第8話・『勇奈先生の股間に隠れている、妖精さんとお話しがしたいんです』

 その日もまた、悩める女子生徒が一人──勇奈の保健室を訪れた。

 女子生徒は開口一番に言った。

「竜崎先生から聞きました【勇奈先生の股間には妖精さんが隠れているとか……妖精さんを飼っているんですか?】勇奈先生の妖精さんと会話をさせてください」

 瞬時に固まる勇奈の笑顔……モノクロになった勇奈が、元のカラー勇奈にもどり首をかしげる。

「はぇ?」


 妖精の存在を信じている女子生徒が熱く語る。

「ずっと信じていました、妖精さんは絶対いるって……勇奈先生の股間に隠れていたんですね」

 目を輝かせた女子生徒が、勇奈の股間を凝視する。

 このままでは、タイトスカートの奥を覗かれそうなくらいの、妖精大好きな女子生徒の熱意に焦る勇奈。

「ち、ちょっと待って……竜崎のヤツまた、とんでも無いコトを無垢な生徒に吹き込みやがって」


 勇奈のスカートの中に向かって、呼びかける女子生徒。

「妖精さ──ん、出てきてくださ──い。お友だちになりましょう」

「ち、ちょっと待ってあなた」

 生徒に背を向けた勇奈の、いつもの脳内独り言がはじまる。

(落ち着け、素数を数えろ……ダメだ、今回ばかりは前世の異世界知識は出てこない。異世界では羽が生えた妖精なんて、珍しくもなかったから……こうなったら、最後の手段)

 

 椅子から立ち上がり、夢見る女子生徒と向かい合った勇奈が言った。

「さあ、あたしの股間に隠れている妖精さんと会話をしなさい」

 目を輝かせた女子生徒が、しゃがんで勇奈の股間に向かって話しかける。

「こんにちは、妖精さん」

 横を向いて声色で答える勇奈。

「こんにちは、妖精さんだよ」

「うわっ、本当に妖精さんなんだ……お友だちになってくれますか」

「うん、いいよ」

 腹話術でしゃべりながら勇奈は(あたし、いったい何やっているんだろう)そう思った。


「勇奈先生の森の茂みに住んでいるんですか?」

「そ、そうだよ。森に住んでいるよ」

 勇奈は赤面しながら、女子生徒と会話する。

 しばらく、妖精と会話をして満足する女子生徒。

「これからも、保健室に遊びに来たら、お話ししてくれますか?」

「うん、いいよ」


 立ち上がった女子生徒が勇奈に言った。

「勇奈先生、妖精さんの姿を見てバイバイしたいからパンツ下げて、スカートめくり上げてください」 

「できるか!」


 妖精と会話をした女子生徒が、保健室から出ていく時に、振り返って笑顔で勇奈に言った。

「今日は楽しかったです……実はあたし異世界からの逆転生者で、暗黒ドラゴンさまの眷族けんぞく竜だったんです……また腹話術で遊んでくださいね、勇奈先生」

「なにぃぃぃ!?」


 勇奈は保健室で、脱力して派手にコケた。


  ~おわり~

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