第13話 断章 声

 声が聞こえる。耳の内、頭の奥で。最初はぼそぼそと聞こえていた。誰かの話し声か独り言だと思っていたそれは、日を増すごとに明瞭に聞こえてきた。


 高校に入ってから成績が落ちてきたのか…塾を変えてやるべきか?はぁ金が飛んでいくな、まったく。


 この人ったらホントに家では何もしないんだから。お皿拭くくらいやってくれたって良いのに。嫌になるわ。


 株価が落ちてきたか。いつまでたっても不景気だな。はぁーあ、せめて家の中ではゆっくりさせてほしいもんだ。


 声は聞こえるときもあれば、聞こえない日が続くこともある。聞こえる声はどんどんボリュームがあがっていく。それはひどい頭痛をもたらす。汚い言葉や卑猥な言葉、それと共に声の感情も脳の中に流れ込んでくるような気がする。


 誰かに言って治るのだろうか。いや、誰もこんなこと言っても信じないだろう。

 戯言だ、幻聴だと。どうすれば良いのだろう。

 どうしたら。誰か。

 

 誰か。


 助けて。

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