第46話 新学期、早々に……

 夏休み明けって言うのは、憂鬱になりがちだけど……


「えっ、明彦、あかりと付き合い始めたのか?」


「うん、まあな」


 照れたように言う明彦を見て、微笑ましい気持ちになる。


「おめでとう」


「ありがとう……けど」


 明彦は、申し訳なさそうな目を、隆志と三郎に向ける。


 けど、2人は……


「良いんだよ、明彦」


「でも……」


「元々、あかりちゃんはお前とお似合いだと思っていたさ。なあ、三郎?」


「ああ。だから、心ゆくまでファッ◯しろよ」


「お前ら……ありがとう」


 涙ぐむ明彦を、俺たちはポンポンと叩く。


「ロリも悪くなかったが、俺はやはり熟女派だ」


「俺は金髪巨乳じゃないと満足できん」


「お前ら死ねよ」


 そして、いつも通りみんなで笑う。




      ◇




「そっか、あかり……おめでとう」


「うん、ありがとう、ちーちゃん」


「でも、そう。中野くんと……」


「安心した?」


「えっ?」


「あたしが、ゆうたんを奪わなかったから」


「いえ、それは……」


「けど、まだ油断はできないよ~?」


「ま、まさか、あなた浮気をするつもりじゃ……そんなのダメよ!」


「いやいや、しないしない。確かに、前まであたしは、ゆうたんが好きだったけど……でも、今は明彦きゅんにゾッコンだから」


「そう……それは良いことね」


「うん……けどさ、ちょっと、ちーちゃんにお願いがあって」


「何かしら?」


「あたし、ゆうたんと夫婦になりたいんだけど」


「ぶふっ!?」


「あっ、大丈夫? てか、美女がむせるところとか、何かエロいからムービー撮っても良い?」


「ゲホッ、ゴホッ……や、やめなさい……ていうか、あなた……夫婦って……」


「うん。あたし、ゆうたんと漫才がやりたいの」


「漫才?」


「そっ、学園祭で」


「えっ?……ああ、そういえば、もうそんな時期ね」


「良いでしょ、ちーちゃん? あたしとゆうたん、相性がバッチリなの」


「その言い方が、何か引っかかるけど……あくまでも、漫才のってことよね?」


「もちろんだよ。あたしとゆうたんなら、何かしらの賞がもらえると思う」


「まあ、来年は受験で忙しいものね」


「早々、だから……お願い」


 あかりが両手で拝んで言う。


 千冬は肩をすくめて、


「分かった、良いわよ」


「本当に?」


「ただし、その……本当に夫婦になっちゃ、ダメよ?」


「う~ん、それはゆうたん次第だね~」


「……もし浮気したら、コロスわ」


「おー、怖い。ゾクゾクするよ~」


 その後、陽気にハシャぐあかりに対して。


 千冬は、陰気にモグモグお弁当を食べていた。




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