11話 言い返す話

「君は? 」


ヴォルフガングは再度振り返り、そう尋ねる。


「つい最近編入してきました。アレンっていいます」


僕がそう答えるとすぐに会得顔になり、ヴォルフガングは軽く頷いた。


「君が、噂の編入生か。で君も何か言いたいことが? 」


少し高圧的な口調で喋るヴォルフガングの肩には意識を失ってダラッと脱力しきっているナナリの姿があった。


僕は自分もそうなるのではないかと少し怖気づきそうになったが、奮起する。


「確かに冒険者になれば全うしなければならない責任があるというそのお話はわかります。でも、たった1回の失敗で退学にしてしまうのは違うのではないでしょうか? 」


僕は落ち着き払った口調でそう言った。


それを聞いたヴォルフガングは見るからに面白くなさそうな顔をして僕を睨みつける。


「これだから、現場を知らないガキは…… 実戦ではそんな甘えた考えが多くの悲劇を招きかねないのだ。たった1回? されど1回だ。その一瞬の判断で一般人を危険に晒すことになるのだ! 」


メキッという音ともにヴォルフガングの立っている場所の地面にヒビがはいる。


ただ乱雑に放った魔力だけでこの圧力…… とんでもないな?


もしかしてヴァルナダさんにもこんな圧は感じなかったぞ。


僕は反射的に吹き出る脂汗を手首で拭い、ゴクリと唾を飲み込んで、話を続ける。


空気が乾いていたのか、唇が少し引っ付いて口を開く時少し手こずる。


唾液の足りていない舌をどうにか動かし言葉を紡ぐ。


「でも、それならこの学校という場所の存在意義が失われてしまうのではないですか? 」


予想だにしていなかったのかヴォルフガングの圧力が少し弱まり彼は首を傾げる。


「存在意義? 」


「はい、ヴォルフガングさんは学校とはどのような場所だと思われていますか? 」


「質の高い教育をして、世間で活躍できる優秀な人材を育成する場所… 」


「そうですね、それもそうだと思います。でもその教育には失敗を経験させるということは含まれていませんよね? 」


「なんだと? 」


「学校っていうのは安全な失敗を経験させる場所でもあると思んです。1度失敗してしまうととても辛い思いをします。 でもだからこそ次はそうなことにならないようにしようと成長していくのだと思うんです! 」


僕は魔力もスキルも持っていない。


生まれながらにして失敗している。


誰かにそう言われたこともあったし、実際に人が当たり前に出来ることが出来ずに何度も失敗してきた。


でもその度に他のことでカバーして何とかやって来たんだ。


やってこれたんだ。


誰にだって失敗の先にこれからが待っている。


だからまだ学生で未来があるからこそここで終わらせちゃならない。


「面白い。 7組の生徒が1組、いや生徒会の行動方針に意見するとはいい度胸だ。ここの7組の生徒達はみなそれぞれ何処か他の生徒達より欠けている。失敗していると言ってもいいだろう。そんな生徒であっても成長し高ランク冒険者として活躍することができるとでも言うのか? 」


「はい、少なくともAランクには到達できる才能はあると思います」


僕は即答した。


「ハハハハ!! 面白い。その度胸に免じてナナリは見逃してやろうじゃないか? 」


その場に一瞬だけら歓声のような声が響いたが、その声はヴォルフガングの次の言葉によって真逆のものとなる。


「ただ、お前の言ったことが本当かどうか試させて貰うことにする――クラス対抗戦をたのしみにするといい」



<あとがき>

できるだけ高頻度にしたいですが、3日に1回がベースです!

水曜日、金曜日、月曜日です!(土日もするかも)

投稿時間は20時です!


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