第6話 運命の出会いから

髪を切り終え、2階の喫茶七色に不思議と足が進む。

扉を開くと「チリン、チリン」という鈴の音ととともに

店員さんの「いらしゃいませー、何名様ですか?」

と愛想よくキラキラした笑顔を向けられる

(うぅ、眩しい)

その端の方のテーブルから私を見つけた

占い師が手を振っているのに気が付いた。

「まっ、待ち合わせです」というと

「かしこまりました、ごゆっくり」と言って去っていた。

正直うらやましく思えた。

あんな風に彼と喋れたら…なんてねと ボソリ


彼は私とは住む世界が違うんだわ。

近くまでいくと、彼の前の席に座る。

「ずいぶん、思いきった髪型だね。でも、よく似合ってる」と微笑む。今まで異性とこんなふうに話したことなかったので顔が、強張る。

「君に近づくと、よく静電気が走るんだよね」と、よくわからない言葉になんて返せばいいのか黙ったままでいる。

「君の親友とは、あれからどうなったの?」

すごいなあ。あのすごい数の中の一人の客の占い内容を覚えているとは。

「あの日から、仲たがいしてあれから会っていません」

「そう」

目の前で緊張しているのと、周りの女子の占い師を見る視線と見比べるように私を見る視線にいたたまれない。その時、ウエイトレスが注文をとりにくる。

「私これから、いくところあるのでこれで失礼します」本当は、全然予定なんてないんだけど。

「そうなんだ。それは、悪いことしたね。あの、これ持っていて」と、リュックサックから取り出したものをさしだす。名詞と小さな袋だ。「何か、あったらここに連絡して。それと、この袋の中には僕とおそろいの小さな水晶が入っている。お守り代わりになるから」なんだろう。私にまだ、何か起きるというのだろうか。

あれから、凛子とは連絡もないし自分から連絡する気にはなれなかった。

ほんの少し、異性として期待していた自分が恥ずかしかった。

私なんて相手にしなくてもいくらでもモテルタイプだものね。

帰宅途中、焼きたてパン屋の匂いにつられて買っていく。私にはやっぱり色気より食い気だなぁって自分に言い聞かせる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る