乙女ゲームの婚約破棄クズ皇太子の弟は、実は異世界召喚された伝説の王の生まれ変わりだった件
嵩枦(タカハシ) 燐(リン)
プロローグ
眼前で開かれる絢爛豪華な催し物。
ただの卒業記念パーティだが、上下関係なく多くの貴族子息子女が卒業生としているので必然そうなる。
まして、”皇族”が卒業生に居れば、尚更の事。
俺…アンブルフ帝国第二皇位継承者 アーティ・フォン・アンブルフも卒業生として参加している。
パーティ用の正装に身を包み、次々来る次代の爵位継承者達と挨拶交わしているといると、フロア中央から声が響いてきた。
「アリア・エスペラント公爵令嬢!君との婚約は破棄させてもらう!!」
その声は今生の兄して、現帝国の第一皇位継承者。
ディートリッヒ・フォン・アンブルフもの。
俺は兄の宣言した言葉を聴き、頭に痛みを感じながら、会話を交わしていた者達へと断りを入れつつ、中央へと移動を始める。
その中、
「アーティ殿下」
移動の途中で声を掛けられる。
振り返ると、そこには豪華だが決して過度ではない洗練されたドレスを纏う赤身を帯びた桃髪の女性がいた。
「ハインエル女公爵か?」
「何か騒がしいようですね」
「兄上が遂にやらかしたようだ……」
「それはそれは…予定通りですね」
歩きながら状況を確認していく。
「準備を整えているか?」
「つつがなく。四大公爵家各当主への根回しは既に終えてます。全て殿下とアリアの計画通りですよ?」
俺の質問に彼女は淡々と答えてくれた。
「殿下は宜しいのですか?この一件、殿下でしたら我々の計画を事前に潰せたでしょうに」
「潰したところで問題の先送りだ」
再びどこかで起きてしまうこと。
ならば、強引に潰さずに兄の計画通りに事を起こさせた上で覆してしまった方が遥かに楽だ。
「ですが、それで殿下が皇位継承権1位になってしまうのでは?あれほど帝国を継ぐ事を嫌っていらっしゃったのに」
「いずれにせよ。お前達、筆頭四大公爵家は兄上の即位を認めぬ腹積もりだっただろ」
「あら?気づかれていまして?」
全く悪びれもせず。
桃髪の女性、カタリナ・ハインエル女公爵は首肯した。
その態度に俺は呆れるしかない。
「全く…君といい、アリアといい。どいつもこいつも阿呆だな」
「紳士の仮面が剥がれてましてよ?」
彼女のからかいに俺は更にため息を吐く。
「そんなに兄上を皇帝したくなかったとは……」
「親友を裏切る馬鹿を皇帝の椅子に座らせる訳がありません。アリアが女帝として座るならまだしも」
「言葉は慎め。反逆罪に問われるぞ」
「これは失礼」
窘めるとカタリナは素直に謝る。
全く悪いと思っている様子がないのは仕方ない。
実の兄とはいえ、彼を一国の主とするのは俺もお勧め出来ないし、同意見ではある。
「まぁ、良い。君らの計画に乗った俺も大してかわらん。俺の目的を果たすためにも都合が良い」
「やはり、事が為ったらそのままリゼットを正妃としてお迎えするのですね?」
「不服か?女公爵?」
「いいえ。四大公爵家の一角の姫が次期皇妃。政治的にも充分な旨味がございます。反対などいたしません」
それに、と彼女は言葉を続ける。
「”皇”の意に逆らったら後が怖いですし」
「抜かせ」
毒づきながら俺は若き女公爵を伴い、喧騒の中へと飛び込んだ。
ブリストル大陸東方一帯を1000年間統べる国家。
アンブルフ帝国は偉大なる皇帝によって建国された。
初代皇帝は異世界より召喚された人間で、神の様に崇められ、その力で帝国の建国に尽力し、初代皇帝となった。
建国当初の帝国はその初代皇帝の治世で、この世の楽園の如き栄華を極め、臣民に平穏を与えた。
陽光と豊穣の明けの国。
護りたるは至高の王。
初代皇帝が隠れるまで、帝国はそう周辺諸国に敬われ、そして畏れられた。
初代皇帝の死後も、当の皇帝は神格化された事で更に周辺諸国群から彼の大業と功績に畏敬の念が付与され、1000年経ってもかの帝国の柱は崩れる事無く維持され続けていた。
しかし、その安寧にもヒビが入り始め。
帝国も遂に内から瓦解するかと思われた矢先。
天は再び大陸に救世の使者を遣わした。
その者こそ、この時代に生まれた帝国第二皇子。
アーティ・フォン・アンブルフ
1000年前に帝国を打ち立てた初代皇帝の生まれ変わりにして。
異世界召喚よってこの世界に呼ばれた異世界人の魂を持つも者。
奇しくも大陸の半分を統べる帝国の復権は。
偉大なる初代皇帝の再臨によってなされることになる。
これは再生と再興の物語だ。
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