第22話

それかられいことゆりは、金曜日の夜に教会で誓い合うという決まりにした。

毎週金曜日が来るたび胸が高鳴った。

それは、繰り返されてもなくなることはない。


れいこはますます美しくなっていくし、ゆりも美しさを増す。

この誓いはなんと素晴らしいことか!

永遠にそれが続くと思っていた。

少なくともゆりは。


二人が中等部二年のある日。

たしかそれは不吉な13日の金曜日の夜。


ゆりはいつもと同じように教会に行こうとした。

だがどうしても意識がはっきりしない。足がふらついて倒れてしまった。

その音に気づいて同じ部屋の子がゆりを抱き起こす。

「早見さん、酷い熱だわ。早くベッドに戻って。」


それからのことは覚えていない。

気が付いたのは次の日の夕方であった。

ゆりは、慌てて起き上がる。

れいことの約束を破ってしまった。


ゆりは、まだ少し意識がはっきりしないまま、れいこの部屋へ走った。

「ごめんなさい!れいこ!!私、熱が出ていて貴女の約束の日に行けなかったの。ごめんなさい!!」

するとれいこはゆっくり振り返った。そして微笑む。だがそれは以前と違って何か恐ろしい微笑みであった。


「いいの、ゆり。いいのよ。気にしないで。大丈夫。」

「れいこ・・・。本当に、私!!」

「謝らないで。でも、これきりにしましょう。もう、貴女はそこに来ない方がいいわ。」

ゆりは驚き頭が真っ白になった。

やはり、あの時無理をしてでも約束を守ればよかった。

そう思って必死にれいこの手を取る。

「だから、謝らないで。これは私の問題なの。貴女の事、嫌いになったわけではないの。違うの。でも、放っておいて。」


それから、れいこは変わってしまった。

勿論ゆりのことは怒っていないようで、いつも通り話してくれる。

ただ、れいこは変わってしまった。

あんなに綺麗だった長い髪の毛も切ってしまって。

それだけではない。

あんなに綺麗なものが好きで大事にするれいこだったのに、綺麗なものをすべて壊すようになった。

滅茶苦茶にして、壊すようになった。


ゆりがその理由を聞いてもいつも同じ答え。

「私、本当はこういう性格なの。貴女が何も知らなかっただけ。」

「ねぇ、お願いよ。そんなことしないで。私とのあの関係はなくなったの?」

するとれいこは微笑む。しかしそれは悪魔のように。

「関係・・・。どうしても関係を持ちたいなら、寝るだけの関係にしましょう。嫌ならいいのよ。」

ゆりは戸惑った。

自分たちの関係を壊すことに。

だが、それでもゆりはれいこと一緒にいたかった。自分が彼女を悪魔から守らなければいけない。その一心で彼女の提案に賛同したのであった。


それから、二人は高等部に進学した。

れいこの美貌は輝きを増す一方。だが、同時にれいこの悪は増す一方。


ゆりはだが、決して彼女を見捨てることはなかった。関係が変わってしまっても。

お互いの性格が変わってしまっても。

今は。今は。彼女のそばにいたい一心で。

ゆりもまた、変わってしまったのだ。


れいことゆり。

高等部一年の春。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る