2話 似てる

私には信用できるものがない。

家族、友達。

生きているのが怖い。

ずっとそう思っていた。


「行ってきます」ボソッ

小さな声で挨拶をして出ようとした。

次の瞬間、バンッ!

大きな音がした。

何かが投げられた音でもない。

壊れた音でもない。

この音は、私が殴られた音だ。

痛い。

私は痛いのを我慢して学校へ向かった。


クソだ、クソだ、クソだ、クソだ、クソだ…

私には楽しいものなんて1つもない。

本当に信用できる友達もいない。

「おはよー星虹!」

「おはよ!」

いつも通り元気に挨拶を返した。

「星虹!?頬から血がっ!」

その一言で教室がザワついた。

「大丈夫かな。」

「月夜さんの顔に傷でも出来たの!?」

「星虹!大丈夫!?」

皆が私に注目する。

(うざいうざい。いい加減にしてよ、血ぐらいで。)

「朝飼い猫に引っかかれただけだよ〜w」

「これぐらい大丈夫だって〜」

適当な嘘をついた。猫なんて飼ってない。


もう耐えれなかった。屋上の扉を開け、柵に登る。雲一つない綺麗な空だった。

降りようとしたその時。

「月夜さん!」

その声に驚いて振り向く。宮野さんだった。

「飛び降りようとしてるの?」

私にそう聞いてくる。

「いや?空が綺麗だから、近くで見ようと思って。」

また嘘をついた。本当は死ぬつもりだった。

「大丈夫なの?」

そう聞いてくる宮野さんに(しつこいなぁ)と思ったが、私はこう答えた。

「大丈夫。」

そう言うと宮野さんは表情を変えずこう返してきた。

「本当は?」

その言葉を聞いて涙が溢れ出した。

1度も言ってもらえなかった大丈夫。

1度も言ってもらえなかった本当は?。

止まらなかった。止めようと思っても自然と流れてきた。

「私がいるから。ね?星虹。」

さっきまで苗字で呼んでいたはずの宮野さんが私を名前で呼んだ。

「うん、かな。」

私も名前で呼んだ。するとかなは少し驚いた顔をしてから、微笑んだ。


帰り際、かなは私に

「1人で帰れる?」

そう聞いた。私は帰れるよ。と言った。

グラウンドに出た時不意に屋上が目に入った。

誰かが居た。

いつもの私なら気にしていなかっただろう。

私は屋上の少女に向かってこう言った。

「また明日!」

誰かは分からなかったが。少しでも救えたら、そう思った。


次の日~

誰にも気付かれないようにそっと外を出た。

学校に着いたが、今日はおはようを言わなかった。

屋上に上がり、お気に入りのローファーを脱いで、身に付けている物を全て外した。

今日で終われるのかな。

そう思ったが気にしなかった。

トットットッバンッ!

勢い良く扉が開く音がした。

「月夜、?星虹さん!」

あ、昨日の子だ。

人目見て私は分かった。

「はぁはぁはぁ、」

彼女は息を荒げて私にこう言った。

「ありがとう。」

初めて言われた。

何故だか、まだ、死ねない気がした。

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今夜あの星になれたなら @connor921

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