第22話 黒幕登場
「誰だお前は?」
団長さんが振り向きながらボロボロのローブを着た男に問う。
「我が誰であろうか、貴様には関係なかろう。どうせ今夜無くなる命だ会話するだけ無駄というものとっとと失せろ」
「どういうことだあんちゃ・・・」
団長さんが答えるよりも早く足元から無数の手が生えてくる。
「お前らもう一仕事だ!こいつが今回の元凶だ!」
怯むことなく団長さんは団員に指示を出し、防衛ラインを再構築する。
「嬢ちゃんたちは団員の後ろにて魔法だけを使え!前は俺らに任せな!」
私も下がりながら『
「足止め助かるぜ」
団員さん達が動きを止めたアンデッドから確実に仕留めていく。湧き出てくるアンデッドの数も先ほどと比べると随分少ないので確実にあのローブの男へと近づいていく。だからこそ違和感を感じるべきだった。
「これでお前もお終いだ!」
複数の団員さんがローブの男に切りかかろうとした次の瞬間、団員さん達がローブの男の背後から出てきた細長い異形の触手?のようなモノに貫かれ吹き飛ばされた。
「・・・!」
刺された人たちも何が起きたのか瞬時に把握できないようだった。
「お前ら今助けるぞ!」
団長さんと数名が団員を貫いている触手のようなものを切断し、刺されていた人たちを救出して素早く戻ってくる。
「団長・・・これマズいやつです。俺を捨てて・・・」
「は、どういうことだ?」
団長さんが抱えてきた団員さんが妙なことを言うと異変が起きた。
先ほどまで血色を失っただけの貫通された体の一部が腐りはじめ、それと同時に団員がまるでアンデッドのような叫び声をあげる。
「ガァァァッ!」
『
咄嗟に団長さんを襲おうとした団員さんを止める。
「フハハハハハ、滑稽だな!どうだ?目の前で仲間がアンデッド化した気持ちは?」
ローブの男は愉快そうにケタケタ笑いながら団長さんを煽る。
「貴様ッ!」
団長さんが先ほどとは明らかに異なる速さでローブの男の下まで近づくと切りつける。
「剣で戦うとは乱暴な・・・魔法を使え。魔法こそが至高。全てを可能にする究極の技である」
ローブの男は嘲笑しながら剣を躱し団長さんをさらに煽る。
「剣しか使えん単細胞に何を話しても無駄か・・・」
ローブの男が後ろに剣を回避するために大きく飛んだ。
「もらった」
『ラヴァストーム』
ローブの男が一瞬で炎に包まれました。
「魔法無しでこの立場が務まるかってんだよ・・・」
若干呆れたような声を出しながら団長さんが戻ってこようとすると
「まだ終わりではないぞ?」
燃え盛っている炎の中からローブの男の声がまた聞こえた。
「あれで死なないって人間じゃないだろ」
団長さんがまた剣を構えて炎の中にいるであろう、ローブの男と対峙する。
「あの程度の魔法で我が消滅するわけがなかろう?」
声が聞こえ目の前の炎が消えた。
「あの忌々しい小僧共に野望を邪魔され我らは千余年復活するのに時間がかかった。時が過ぎるのは悲しいな!当時の魔法使い共はもっと手ごたえのある奴らだったぞ!それが今ではここまで衰えたか」
消えた炎の中から現れたローブの男ではなくボロボロの紫衣を纏い頭に趣味の悪い紅い大きな宝石を付けた王冠を被るスケルトンが現れた。
「我の名はイラ!偉大なるあのお方の望みを叶えるべく復活したエンペラーリッチだ!我が名を知れたことを冥土の土産にするといい。最も我の下僕となってあの世には行けんがな」
ケタケタ笑いながら骸骨の奥に二つ青い光を輝かせている。
「さぁ余興も終いだ」
そう言うと第一波の時に皆で捌いた量よりもはるかに多くのアンデッドが地面から湧き出てくる。
「この量じゃ近づけない上にこっちもだいぶ被害が出る・・・」
団長さんは前線で大量のアンデッドを倒して皆の負担を少しでも減らそうとしている。
「足掻け!醜く足掻け!」
イラが遠くで禍々しい玉座に座りながら近くで耳に残る不快な声をあげる。
「あんたは黙ってなさい!」
『
私が生成した高練度(神代君基準)の初級魔法を反射的に撃ち込んでしまった。
「あ・・・」
不意のことだったのかイラは完全に避けることができなかったのか骸骨の端を少しかすったようだ。
「小娘?お前何をした?」
「うるさいから黙らせるために反射的に撃ち込みました!」
「そうか・・・」
そう言うとイラの周りから先ほどとは比べ物にならない量の触手が出てきた。
「我を黙らせれると思ったものほど知らずは死ぬがいい」
かろうじて見える速度で触手が弾丸のように飛んできた。
「皆回避しろ!」
団長さんも回避しながら何本か触手を切り落とすが全てを切り落とすことなどできず団員、聖教騎士団、クラスメートが何人も貫かれる。
「いやぁぁぁぁぁっぁぁぁ!」
クラスメートの叫び声が聞こえる。
「グルガァァァ!」
貫かれた人たちがアンデッド化する。
『
その人たちを拘束する。けどとどめなんてさせない・・・
「第二波来るぉぉぉぉ!」
団員さんの声が聞こえる。
また見えたので避けることができたが、何人もアンデッド化する。
「さっきまで生きていた仲間が敵となって襲ってくる!これほど面白いことはない!さぁどうする?お前らに殺せるか?」
団員さんが、クラスメートが目の前でアンデッド化して仲間を襲う。こんな酷い光景があっていいの?いやよくない。けどどうにもできない。
「止めてよ・・・」
「第三波来るぞぉぉぉぉ!」
「止めてよ・・・」
「お前ら気を引き締めろ!ここが踏ん張りどころだ!」
「止めて!」
目の前まで触手が迫っている中で、私は神代君が訓練で見せてくれた光景を思い出す。
「魔法ってのは自分のイメージだ。それを言葉のっけて使う。慣れればイメージだけでできる!こんな風にな!」
『魂をも凍らせる世界』
最終日に野営地からいつもより離れた場所で見せてくれた。あの魔法。
次の瞬間世界が凍った。周りの町も触手も、団員やクラスメートはそのままで。
「小娘なにをした?」
「嬢ちゃん?大丈夫か」
団長さんが走ってこっちへ寄ってくる。けどどうしてか足に力が入らないし瞼も思い。
「魔力切れなら丁度いい!ここで果てろ!」
また新たな触手が飛んでくる。
「嬢ちゃん!」
今度こそ死んだと思った。
(神代君との約束私が破ってしまうとは・・・情けないです)
『
閉じきる寸前の視界に彼が映る。
「ギリギリ間に合った。白銀、時間稼いでくれてありがとう」
「こう・・じr・・くn」
私は完全に意識を手放した。
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