オフィスビルを手に入れた

 校門を出て繁華街へ向かう。

 人の往来が多く、サラリーマンやOLとすれ違う。この辺りともなるとビルも多く存在し、俺でも知っている企業があった。


 どんどん歩いていき、やがて一等地とも呼べるオフィスビルの前に辿り着いた。


「ここって……」

「ほら、本当だったでしょ。ビル」

「いやいや、とか言って見学するだけだろ」

「まーだ疑ってる」


 手を引っ張られ、先を進む。

 本当に中へ入って行った。

 マジかよ。


 しかも、中に人はおらず、無人に近かった。いるといえば警備員はいたけど、大丈夫なのか? だが、警備員のおっちゃんは、宮藤の顔を見るなり通してくれた。


 うそーん。


 エレベーターで最上階の十階へ。あっという間に辿りつくと、それなりに広いオフィスに辿りつく。



「凄い眺めだな。てか、ぜんぜん物もないや。テーブルと椅子だけじゃん。社長さんとかいないの?」

「いないよ。だって、ここまだ買ったばかりだし」


「あはは……冗談だろ?」



 冗談だよな!?

 だが、宮藤の表情は至って真剣。ふざけている顔でもなければ、どうぞと社長椅子に座るように促してきた。……マジィ!?



「さあさあ」

「いやいや、このビルって誰かの所有物だろ? 宮藤のお父さんとか」

「だから、あたしのだって」

「…………あー」


 馬鹿な。そんな非現実的な話があるか。ギャルがビルを所有?? ありえん、ありえなさすぎる。あまりに頭痛がして立ち尽くしていると、宮藤はとうとう証拠を取り出した。


「はい、これオーナー証明書」

「うわ! 本物!」


 そこにはバッチリ住所とか宮藤の名前など書かれていた。……確かに、さっきの警備員さんもアッサリ通してくれたし……これはもう疑いの余地がない。



「このビルで事業を始めましょう」

「……いいのか」

「うん、お父さんにも許可は貰っているし、あたしが社長って柄じゃないしさ……だから、賢に社長をやって欲しいな。自由にやっていいから」


「なんてこった、ここまでされたらもう後には引けないだろう。こんな立派なビルをさ、貸してくれるとか」


「貸すんじゃないよ、もうあたしと賢のビルだよ」



 そうだ。そうだったな。

 よし、これで早くも俺の夢が前進した。ギャルである宮藤を秘書に迎え、ビルまでゲット。資金も何とかしてくれるっていうし、こりゃあ高校生社長としてバリバリ働きますか……!

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