第1話 またこの世界か・・・
あの夢?から1か月特に何事もなく日常を過ごしている。
俺の通う高校は世間一般でいうと難関校にあたるらしい。
小さい時から神代グループの跡取り候補の一人として、英才教育を施された。ここもその過程で、俺の人生の通過点に過ぎない(親の描く)
この環境が好きか嫌いかというともちろん嫌いだ、一族は常に跡継ぎ争いをし、お互いのことをけなしあうことしかできず、会社のことよりも我が身の出世、保身しか考えていない。親父もそんな人間の一人で昔から辟易している。正直今、会社が成り立っているのは会長である祖父がしっかりしているからとしか言えない。
俺自体、祖父のことは人間としても、親族としても尊敬していて、この人の下で働いてみたいとは思うが、後継者争いに巻き込まれるのは必至。ただ普通に生きたいと思う俺の考えは幻想でしかない。
なんて考えていると教室についた、そして自分の席に着くと、鞄から最近ハマっている推理小説を取り出し、読書に集中する。
「おはようございます、神代君」
「ん、おはよう白銀さん」
小説を読みながらちらりと横に目を向け、隣の席の白銀雪さんが挨拶を返す、学年で一番の美少女であり、頭脳明晰、清廉潔白、等々形容するときりがないそうだが彼女もまた白銀グループの跡取り候補の一人であり俺と同じ駒だ、大きなグループの子供はどこも同じようなものではあるが、俺や白銀のようなグループの跡継ぎ争いが嫌いな人間はほとんどいない。私利私欲にまみれて生きている人間が多いなんて当たり前のことだから特になんとも思いもしない。
「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは、この歌は~・・・」
授業も正直、親の英才教育とかの家庭教師のせいで学ぶこともないので読書をして
時間を過ごす。
「いつも読書ばかりでは、将来困りますよ」
「別に問題ない」
白銀さんが心配してくれるが正直問題ない、ただそれを説明するのもまた面倒だ。
「この歌は在原業平朝臣という人が歌ったもので・・・」
その時、突然教室の中央が光始め、見覚えのある紋様が現れた。
突然の事態にクラスがざわめく。
「なんですか、これは・・・」
さすがの白銀さんもこれには絶句している。
「ん?これは・・・いや、まさか」
「神代君これがなんなのか知っているのですか?」
知っているも何も俺の人生最大のイベントを巻き起こし、終了させたこの"魔法陣"を忘れるはずがない。
俺も突然の事態に戸惑った、それと同時に少しの期待と恐怖、あの世界にまた行ける。
そうしている間にも魔法陣は輝きを強めていき閃光が俺たちの視界を包み込んだ。
「どこだよ・・・ここ」
「学校は⁉ここはどこなのよ」
とまぁ召喚されたわけだがクラスの連中はほぼ全員が混乱状態、一方俺はというと
「またか・・・今度は何の用だよ、全く」
「これってもしかしてラノベとかである異世界転生ってやつか!てことは俺ら勇者として召喚されたんじゃないか?」
「マジかよ⁉」
「てことは俺らがこの世界の救世主になるんじゃねぇか!」
「人生勝ち組ルート来たー!」
クラスの連中の一部はこの事態を把握してきたようだ。
「二ホンの皆さん突然お呼びしてしまい申し訳ございません」
突然後ろから声がかけられ皆が振り向くと紺碧碧眼の美少女が立っていた。
「あなた方は先代の勇者が1000余年前に倒した魔王が復活したことにより、この世界を救っていただくべく、私の魔法で召喚いたしました」
「・・・っ」
驚いた、まさかあれから1000年が経っているとは、こっちでは1か月しか経っていなかったのにな。魔王も復活しているとはまた面倒なことだ。
「先ずはあなた方のステータスをこの水晶で測定させていただきます、具体的な話はその後です」
そう言い、その少女が手で合図をすると後ろから従者が水晶を運んできた。
「では順番に手をかざしていってください」
少女の言うことに従って、クラスのみんなが水晶に手をかざし、従者がそれを確認し、メモしている。並ぶのに遅れたので俺は最後尾についた。
誰も気づいていない・・・気づくはずもないが、あの水晶は手をかざした者の魔力に共鳴してその度合いで数値が出ているという仕組みをレノアから聞いたのでなんとなくクラスの皆のステータスが分かる。俺は素のステータスで騒がれると困るので、昔面倒事を避ける時によく使用したステータス改竄魔法を無詠唱で唱え、クラスの中でも平均的になるように感覚的に調節した。
そして、俺の番が回ってきた。
(共鳴波もクラスの中でも普通という感じか、これで目下の面倒事は避けられた)
ほっと息をついていると少女が皆に話し始めた。
「全員のステータスの計測を終えました、まず自己紹介遅れましたが私の名前はキュレネ・ウィル・シュトラウス。この国、シュトラウス王国の第一王女です」
唐突な自己紹介にクラスの面々は驚きつつも、興奮しているようだ。
「王女様ってことは世界を救ったら結婚できるんだろうなぁ、これぞ王道異世界ファンタジー!」
「やってやるぜ!」
沸き立つクラスメートを横目に俺は白雪の隣に移動して、話しかけた。
「この状況どう思う?」
「正直、理解が追いつきませんね、この状況が私たちに本当に良いのかも判断しきれません」
「正常な判断だ、どうせすぐに何か起こるさ」
「それで、さっき聞きそびれたのですが、なぜそのような知った口調で話すのですか?」
「後で人がはけたら、話してやるよ。もちろん他言無用だがな」
「それでは今から名前を呼んでいくので、グループごとに固まってください」
王女が従者から紙を受け取り、名前を列挙し、3つのグループに分けていく。
ほどなくして4つのグループに分かれた、共鳴派の大きかったのが10名、俺を含めた普通グループが15名、少し弱かったグループ10名、全く反応がなかったグループ5名、この分け方の時点でいやな予感がし始めた。
王女が5名のグループの前に行くとそれまでとは打って変わった冷酷な声で
「あなた方はいりません、消えろ」
そう言って3人が首を魔法によって切断された。
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