第2話 ふたりの秘密

今僕は、病室の隅っこで腹を殴られて痛みをこらえているところだ。

なんでこんなことになっているかというと…


今から遡ること約30分前、夕雫の頼みで僕を呼びに来た碧唯の後を追ってとある病院についた。

「ああ、ここか…」と俺はその病院を見上げた。桑原中央病院というその病院は、僕たちが暮らしている町にある総合病院である。町の人の大半はこの病院の知っているだろう。むしろ知らないという人の方が珍しいのではないだろうか。そんな病院に夕雫は入院しているらしかった。そして僕にとってはもう一つの理由で知っているのだが…


「ねぇ、ねぇってば!いつまでもボーっとしてるの?いくよ」といって、彼女は、考えていた僕をぶんぶん振っていたあげく、気が付いたと思ったら、今度は僕の腕をつかんで、ぐいぐい引っ張っていった。すごく痛い、やめて欲しい。


そう思いながら耐えていると、碧唯がとある部屋の前で足を止めた。そして、僕の方を向き、「ここが夕雫の部屋」と告げ引き戸を引き部屋に入る。ベットの横に人がいた。先客かと思ったら、看護師だった。彼女は僕たちに気づき、部屋を出ようしたが、僕の横に来ると、驚いたように碧唯がつかんでいるのとは反対の腕を握ってきた。

「あれー、令央じゃん!一年ぶりくらいかな?何でここにいるの?」そう言ってガシガシと頭をなでる。痛いよ、やめて。そう思い、手をはねのけて、にらむと彼女は「うん、やっぱその眼付だけは叔父さんに似てるよな~。他はそこまで似てないのに」と笑ってそういった。

「えっと、二人は知り合いなの?」とベットの上から声がした。夕雫だ。一週間しか会ってないだけだが、少しやせたように思った。「ああ、この人は僕の従姉だからな。だろ?」「そうだねー、私のお父さんが令央のお母さんの兄だからね。」と僕の従姉:二ノ倉 茜にのくら あかねはそう言って、何かあったら呼んでねと最後に言って去っていった。


「えっと、令央来てくれてありがとう。」と夕雫が言った。

「いや僕は大丈夫。それで、大丈夫なの?」と僕

その様子を見て、碧唯がきょとんとした顔をして

「ねえ、令央。あんたもしかして何も知らないの?」と言った。

「何をだ?」を答えた。

「この子の症状について」と碧唯。

「知らないよ」と答えたとたん、体が壁にぶち当たった。


腹が痛い、碧唯に殴られたのだ。

訳が分からず、戸惑っていると、あきれたように碧唯は部屋を出て行ってしまった。

つまり、僕と夕雫が取り残されてしまったのだ。

この状態で何を話したらいいんだ?


碧唯が腹を立てて帰ってしまった後、なんとも気まずい空気が部屋に充満していた。心地が悪いことこの上なしなのだが… 何かしら話さと間が持たない。そう思い。話そうとすると、

「なぁ」

「ねぇ」

タイミングがぶつかってしまった。この子といるとそういうことが多い。なんでかなぁ?

「えっと、なんであいつあんなに怒ってたんだ?」

「碧唯の事?だったらあんまり気にしなくてもいいよ。あの子、あまり人となじまないから。」

「そうなのか?よくわかんないけどさ」

「うん、いつも私の面倒とか見ててくれたから、ほかの子とあまり関係を持ったことなくて。なんか悪いことしたなー、っていつも思っちゃう。」

そういう彼女は美しかった。何言ってるの?って思うかもしれないけど、綺麗だった。

こうやって彼女みたいに人ってだれかを思って泣けるんだなぁってふと思ってしまった。

よく考えたら当たり前の話なんだけどね。


顔をぐしゃぐしゃにした彼女はティッシュを探して手を動かし始めた。その時、横の台の置いてあったカバーのかかっていた本に手が当たってしまい、そのまま、本が落下してきた。「あっ!」と顔を拭いていた彼女が声をあげた。


とっさに体が動き、床に落ちる前に無事、本をチャッチ。

伊達に兄の真似してスポーツ三昧してたわけではなかったらしい。

カバーがかかっていて中身がわからなかったので、気になり開けようとしたところ…


「ダメー!いくら令央君でもこれは見せられない。これは秘密なの。ごめんね。」そう言って止められ、奪い返されました。そのまま、しばらく話した後、帰った。


帰り道で僕は思った。僕も君に秘密にしてることがあるよ。

けど、やっぱり君には言いたくないよ。なんでそう思うんだろうね。

僕にとって君が特別な存在だからかな。

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