第27話 杉山、高熱を出す

結局のところの愛してるよゲームだが。

凛花の顔を見れなくて俺が敗北してしまった。

キスを2回もしたのはこの為か。

俺は真っ赤になりながら凛花を見る。

ニヤニヤしながら凛花は俺を見てくる。


「作戦勝ちです」


「無茶苦茶だなもう」


「エヘヘ」


そんな会話をしている中で電源が復旧した様で.....停電が治った。

俺はその事を凛花と共に喜んでいると。

電話が掛かってきた。

それは杉山からだったが。

スマホが今の今まで充電切れだったので、ようやっと、という感じで電話が掛かってきた様だ。


「凛花。御免な。電話に出て来る」


「はい。お待ちしています」


凛花は笑顔で手を振ってから俺を見送る。

俺は笑みを浮かべて手を振り返してからそのまま廊下に出る。

それから電話を掛けると杉山が出た。

のだが.....何だかかなり深刻な声で、もしもし、と言ってくる。

何だ?コイツらしくも無い。


「どうしたんだ。杉山」


『いや。何か.....雨のせいか感染したっぽいんだよね。.....今時ながらインフルかな』


「え?.....家に誰か居ないのか?」


『それが.....お父さんとお母さん.....ずっと家に居ないから』


「居ないからって何だよそれ?お前どうやって生活.....していたんだ?」


『私ね。寂しいから裏アカを始めたってのもあるの。.....リアルでお母さんとお父さんに見捨てられている感じだからさ』


俺は、!、と話を聞く。

咳をしながら杉山は、あーあ。こんな事になるなんて、と言う。

いやちょっと待て。

かなり困ったぞ。

どうしたものか、と思いながら顎に手を添える。


「.....じゃあ俺が行こうか」


『何言っているの?君ってこの家の場所知らないよね?』


「番地と住所は。今から行ってやるよ俺が」


『.....ええ.....でももう日もかなり陰っているし』


「アホかお前は」


全くコイツは。

電話して来たからには寂しいとかそう言うのがあるんだろ。

助けてほしいんだろ!、と強く言うと。

杉山は涙声になった。

心細い、と。

俺は額に手を添える。


「近くだよな?」


『近いけど。1丁目。.....でも本当に良いよ。ゴメン。どうしても話を聞いてもらいたかっただけだから』


「.....ああもう」


俺は額に手を添えながら。

そこで待ってろ、と言いながら電話を切った。

それからドアを開けて凛花を見る。

凛花は?を浮かべて俺を見てきながら、どうしたんですか?、と聞いてきた。

俺は、留守番頼めるか?、と聞く。


「え?どうしたんですか.....?」


「杉山のアホが熱を出した」


「え!?それって今直ぐに.....」


「.....でも良いのかお前。それで」


「まあ正直そんなの嫌ですよ。でも杉山さんは大切な人ですから」


言いながら俺を見てくる凛花。

そして俺の胸を押す様な感じを見せる。

今直ぐに行ってあげて下さい。近場ですよね?、と聞いてきた。

俺は頷きながら、ああ、と返事をする。


「.....取り敢えず家にあるレトルトのお粥とか持って行く」


「それが良いと思います。絶対にそれが良いです」


「金がねぇから買えないしな。お裾分けの意味も兼ねて」


「はい」


そして俺はありったけの食糧を持ってから。

そのままリュックに入れつつ。

俺は凛花を見る。

凛花は小さく手を振っていた。

ゴメンな、と言いながら俺は見る。

そんな凛花は首を振った。


「先輩が大変なんですから。これぐらいへっちゃらです」


「ああ。有難うな。凛花」


まさか凛花に家を任せるとはな。

俺は考えながらそのまま上着を羽織ってから。

そのまま歩き出す。

取り敢えず直ぐに帰ろう。

そう考えながら。


「じゃあ任せる」


「はい。東さん」


それから俺は頷いている凛花を見つつ。

そのまま夜の外に飛び出した。

全く、と思いながら。

そして聞いた住所に向かう。

そこには.....青白の塗装のある洋風な建物が。


「.....此処か?家大きいな」


俺は考えながらインターフォンを押す。

すると.....マスク姿の上に暖かいものを着た様な姿の杉山が。

俺を見て見開く。

本当に来たの?、と聞いてきた。

いやいや。


「お前が注文したんだろ俺を」


「.....でも.....」


「何を弱気になってんだよ。お前のいつものはどうした」


「.....」


涙を流した。

そして大声で号泣し始める杉山。

オイオイ!?此処、近所だろ!

誤解されたらどうすんだ!

俺は駆け寄りながら杉山を見る。


「.....本当に来てくれるなんて思ってなかった」


「泣くなよ!?恥ずかしいぞ俺も!」


「エヘヘ。有難う。本当に.....有難う」


言いながら杉山は壁に手を突きながら、入って、と言う。

俺は、お。おう、と返事しながらそのまま杉山の家に入って行く。

洋風な構造だ。

しかし寂しげな感じがした。

誰も居ないから、だ。


「聞いても良いか。お前本当に親に見捨てられているのか?」


「うん。私は海外に連れて行かれなかった。見捨てられたと思うから。お金だけ振り込みがあって。それだけ」


「.....」


「そんな深刻な顔をしないで。何時もこんな感じだから」


「.....だが.....」


「大丈夫。君が居るから」


じゃあ先ずは私の部屋に行こうか。

と言ってくる杉山。

それから歩き出した、のだが。

フラフラして俺に倒れて.....きた。

オイオイ!?


「だ、大丈夫か」


「.....ゴメン。結構熱があるから」


「何℃あるんだ」


「.....えっと。.....39℃」


馬鹿なんかコイツは。

そんなんで動ける方が奇跡だろ。

俺は頭をガリガリ掻いてからリュックを下ろした。

そしてお姫様抱っこをする杉山。

杉山は、ふぇ?、と声を出して俺を見てくる。


「な、な、な!?」


「もう良いから。お前の部屋何処だ。行くぞ」


「.....は、恥ずかしいよ」


「煩い。行くぞ」


何で恥ずかしいんだよ。

紐パンとか見せてきていた癖によ。

俺は思いながら顔を引き攣らせながら苦笑する。


そしてそのままお姫様抱っこで連れて行く。

全く、と考えながら。

その間杉山は赤面なのか熱なのか分からないがジッとしていた。

そうしているとこんな呟きが聞こえた気がする。


「とーちゃんやっぱり大好き」


と。

俺は、何か言ったか?、と聞いたが。

杉山は、何でもない、と答えてくれなかった。

何を言ったのか聞こえなかったんだが。

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