第21話

その夜。22時。

ゆりはそっと寮を抜け出して、れいこと約束した教会へとやって来た。

恐る恐る教会の扉をギィ・・・という重い音共に開く。

暗闇の中、月光でステンドグラスが輝く。今日はいつもよりその輝きは増しているように思う。

その中でれいこは待っていた。彼女は祭壇の蝋燭に火を灯す。

「夜の教会もいいものでしょう?」

「犬飼さん・・・?教えて、ここで何をするの?」

れいこはステンドグラスの光に包まれて天使の笑顔で、ゆりに手を差し伸べた。

「言ったでしょ?これからの私たちのことを誓い合うの。」

「誓・・・う・・・?」

れいこはにこりと微笑む。

そして自分の制服のリボンをほどくとそのまま脱ごうとした。ゆりは驚いてそれを制止しようとする。

「どうしたの!?犬飼さん!こんなところで!!」

「貴女も脱いで?」

「え・・・?」

ゆりは何が何だか分からないし、彼女のしたいことが見えてこない。


「どういうこと・・・?」

「鈍い子。私、貴女とは全て見せ合う関係になりたいの。私は綺麗なの。誰よりも。そして貴女も。私たちは全てを見せ合う綺麗な関係になるの。最も美しく綺麗な関係。それを誓い合うのよ。嫌かしら?」

大体れいこの言うことが見えてきた。

その理屈は正しくないようで正しい。

れいこと自分はすべて見せ合う関係。心も身体も。

彼女の言うこととすることはいつも崇高だ。それに感動を覚えゆりは震える。

怖くはない。嫌なわけがない。


「・・・貴女に見せるわ。貴女だけに。私と貴女のこれからを誓い合うために。」

「貴女なら分かってくれると思った。」


そして、二人は制服を脱ぎ捨てると祭壇の元で向かい合う。

れいこはまだ少し震えるゆりの唇を指でそっとなぞる。そしてそのまま彼女の唇を食んだ。


優しく、そして激しく。混じる吐息は天使のうた。

額と額を重ねる。手と手を繋ぐ。胸と胸を合わせる。足と足を絡める。

そして、また何度も口づける。


「貴女と私、神様に誓ったのよ。私たちはただの人間なわけがないの。選ばれた天使なのよ。」

「犬飼さん、私とても嬉しいわ。貴女とこうやって誓い合えて。私たちは誰よりも綺麗で清らかな関係ね。誰にも邪魔はさせないわ。」

「当り前よ。」

「私、いつか犬飼さんが悪魔に酷い目に合うようなことがあったら、絶対に助けに行くわ。犬飼さんが悪魔にならないように助けに行く。私を貴女が救ってくれたように。」

「馬鹿ね、私はそんな悪魔になんて出会わないし、悪魔に堕ちるつもりもないわ。」

れいことゆりは笑いあって手を繋いだ。

そして、れいこは自分の制服を手繰り寄せて、なにやら出してきた。

そしてそれを、ゆりに差し出す。


「綺麗・・・。」

そこには銀色に光るロザリオがあった。

そしてそれは二つある。

「あげる。」

「え・・・?」

「これ、貴女にあげる。私と同じものよ。貴女と私がこれからもずっと一緒っていう証。綺麗だという証。」

ゆりは涙を流しながら受け取るとそれにキスをした。

「ありがとう、嬉しい!!犬飼さん!!」

「れいこでいいわ。私、名前なんて許した子にしか呼ばせないの。特別な子にしか呼ばせないの。貴女なら許してあげる。貴女もゆりって呼んでいい?」

ゆりは何度も頷く。

「ゆり、私と貴女はずっと一緒。」

「れいこ、私はずっと貴女のそばにいるわ。」


そうして、れいことゆりはもう一度唇を重ねた。


月が光る聖なる夜に。

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