第3話 更なる悲劇~令央と紗矢の過去編~

トリハラさーん!何してくれちゃってんの?

実験でウイルス使ってるのは別にいいよ?全然いいよ?

だけど…、それを市中に広めるな!流出さすな!

うんもー。急に隕石が降ってきたからって、そんなに簡単に壊れます、研究施設?

それに、何でか紗矢がさっきから結構落ち込んでいるんだけど、なんでだろ?

こんな感じの様子、昔もどっかで見たことがあるような、ないような。

何だっけ?うーん、忘れちゃったなぁ。

結構大事なような、忘れちゃダメなような、そんな気がするんだけど…

ああ、無理!思い出せない!


そういうことでですね。その件はいったん置いときまして。

今の状況を改めて確認しときましょ。

あのバカでかい隕石:ヴァイオレット彗星(花さんたち、自衛隊が過去の資料も漁って付けた仮の名前)が僕たちが住んでいた街に落下してきて、その町がほぼ壊滅状態になってしまった…と。そんでもって、トリハラさんたちの失態?いやこれ絶対に失態じゃないけど。ひとまず失態ということにさせてもらって、そんでもって、そこで使われていたウイルスが謎に流出してしまい。街に行けないということになってしまいました。そこで、今は神社の裏山に神社にいた人を集めたうえで自衛隊は本部を置いている場所である。そして、僕たちは今そこで、謎に雑用など全般をしている。怪我した人の手当てなどは茜姉ちゃんと一緒に来ていたらしい同僚のナースさんや研修医さんたちとで対応中。そして、その他は全部僕たち任せ…。


っておい!どう考えてもこの状況おかしいって!

兄と姉と二人と一緒に来たメンバー、つまりは大学生組で施設の創設諸々の事務的なことを担当しており、華梨や白雨君などの中学生組は転がってきてしまった人々の心を癒したりするセラピー的な役回り。そして、僕たち高校生組はその他全部が担当。つまりは、料理だの、掃除だの、ゴミ出しだの…ってあれ?これ全部自衛隊員さんがしてくれるって言っていたことじゃなかったっけ?

じゃあ、なんもすることなくない?なんだよ。そう気付き、ブースの一角にしゃがみ込んで脚に顔を当てる。なんかいろいろあったせいか心がやさぐれて来ています。そのまま、力が抜けていって瞼が自然と落ちていって、真っ暗になった。


「.........令央?」そう横で誰かがつぶやき、肩を軽く揺する。その振動で僕は起きた。

「うぅん?ここは?僕の部屋じゃ…。ああ、そうか。裏山の.........夢じゃなかったのか。」と起きて早々、げんなりしてしまっていました。

「大丈夫?なんか疲れてたみたいだけど」と横からまた声。ああ、そうか。この子に起こしてもらったんだ。

「ああ、大丈夫だよ。気にしてくれてありがとうね。…。」をそうつぶやきつつ彼女の方を向くと.........

「あれ?夕雫じゃなくて…《紗矢》?何でここに?」と戸惑った。

「ああ、ごめん。私なんかがね…。やっぱ、やだよね。あの子の方がいいよね。」ともうなんか寝ぼけてて間違えてしまった、こっちの方がいたたまれなくなっちゃうような、そんな言葉を残して去ろうとする。せめて誤解は解こうと思い、彼女に手を伸ばす。

「紗矢、待って!」と彼女の手を掴んでそのまま力に任せてこちら側に引く。

「えっ!?」を驚いた声。すっぽりと俺の腕の中に納まってしまった、紗矢さん。あれ?少ししか引いてないつもりだったんだけどなぁ?てな感じで、どっちもが驚いたまま、お互いを見つめたまま停止。えっと、これはどうしたら?

「令央ー、紗矢ちゃーん!夜食できたんだけどー?いるー?」と姉がこういう時はいつも何故か無神経?なので来た。「うん?いたー。ああー、お熱いところだったか.........。お邪魔いたしました。どうぞごゆっくり。」と旅館の仲居さん的なことを言いつつ立ち去ろうとなさる。今日は何でか、物分かりがいい…って違う!お熱くも何でもないから?これは単なる事故だから!

ということを必死になって二人して姉に説明した。そして、納得してもらえた。説明時に何故か紗矢がしょんぼりしていたのが気にかかったけど。


そんなことで、夜食も食べ終わりいろいろあった一日が幕を下ろす.........はずだったのに、あとはもう片づけて寝るだけだったのに、あともう一事件起っちゃいました。

それは何か。トリハラ研究所の社長さんが、住民に謝るためにって勝手に乱入してきたこと。このおっさんがもう面倒臭かったんだよな。

「本当に申し訳ない。我らが責任職のものが退職するということで、手を打ってほしい。」とかって最初は言っていきなり土下座とかしだすからさ。みんなホントに大慌てだったんだよ。しかも誰もとトリハラの研究所が悪いだなんて思ってないのにさ。流行の第一の原因はあのバカでかいヴァイオレット彗星の盛大なる落下でしょ。そんなの誰でもわかってるんだから。そんなのいちいち気にするんかいな。大企業の社長さんなのに、小さいことに食いつくなぁ。変なのって思ってたんだよ。うんやっぱ、直感当たってた。この人マジでやばかった。


単刀直入に言うとこのおっさん、トリハラ研究所の社長さんである、長畝さん。苗字からも分かるかもなんだけど、紗矢の父親だったんだ。

幼馴染である僕も初めて見たんだけど。このおっさんマジで好かん野郎や!

改めて確認なんだけど、紗矢は湊本さんと従妹同士で夏祭りに来てたんだ。そこで、ばったり僕らと出くわして今は僕らとともに行動中。とそこはいいんだって、今は非常事態だから。けど、おっさんが問題視してるのはそれよりも前の事、紗矢が誰と行くのか自分に話さなかったことが怒りの原因なんだって、紗矢が言うにはお父さんには確かに言ってなかったけれども、お母さんにはいってたんだって。僕の家族は、もともと父親がほとんど帰ってこないから、母やほかの兄弟が場所を把握している。『誰も知らないのは確かのまずいけど、一人は最低でも知ってるんでしょ?だったらいいじゃんか。』って、切れて殴りかけようとした俺におっさんはグラス内の水をぶっかけようとしたんだけど、すんでの所で紗矢が悪かったって謝って、こと何を得た。まぁ、おっさん怒って紗矢に水ぶっかけていったんだけど。


「あー、もう。あのおっさんいけすかねぇ!なんだよ!紗矢は全然悪くないのに!」と怒る。いくらたっても怒りは収まらない、寧ろ時間のたった今の方が沸々を再燃している。

「ほんとに、あの子なんも悪くないのに何で怒られなあかんの⁉」と碧唯さんも珍しく切れてるねぇ。

「うん、今回はお父さんが全体的に悪いよ。」と汐音も激怒。

今は、夕雫や華梨、白雨などが被害にあってしまった?子供たちを集めて、星空観察を行っている。『うん、一番重かったけどは在って正解だったね。』とみんなが納得するものを中心に行われている。それは、中古の天体望遠鏡だ。今は夏の大三角が見えたりするため。いい時期だ。

「そういえば、あの研究所から出ちゃったウイルス?18番て名前だったんだよね。なんかそっけない名前だよね。」

「ああそうだな。」という碧唯と汐音の会話。

そう、今この空気中にも蔓延っているかも入れないウイルス、また華さんたち自衛官がつけたんだけど,アイシクル18(icicle-18)は、肺炎系の病なんだそうだ。最悪かかってしまったら死に至るのだとか。


うーん。そういや、一緒についていった湊本さんは戻ってきたけど、紗矢が戻ってこない。どこに行ったんだろう。「なぁ、ちょっと紗矢探してくる。」と声を掛けて探しに行く。

って言ってもあいつがどこにいるか大体見当はついてるんだけど。

「やっぱり、ここにいたか。」と声を掛ける。振り向く顔は今にも泣きだしそうだった。

「令央.........、来るの遅い…」といつもの威勢のいい感じではない。

そもそもこの子はこんな感じで、泣き虫なのだ。これは幼馴染で、しかも元カレである僕しか知らない事実。

「お前は、なんかあったら、いつもここだもんなぁ。」と言って柵から身を乗り出してほぼ壊滅して跡形もなくなってしまった、旧街の跡を見下ろす。ここは山の中腹にあり街を一望できる隠れ絶景スポットの展望台だ。

「あんなおじさんの事、いちいち気にしてるんじゃねぇ。」とつい口から出てしまった。ホントはこんな事いうつもりじゃなかったのに。

「ふふ、いつも令央って、慰めるの下手だよね。だけど、そんなぶっきらぼうな慰め方が好きだった時期があるんだもんな。今も心地いいし。」と照れたのか泣いていたから声が枯れたのか分かんないが、声が小さかった。けれど、こっちもいい気分になれた。

「ねぇ。寒いからこっち来て。」と呼ばれ、隣に腰掛ける。



『流れ星が降る夜、もう一度二人で空を見れたら。』

そうだった!今思い出した!僕たちがまだ付き合ってた時も同じ様に紗矢が泣いて、あれが下手なりに励まそうとしたんだった。なんか甘い話だね。

その時も俺の記憶だと、おっさんが原因だった気がする。

それもこれも今を生きているから起こること、生きてないと何が起こるかわかったもんじゃない。


っと、なんかかっこいいことを言ったけど、これもまだ悲劇二幕目の中盤。あと最後にホントに世界をも巻き込む最大・最悪の出来事が起こる。そしてそのことが...

今にもつながる本当の悲劇への引き金だ。


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