第5話 甘い夏祭りと日常崩壊へのカウントダウン④

兄たちと一緒に、本殿へ参りに行った後、やっと屋台へ行く。最初はわたあめなどの食べ物が多かった。『今は夕飯の時間だもんね。まぁ、しゃあないしゃあない。

そんなことはさておき、今度はどこに行かれるのだ?』


と思ってみんなも周りをフラフラしてた。僕はなんでか知らないけれども、荷物持ちをさせられるんですな。夕飯終わってから、金魚釣りだの、ヨーヨー釣りだの、輪投げだの、なんかいろいろしてて、そんでもって、ほとんど全部僕が持ってるんだよね。まぁ、誰が何をゲットしたのかはだいたい把握した。それに、まだみんなすごく大きいものを取ってないから、まだいいんだけどさ。一番重たくて持つのに苦労してるのは、一番最初に夕雫が汐音をパシらせて買わせたものの一つなんだけど。何なんだこれ?


そんなことを思っていると通りかかろうとしていた、中学生らしい男女集団が何故かこちらに来た。

どうしたんだ?と思っていると…

グイっと腕を引っ張られた。「うわっ!?」拍子抜けした。夕雫だったから。ジーっと見ていたら、なんか嫌だったのか、顔を背けなさりましてちょっと傷つくんですが…。

「何よ。」と不満げな声そして、表情で言う。でも顔は陰になっちゃっていてあんまりしっかりとは見れなかったが、何となく頬が赤くなってる?どうかしたの?そういや、さっき境内の中にあるちょっとした川に足突っ込んでたぁ、女子三人で。その間、男子三人はご飯を代わりばんこで買ってきたり、なんかいろいろしていた。

「えっと、大丈夫?風邪ひいたりしたの?」と普通に思って手を彼女のオデコで当てようとしたら、

「お兄ちゃん、風流人じゃ全然ないよね。」

「女の子の気持ちくらいちょっとは分かるようになりなさいよ。だから、紗矢ちゃんみたいなかなか良い子にも離れられるのよ。」という耳にめっちゃ痛いお言葉wを言われてしまいました。

そんなことを言っていたのは、我が妹:華梨と姉:桜良、僕の姉妹である。こいつらもいたんかいな。なんか我が家全員自然と集まっていたらしい。ああ、いやだなぁ。だって、なんか言われるの確定じゃん。もう、何ゆわれるのよ。


なんかと悶々と考えていたりしたが、何も言われなかった。

なんでかなぁ?まぁ、おいとこ!そういや、さっきの中学生らしき男女グループのメンバーの1人が妹であったということに気づいた。そういうことなら...こいつに、華梨に兄として聞いておかないといけないことがちょっとあるんだけど…。

「なぁ、華梨。」

「うん?何、お兄ちゃん?」とまぁ、どこかぬけている。妹はいつもこんな感じ、これが彼女の通常運転なのだ。

詰まる所、僕が今から何を話そうとしているのかなんて、考えていないというか、分かっていない、そんな感じだ。そういう事、人が何を考えているのかを考えるということ をこの子はあまり大事と思っていなくて、社会人としては大事なんだろう人心ー感情を読む能力には、長けてないんだった。

いつも、家族としてかかわっているからか、大分彼女のような考え方に流されかかっている。


だから、その分その能力に長けている夕雫の相手をしていると、他の人と関わるときとは結構勝手が異なることになるから大変だけど、その跳ね返しというか、だからこそなんだろうけど、彼女といることが楽しいと感じる。多分、碧唯や汐音のそんな風に感じてるんじゃないかなぁ。そうじゃなきゃ、この子と積極的に関わろうなんか絶対思わないもんね。

だけど、多くの人は彼女に心を読まれるという少し楽しくて、少しスリリングな体験を不気味だと思っているのかもしれない。まぁ、元々人の気持ちがわかる時点で不思議ちゃん認定されるかな。だから、多くの人は彼女のことを避けるのだと思う。こんなに可愛いのに…。勿体無い。


ってそれはホントはどうでもいいんだけど、さっきこいつがまだグループにいたとき、結構絡んでいた、男子がいたみたいで、兄としては義務として、そいつのことをしっかりチェックしとかないとって思っちゃうんです。

そんなことで、「さっきグループでいたとき結構話しかけてた男子いなかったか?そいつ誰なんだ?」とそっけなく聞いてみる。

「うーん?私が話していた男子?誰の事だろ?どんな感じの子だった?結構男子多くてさ、しかも全員とまぁ普通に仲いいから。誰のこと言ってるのか分かんないや。ごめんね、お兄ちゃん…。」

「ええと、背はこんくらいで、髪は天パなのか少し巻き毛で、僕が見たときはホットドック食べてた。」と情報を投げる。

「うんと、天然パーマっぽくて、さっきホットドックを食べていた?.......それ、ハク君の事じゃない?」

「ハク君?誰だそれ?」「連れてくるからちょっと待ってて。」とそう答え集団に戻っていった。

そういえば、さっきからずっと僕の左側に何でか夕雫さんが控えていらっしゃるのですが、どうしてですか?

「兄妹でどんな話するのか少し気になっただけだから。あんまり気にしないで。」と言う。お前心読みすぎ。そうは思うが、それでも口にも顔にも出さない。

「そういえば、お前は兄弟いるの?それとも一人っ子なの?」とふと思ったことを聞いてみる。

「あれ?言ってなかったっけ?一人じゃないけど、今は実質的には一人みたいなことになってるけど。」「そっか。」

そんな会話をしていたら、華梨が例のハク君を連れて来た。

「この子がハク君っていうの.........。」急に黙ってしまったというのも、

「あれ?ハク帰ってきてたんだ!帰ってきてたんなら、家にちょっとは来なさいよ!」と今度は急に夕雫が彼ーハク君に話しかけてしまったからだ。

でも、なんか話を聞いていると知り合いなのか?

「えと、夕雫とハク君?は知り合いなのか?」と惑いつつ聞く。

「知り合いも何も、この子達実の姉弟よ?」と後ろからあきれ声が、呆れているってことは、碧唯か。何でこの人にはいつも呆れられなくてはいけないんだろうか。

「ふーん。って、マジで⁉二人姉弟なの?」びっくりした~。華梨も驚いたようで、目を丸くしている。

「うん、そうだよ。この子は弟の白雨はくう。今はスポーツ推薦で近くの寮付きの学校に通ってて家にはいないんだけど。」と言う。

「なるほど。家にいないから、実質一人みたいだって言ったのか。」「そゆこと」

「えっと、初めまして。川岸白雨と申します。いつも姉がお世話になっております。」とあいさつをしていた。結構真面目。好印象だな。

「ねぇ、あんたたちも射的する?」と一旦離脱していた姉が声をかけてきた。

「おう、する。良かったらお前たちも一緒にやるか?華梨、白雨?」と声を掛ける。

「うん、する!お兄ちゃんがお金出してくれるんだよね⁉」

「サラッと金を俺持ちにするな。」

「僕も一緒で、いいんですか?」

「いいって言ってるんだから、こういうのは断らずに好意を受け取っておくべきなの!」と弟を諭す夕雫。

『おう、なんか初めて姉っぽい一面を垣間見れたぞ。』なんて思いつつ甘く楽しい夏の夜が更けていく。それは同時にこれから迫りくる悲劇の幕開けが、近づいているということにも繋がって来るのであった。

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