9話 意外な決着の話

“色つき”とはある魔力が一定のレベルを超えると、他者にも魔力を視覚的に感じることが出来るのだが(オーラという)、自身の属性を高いレベルまで研磨した魔術師はその属性の色がオーラに現れる。


つまり、魔法の鍛錬をかなり積まなければ至ることの出来ない領域なのだ。


「何で、お前みたいなやつが! その領域に至ってんだよ! 」


ナナリは歯を食いしばりながら地面をダンっと踏みつける。


7組も5組も先生までも驚き声がでないようだ。


「な、なぜ色つきが7組なんかに… 」


ポイ先生は驚きすぎてその場に尻もちをついていた。


「す、すごい… 魔力が滞りなくスムーズに流れるこの感じ、初めて」


レイナさんも自身の力に驚きを隠せていない。


「お前なんかが、お前なんかが! 」


ナナリは杖を振り、召喚獣に指示を出す。


その瞬間熱風を放ちながらその召喚獣は真っ直ぐレイナさんの元へ駆け出していく。


その足が地面を蹴る度、そこの植物はたちまち燃え上がる。


丁度日も暮れかけており、その炎から放たれる光は辺りを煌々と照らす。


「逃げて! レイナさん! 」


「レイナ! 逃げろ!! 」


うちのクラスの生徒達は声を張り上げてそう叫ぶ者、固唾を飲んで見守るものに別れていた。


5組の生徒達は唖然としたように口をあんぐりと開けているだけだった。


だが、その場でもっとと冷静なのはレイナさんだった。


レイナさんは瞑っていた目を開けると、スゥーっと空気を吸い込むといい感じに脱力したような声で―


水魔法イージスの槍


そう唱える。


それはこの緊迫した戦場には似合わない穏やかな声だった。


たちまちレイナさんのオーラが水に変化し、彼女は右手に杖を持ちその大量の水を操作し、左手は胸にあてている。


レイナさんは右手を頭の上まで振り上げ、頭上に杖で円を描くとその水はその通りに円を描き、やがて巨大な槍へと変化する。


ダイヤモンドのような美しく澄んだその魔法に思わず誰もが見とれてしまう。


「こ、これは…… 上位魔法? 」


アドル先生がそう呟く、だがそんな声も聞こえていないようだった。


「えぇ… こんなに強くなっちゃうもんなの? 」


僕は特段大したアドバイスをした訳では無いが、魔力コントロールの上がり方からして、その飲み込みの早さは異常だ。


多分彼女は、自分の意見よりも他者から入ってくる意見に早く反応してしまうのだろう。


ある出来事に対して、自分の意見というのが自分の中に湧き出てくるまで遅い。


だから他者に言われた意見がスッと自分の中に入ってきてしまって、まるでそれが自分の意見であるかのように思ってしまう。


それは彼女の強みでもあるけれど、弱みにもなりうるな。


そんなこと考えている間に、レイナさんとナナリの魔法は今にも衝突しそうだった。


これほどの魔力がぶつかるのだから、みんなそれなりの衝撃に耐えるために、重心を落としているのを感じだ。


しかし、それは必要なかった。


それは別にまたレイナさんの魔法がまた途中で途切れたわけではないし、レイナさんの魔法にナナリの魔法が一瞬にして打ち消された訳でもない。


第三者によって両方とも打ち消されたのだ。


物凄い水蒸気と砂埃がたちのぼる。


全員何も言わずに何があったのかと、魔法がぶつかった所をじっと見つめる。


すると段々と人影のようなものがぼんやりと現れ、次期にハッキリとその姿が認識できるようになった。


「お前は、ヴォルフガング…… 」


ナナリはそう言うと、その顔に緊張が走っていた。


「何でウチのNo.2がこんなところにいるんだよ! 」


ナナリは精一杯の声を張り上げてそう問いかける。


しかしその男に一瞥されるだけで、ナナリはそれ以上何も言えずに黙ってしまった。


「この件は、私達生徒会に一切報告がないのですが? 」


ヴォルフガングと呼ばれる男は静かにそう言った。





<あとがき>

昨日投稿できなくてすんません!

できるだけ高頻度にしたいですが、3日に1回がベースです!

水曜日、金曜日、月曜日です!(土日もするかも)

投稿時間は20時です!


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