5.自動魔法、レベルアップ!
――適性の儀の半年後。
アルトは休日の朝イチから、レベルの低いダンジョンへと足を運んでいた。
そこで修行と小遣い稼ぎを兼ねて、毒ラビットの駆除クエストをしていた。
毒ラビットはかなり弱いモンスターで倒してもあまり経験値が入らないので、普通の冒険者はその仕事をやりたがらない。
だが放置しておくと農作物などに被害が出るので、低級の冒険者が駆除を行うのが常だった。
「<ファイヤー・ボール>起動!」
アルトは毒ラビットを見つけると、“オートマジック”に記録したテキストを起動し、魔法攻撃を放つ。
火の玉が現れ、弾丸のようにラビットに向かっていく。
見事に命中し、ラビットは丸焦げになって絶命した。
「よしよし」
アルトの火炎魔法は、半年間鍛え上げた成果で、なんとかウサギ程度であれば倒せるようになっていた。
かなりラビットを倒したので、アルトは少し休憩することにした。
適当な場所に座り込む。
そして、ふとステータスウィンドウを開いた。
魔法回路 1
自動魔法 Lv9(99,915/100,000)
結界魔法 Lv10(14,111/100,000)
火炎魔法 Lv5(3,444/50,000)
水氷魔法 Lv7(7,444/70,000)
神聖魔法 Lv1(0/10,000)
暗黒魔法 Lv1(0/10,000)
物理魔法 Lv1(0/10,000)
強化魔法 Lv10(1,501/100,000)
鑑定魔法 Lv9(1,011/90,000)
この半年、オートマジックで常時スキルを使いっぱなしにしていることで、かなりステータスが上昇していた。
「もう少しでオートマジックがレベル10になるな……」
普通の魔法は10を超えるとなにか強いスキルが使えたりするのだが、オートマジックは過去にその力を得た者がないので、どうなるかわからない。
「……よし、あと少しでレベルアップだから、がんばろう」
†
アルトは正午を超えるまで毒ラビットの駆除をし続けた。
そうこうして、ようやく待ち望んだ声が聞こえてくる。
【オートマジックがレベルアップしました】
「やっとレベル10になった……」
半年間、文字通り24時間修行し続けた成果がようやく実ったことにアルトは一つ息をつく。
そしてオートマジックのウィンドウを開く。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
<マジックバフ修行用>
For 1000
マジックバフ
next
※レベル10に達したので、条件起動が可能になりました。
構文は以下の通りです。
If 条件
スキル名
end If
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「条件……? もしかしてスキルを起動するかどうか、自動で選べるのか?」
ぱっとは使い方が思いつかないアルトだったが、なんとなくでテキストを書いてみる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
<条件練習>
If 毒ラビットが現れたら
ファイヤーボール
end If
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「例えば、こんなのどうだろう……?」
アルトはとりあえずそう書いてみてから、力を試してみるために、あたりを探索し始める。
そして、すぐに毒ラビットが視界に現れる。
すると。
【ファイヤーボール起動】
次の瞬間。
アルトはなんの命令もスキルの発動もしていないにも関わらず、自動でファイヤーボールが発動し、毒ラビットへと飛んで行ったのだ。
丸焦げになる毒ラビット。
「ま、まじか!?」
アルトはその便利さに驚く。
事前に条件を設定してあげれば、自分の意志とは関係なく魔法を発動してくれる。
今まではただ命じたとおりにスキルを発動「し続ける」ことしかできなかった。
なので修行にはよかったが、それがなにかの役に立つということはあまりなかった。
だが、条件設定ができるとなると話は別だ。
例えば、この場所で「毒ラビットが現れたらファイヤーボールを撃つ」というテキストを起動しておけば、後はアルトは本を読んでいても、寝ていても自動で毒ラビットを狩ることができる。もう朝から晩まで走り回る必要はないのだ。
まさに全自動魔法(オートマジック)の名前にふさわしい能力だ。
「……もしかして、毒ラビットを一気に倒せるかも?」
†
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