻撃属性を持つ武具の存在が確認された!」
「これぞ、我らを救い給う女神の恩寵である!!」
「立てよ勇者たち!! 魔王軍の企みを打ち砕き、伝説の武具を人類の希望とするのだ!!」
うおおおおおおおおっ!
武器を掲げ、鬨の声を上げる勇者候補たち。
全ての事情を知っている俺も一応拍手をしておく。
あの武具は女神の恩寵などではなく、勇者候補を釣るエサなのだが。
「ラン……わたしもう我慢できないよ!」
微妙にしらける俺の隣で、感動のあまり頬を紅潮させたルクアが、くるりと後ろに向き直る。
何をするのかと思っていたら……。
「勇壮なる勇者候補の皆さん!!」
「ボクは仲間たちと共に”空詠の塔”に巣くっていたレッドドラゴンの耐性を打ち破ることに成功しました!」
「新しいダンジョンに眠る武器が手に入れば、ボクたちの誰であっても魔王軍を打ち破ることがかないましょう!」
「ボクたちはライバルでもありますが……魔王軍討伐を志す仲間でもあります!」
「ボクも全力でダンジョンに挑みますし……手に入った武器がボクの攻撃属性に合わなかった場合、よりふさわしい勇者にそれをお譲りすることを誓います!!」
「「おおおおおおおっ!?」」
拳を振り上げて宣言したルクアの勇ましい姿に、称賛の声が四方から浴びせられる。
「己の名誉より人類全体の利益を優先する……勇者候補ルクア殿、貴殿のレベルはまだ低いが、志はまさに真の勇者……貴殿が早く勇者の理に至れるよう、我々もより厳しい試練を貴殿に与えよう」
「はっ!! 光栄でありますっ!!」
うおおおおっ、勇者ルクアを我らも見習うぞ!!
もっと修行して一刻も早く新ダンジョンを突破して見せる!!
渦巻く熱狂が大聖堂を焦がす中……ルクアは誇らしげに右手を振り続けるのだった。
ウオオオオオオオンッ!!
神狼の遠吠えが、その神々しい姿に彩りを添えた。
*** ***
「うにゃああああああっ!? またやっちゃったよぅ!?」
「大賢者様からすっごい凶悪モンスターの退治を承っちゃったし!!」
くぅ~ん!!
ごろごろごろごろ
王都の宿に戻った途端、頭を抱えて床を転げまわる一人と一匹。
毎度毎度飽きないものだと感心するが、今回だけは都合がいい。
新ダンジョンは魔王様謹製なので、女性勇者であるルクアと相性が悪い。
今後の事を考えて、モンスター退治でレベル上げすることの方が大事である。
「まあ心配するな……新しいダンジョンには思わぬギミックがつきものだからな」
「他の勇者候補がある程度探索してから挑戦するのがいいだろう」
「それにな、これは俺の勘だが……魔王軍が500年ぶりに設置した新ダンジョン、何か恐るべき罠が仕掛けられている気がするんだ」
これは半分正しく半分誤りである。
魔王フェルーゼと四天王ポンニャがダンジョンの第9階層に何かスペシャルなギミックを設置していたが、その内容は俺も知らない。
彼女らの魔法技術が高度過ぎて理解できなかったのもあるが、俺が新ダンジョンのすべてを把握するのはマズいと考えたからだ。
特に3つの新ダンジョンにはたくさんの勇者候補がチャレンジする。
どうしてもほかの勇者候補と顔を合わすことになるし、思わぬところから秘密が漏れかねない。
俺たちはボッチパーティで動くのがベストなのだ。
「それよりこの後は晩餐会だろ?」
「冒険者ギルドが総力を挙げたスイーツの数々、楽しみだな!」
「……ランのその図太さ、ある意味凄いと思う」
わんわん!
全ての事情を知ってる俺と察しているポチコ、何も知らないルクアの凸凹コンビは、意気揚々と晩餐会へと出撃するのだった。
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