拘束プレイと日常

「無自覚Sッ子、拘束プレイ、白い死神、スライム狂。色々言われてるねー」

「そだね。変なのが混じってるのは誠に遺憾だけどね」


今日は月曜日。バスで学校に登校していると、朱里が昨日の話題を持ち出してきた。


私は昨日のことで結構有名になってしまったらしい。その結果色んな2つ名がついた。


白い死神はかっこいい。スライム狂も、まぁ、いい。ほかはダメ、ぜったいだめ。


「はぁー。なんで、変な2つ名が付いたんだろう」

「まぁ、変だからじゃん?」


私は無言で朱里の横腹を抓った。


「拘束ねぇ、好きではないんだけどなぁ」

「い、いたいっ、ほのかギブ!いま!いま拘束されてる!」


横腹から手を離すと。話題をアカの話へ変えた。


「アカ。チートだったねぇ。勝てる気しないよ」

「そりゃ、ベータテストからやってるし。負けたら泣くよ」

「朱里は二つ名ないの?」

「冥王ってのがあるよ」

「かっこいい」

「でしょ」


冥王。確かにそれっぽい。


昨日のアカの戦闘シーンを見たけど。チートだと思った。普通に勝てる気しない。


アカは泉に行くとまず。百鬼夜行というスキルを発動した。なんでも、たくさんのモンスターを召喚するスキルらしく、ゾンビやらスケルトンやらを大量に引連れてプレイヤーへ特攻していた。


乱戦していたプレイヤーが一致団結してアカを倒しにかかるほどなのだから、やっぱ強いのだろう。


アカが言うには、上位のプレイヤーいなかったから楽勝だったんだと。かなり数いたけどね。有象無象は相手にならないんでしょ。


殲滅戦ならアカの方がダントツで得意だ。結局イベント1位だったし。賞品はオークション参加権。その名の通り、オークションに参加できる。レアだって喜んでた。


ちなみにアカのレベルは12、私の2倍である。今のプレイヤーの最高レベルが17なので大差ない。


「そろそろ抜かれそうだなぁ。気をつけないと」

「そう?そんなことないと思うけど」

「いや、一日での成長具合考えたら一瞬で追い抜かれるでしょ」

「こっからはゆるりと成長するよ」

「嘘だ」


嘘じゃないよ。少なくとも私はそのつもりだよ。


「だいたい、地雷のデバフを集めて強くなるのっておかしくない?」

「それねー。よくわかんないんだよねー。強くない?デバフ」


アカが言うにはどうやら、デバフは不人気らしい。


なにせ、格下には無意味、それにパーティー組んだら効果は著しく落ちるし。バフの方がいいじゃんって。


それに、そもそもデバフスキルは絶対数が少ないんだって。


「まぁ、プリンはね。強いけど、デバフは地雷だよ。普通の人はとるだけ容量の無駄」

「運が良かったんだろうね。私は」

「そうだね」


その運がこのあとも続くとは限らないけどね。


「っと、そういえば、話変わるけど。今日小テストあるけど、だいじょぶなの?」


私のその言葉に、朱里は露骨に顔を顰めた。


「……問題なくない」

「宿題はやった?」

「やると思う?」


やらないと思う。


「あーあ、朱里とゲーム出来なくなる日も近いかなぁ」

「くっ。そう言うほのかはちゃんと宿題やったの?」

「やると思う?」


私たちは同類なのだよ。


ただ。環境が違う。


「ま、私はゲームやめろとか言われないし。成績いいし」

「くっそ、うらやましい」


元々ゲームはあまりしないし、してても、親の性格的に私が勉強しなくてもゲームやめろとか言われない。だいたい、成績は別に悪くないのでゲームをいくらしても問題ない。


朱里の成績は、中の下だけど地頭はいい。ゲームのことになるとめっちゃ頭いいし。朱里が言うにはそれとこれは別らしいけど。


親もそこまで厳しくない。ただ、あんまりにも成績が落ちるとゲーム辞めさせられる。


悩む朱里を見て楽しみながら学校へたどり着いた私は、小テストを受けた。


余裕だと思った。平均点以上は固いと思った。


受ける前までは、だけど。


「ふむ……全くわからん」


いつもなら何となくで解けるんだけど。今回はわからん。さっぱりだ。


……仕方ない。遊ぶか。暇だし。


そう思い、おふざけを開始した。


問題

be keen onの意味を答えよ。


答え

あられちゃん?


きーん。


問題

out of breathの意味を答えよ。


あー。わかるけど。おふさげタイムだから。


答え

卍解。大紅蓮氷輪丸。


breathってブリーチって呼んじゃいそうになるよね。ならない?


こーゆーおふざけって。やってる側は結構楽しいんだよねー。傍から見ると変人だけど。


そうやって遊んでいると、肩をポンポンと叩かれた。


振り向くと、先生がいた。


明らかに怒っているなと思った。


何がいけなかったんだろう。


out of dateを先生と答えたのがいけなかったのだろうか。三十路の女性にはダメだったか。


「後で職員室に来い。あと私はまだ若い」

「はっ」


めっちゃ怒られました。






体育の時間になった。


今日はバスケをするらしい。


そして私はなぜか。男子に混じってバスケをしている。


なぜって?


「ほのかっ!ぱす!」

「……はーい」


そう言って目の前に迫っていた男子の股からボールをワンバンさせて朱里に渡した。


理由はもちろん。朱里のせいだ。


朱里は体育ガチ勢で。運動神経もバカげているので女子との運動では物足りないんだと。


なぜ私まで付き合わされにゃならんのか。


まぁ、朱里1人で男子に、一緒にバスケしよ?とか言えるはずもないんだけどさ。だから私が言うしかないんだけど。


これでね。適当にやり過ごせればいいんだけどね。うちの男子は体育ガチ勢多いのよ。女子でも関係なしにタックルしてくるのよ。


油断すると殺られる。


そんなことを考えていると、ふわっと私の元にボールが来た。


同時にバスケ部きた。


「あいかわらず、でっかいねぇ」

「ははっ。お褒めに預かり光栄だ」

「なぜ私をマークするのか」

「結構油断ならないからな」


そーですか。ドリブルなんて出来ません私がですか。


というか、あんまりボール持ってるとタックル来そうで怖い。


うちの男子は私のこと平気でぶっ飛ばすからな。そしてそれをうちの教師咎めないからな。


いや。いつもおふざけしてる私が悪いんですが。


さてと。


「ボールあげちゃいます」

「あ?」


私はボールを差し出した。


「おう。ありがとよ」


私は笑顔でボールを真上にあげた。


するとそれを朱里がかっさらって行った。


「くそ!くだらないギャグに騙された!おい!朱里をとめろ!うち負けてんだぞ!これ以上負けられるかよ!」


まだ続くのかなぁ。


もっとこう。体育はサボってもいいと思うんだよ。私は。


「ほのか!ボールってスライムさんに見えなくもないよね!?」

「……そう?」


硬いけど。ぷにぷに感ないんだけど。


「奪われちゃいけないと思わない?」

「……」


……ふむ。ボールをスライムさんだと仮定するなら、確かにそうだね。


「スライムさん救おうぜ!」


私は男子が持ってたボールを叩き落とした。


「乗ってやろうその言葉」


それからどちらのチームのゴールにも点は入らなかった。


うん?運動神経すごいって?


いやいや。スライムさん関連だけはね。負けられないからね。


強いよね。













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