第8話「北方紛争(後編)」

 北方ノースランド王国連合。



「外交の前に観光がしたいわ♪♪」


 ノースランド王国連合へ表敬訪問をする為に式典機士団、七色機士団レインボーナイトコーアを連れ立ちやって来たと公式にはされていたマリー・ウェスランド皇后であったが、わがままを言い出しノースランド王国連合デーン王国のマルグレーテ・デーン女王への謁見えっけんをドタキャンした。


 なんとか領土を維持しているノースランド王国連合スヴェーア王国西岸とその首都スヴェーアへ行き友好親善の贈り物と称して軍事物資を補給するためだ。


「次は川遊びがしたいわ♪♪♪♪」


 そしてまたわがままを言い、機士兵士家族からの手紙を受け取り機士兵士達へ手紙を届けながらウェストランド円卓帝国からつれて来た七色機士団レインボーナイトコーアの規模を逸脱した超大規模補給部隊と共に最前線を目指しスヴェーア・フィン湾(北方半島湾)西岸を北上、スヴェーア王国北部にあるスヴェーア・フィン川の西に押し込まれた最前線へとやって来ていた。


 

 「マリー・ウェストランド皇后陛下はわがままがすぎる」とのちの歴史家は語った。



***



 ノースランド王国連合スヴェーア王国スヴェーア・フィン川西岸、スヴェーア王国をその川で東西に分けた戦線はイーストランド連邦が優勢に進めていた。

 


 北方の低く垂れ込めた雲の上は敵味方の巨人機で溢れかえり、神話世界のような戦いを繰り広げている。



「ノースランド王国連合統合機士団! お前らは市民の避難だけしてろ!!」


 モードレッド・M・セイクリットソード卿は白に紫の肩ラインの巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(パープル)]を駆り戦場にいた、ロボットアームには巨人機兵装、金の聖剣、ロケットナイトウェポンRKW-5-MSSP-Cモードレッド・M・セイクリッドソード卿スペシャル[タイタン・クラレント]巨人機兵装、紫十字の大型盾、ロケットナイトウェポンRKW-5-LKCSP-RLSレインボーナイトコーアスペシャル[レインボー・ラージシールド(パープルクロス)]があった。


「いえ! 自分達もまだやれます!!」


 ノースランド王国連合統合機士団の生き残り達はウエストランド円卓帝国の供与した二世代前の巨人機、ロケットナイトRK-2A[タイタン]の輸出用、灰色塗装の巨人機、ロケットナイトRK-2NL[トール]で奮戦していたがすでにそのほとんどの機体を失っており満身創痍だったが、いまだ国民の自由を守る為に戦い続けていた。


「兄さんスカイフィッシュだ! ワラキア公国のヴァンパイアがいるよ!!」


 ガラハッド・G・L・セイクリットソード卿も白に赤い肩ラインの巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(レッド)]に巨人機兵装、ロケットナイトウェポンRKW-5-GSSP-Bガラハッド・G・L・セイクリットソード卿スペシャル[タイタン・ベイリン]巨人機兵装、赤十字の大型盾、ロケットナイトウェポンRKW-5-LKCSP-RLSレインボーナイトコーアスペシャル[レインボー・ラージシールド(レッドクロス)]をそのロボットアームに持ち兄の後ろを守って戦っている。


 相手はヘッラス共和国でジークフリート・ドラゴンスレイヤー卿とネロ・ロームルス卿が対峙した束ねロケットスカート巨人機、ロケットロボットrr-8g[ブロンズナイトⅣ(フォー)]とウエスト側で[スカイフィッシュ]の呼称が付けられた二十機にもなるの巨人機兵装無人投擲槍ドローンロケットジャベリンdrj-1[ファントム]の編隊であった。


「わかっている! マジャルハザール公国のヴァンパイアもな!!」

 モードレッド・M・セイクリッドソード卿は盾の影で金の巨人機聖剣を「くるり」と回した。


「ドラゴンスレイヤー卿はどこだ! 我は奴に借りがあるのだ!!」


「そうだよボクちゃん達、あたし達はあいつらに用があるのよ!!」


 巨人機、ロケットロボットrr-8g[ブロンズナイトⅣ(フォー)]を駆る吸血鬼ヴラド・ワラキア公、マジャルハザール・エリザベート公の深紅に光るの瞳が兄弟機士を見つめる。



***



「二世代前の巨人機でよくぞここまで戦い抜いたノースランド王国連合統合機士団の機士達よ! 失われた兵も必ずヴァルハラに居るだろう! だが! だがこれからだ! 国を、国民を護るんだ!!」


 ジークフリート・ドラゴンスレイヤー卿の白に藍の肩ライン巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(インディゴ)]は巨人機兵装、竜殺しの両手剣、ロケットナイトウェポンRKW-5-ZDSP-Bジークフリート・ドラゴンスレイヤー卿スペシャル[タイタン・バルムンク]をかざし、ノースランド王国連合統合機士団と共に化け物と対峙していた。


「貴公がジークフリート卿か? 是非ぜひ剣を交えたかったぞ!」


 アレクサンドル・ウラジーミル・スーズダリ大公はそう言うと、円錐形ロケット四本を束ねた二本足ロケットフレアパンツ巨人機、ロケットロボットrr-11a[シルバーナイト]の巨人機兵装、両手持ち超巨大十字剣、rr-11-aus-bbアレクサンドル・ウラジーミル・スーズダリ大公専用[アレクサンドル・バスターブレード]を正面に構えた、豪傑と呼べる男前っぷりだった。



***



「私はここだーーーーーー!! かかってこーーーーーーーーーーーーーーーい!!」


 ジャン・フラッグ卿は白に緑の肩ラインの巨人機、ロケットナイト5RK-5C[ヘビー・パラディン(グリーン)]を敵の量産主力巨人機、束ねロケットスカート巨人機、ロケットロボットrr-8e[ブロンズナイトⅢ(スリー)]が隊列を作り迫り来る空で奮戦していた。


 ジャン・フラッグ機は一人狙われる覚悟で突出しその敵の中央を崩していく、その左ロボットアームには巨人機兵装、戦旗、ロケットナイトウェポンRKW-5-JFSP-Iジャン・フラッグ卿スペシャル[タイタン・フラッグ・アイリス]を掲げ味方をこぶし、右ロボットアームには巨人機兵装、天啓てんけいの十字剣、ロケットナイトウェポンRKW-5-JFSP-Fジャン・フラッグスペシャル[タイタン・フィエルボワ]で敵編隊を分断していった。


「全くノースランド王国連合統合機士団といいジャンといい命が軽い奴らばかりで泣けてくるよ!!」


 シャルル・ガンレイピア卿は白に橙の肩ラインの巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(オレンジ)]で巨人機兵装、単発長銃、ロケットナイトウエポンRKW-5-MR[タイタン・マスケットライフル]を使いジャン・フラッグ卿の巨人機ロケットナイトRK-5C[ヘビー・パラディン(グリーン)]を後ろを守り続けている。



***



「まった~~く~~♪ ルイ・ウエストランドが~~♪ イーストランド連邦~~♪ を~~♪ 刺激すると~~♪ 主力巨人機~~♪ ロケットナイトRK-3A[ホワイトナイト]を~~♪ 出し惜しみなど~~♪ するから~~♪ 戦局が~~♪ 劣勢に~~♪ なるのだ~~~~~~~~~♪♪♪♪♪♪」


 ネロ・ロームルス卿は白に青の肩ラインの四本足ロケットの巨人機、ロケットナイトRK-6A[サジタリウス(ブルー)]の巨人機兵装、超長距離二連超重砲、ロケットナイトウェポンRKW-5-NRSP-WECネロ・ロームルス卿スペシャル[タイタン・ダブルエレファントカノン(ネロ・カノン)]の榴弾砲弾幕射撃を敵の後衛まで飛ばし進行を遅らせている。



***



 ノースランド王国連合スヴェーア王国スヴェーア・フィン川西岸、後方支援地帯。



「ヘラクレス、私の事は気にしないで♪ 私を乗せたままでいいから前線に行きなさい、七色機士団レインボーナイトコーア機士の責務を果たすのです!」

 マリー・ウェストランド皇后は王家の責務を果たすと決めていた。



「………………………………………………」



「どうしたの? ヘラクレス?」


「ダメ、ヘラクレス、ニンム、マリー、マモル!」


「どういう事? ヘラクレス?」


「モードレッドモ、ガラハッドモ、ジャンモ、シャルルモ、ジークフリートモ、ネロモ、ルイモ、マリーマモレイッタ、ヘラクレス、マリーマモル!」


 ヘラクレス・トゥエルブ卿の白に黄の肩ラインの四本足ロケット巨人機、ロケットナイトRK-6BM[マリー・サジタリウス(イエロー)]は後衛にとどまり動かなかった、そこは決して落とされないマリー・ウェストランド皇后の城[ヘラクレスの鉄壁城]と呼ばれた。



***



 ミッドランド王国首長国連邦、クレオパトラ・ミッドランド女王の庭園。



「それでどう~~なったのマリ~~?」


「どうなったかはおぬしが一番知っておろう玉環ぎょくかん


「天然って怖いね、クレオパトラちゃん♪」


「マリーおぬし……笑顔でよく話せるの」


「結果停戦が成立したんだもん♪ クレオパトラちゃん♪♪」


「停戦~~?」


「そうよー、玉環ちゃん♪」



***



 それは突然の出来事だった、ノースランド王国連合とイーストランド連邦の停戦合意がなされたのだ。




「…………ジークフリート卿、失礼する!」


「なっ?!」


 ジークフリート・ドラゴンスレイヤー卿はアレクサンドル・ウラジーミル・スーズダリ大公の言葉に驚く、それはアレクサンドル・ウラジーミル・スーズダリ大公の巨人機、ロケットロボットrr-11a[シルバーナイト]の巨人機兵装、両手持ち超巨大十字剣、rr-11-aus-bbアレクサンドル・ウラジーミル・スーズダリ大公専用[アレクサンドル・バスターブレード]が、ジークフリート・ドラゴンスレイヤー卿の巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(インディゴ)]の喉元に突き付けられ巨人機兵装、竜殺しの両手剣、ロケットナイトウェポンRKW-5-ZDSP-Bジークフリート・ドラゴンスレイヤー卿スペシャル[タイタン・バルムンク]を地上に落としたジークフリート・ドラゴンスレイヤー卿は敗北を覚悟していたからだ。



「ヴラド・ワラキア公! マジャルハザール・エリザベート公引くぞ!!」


「どういう事よウラジーミル・スーズダリ大公?!」


「ふん、我が土地でなければ命をかける理由もなし引くぞエリザベート!」


「なんで?? もうすぐ若い子落とせたのに! ヴラド! ねえヴラドったら!!」


 敵がスヴェーア・フィン川の東岸まで引いて行く、追撃をかける戦力は残っていない。


「に、兄さん、助かったのかな?」


「ああ、ソードフィッシュ、半分も落とせなかったがな…………」


 二人の巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(レッド/パープル)]は巨人機兵装、十字の入った大型盾、ロケットナイトウェポンRKW-5-LKCSPレインボー・ナイト・コーアスペシャル[レインボー・ラージシールド(レッドクロス/パープルクロス)]をそれを持つ左ロボットアームごと失い、何とか片腕ずつで支え合っていた。


 アレクサンドル・ウラジーミル・スーズダリ大公ひきいるイーストランド連邦、北方遠征軍がスヴェーア・フィン川の東岸へと引いて行ったその日、ウェストランド円卓帝国ルイ・ウェストランド皇帝をとした停戦合意がノースランド王国連合とイーストランド連邦の間で成立したのだ。


 その合意文章にはスヴェーア・フィン川周辺を非武装地帯とし、東西住民は三十一日以内にどちらに住むかを決め登録、三ヶ月以内の登録地へ移転が義務とされていた。


 そして停戦状態のままスヴェーア・フィン川を挟みスエビ海西岸がスヴェーア王国領に、スエビ海東岸のイーストランド連邦実行支配地域が新たなイーストランド連邦領、アレクサンドル・ウラジーミル・スーズダリ大公がするフィン大公国が誕生した。


 ルイ・ウェストランド皇帝が住民のを第一に考えた案だった。



***



 ウェストランド円卓帝国、ガリア市マリー・ウェストランド中央病院。


 マリー・ウェストランド皇后がわがままを言って作った無駄に広い建設当時税金の無駄使いとタブロイド紙に揶揄やゆされた首都ガリアの中央病院、今はその広さをいかし大量の傷病者を救う野戦病院と成っていた。


「あの状況で生き残ったんだから勝ちでいいだろ?」


 シャルル・ガンレイピア卿があの戦場で敵の束ねロケットスカート巨人機、ロケットロボットrr-8e[ブロンズナイトⅢ(スリー)]に囲まれ撃墜された、入院中のジャン・フラッグ卿を見舞ってそう言った。


 シャルル・ガンレイピア卿にとって生き残るは勝ちなのだ。


「戦争が始まった時点で負けだよ……」


 ジャン・フラッグ卿にとって戦争は始まった時点で負けなのだ。



 白い清潔なベッドの上でジャン・フラッグ卿は涙を落とし、シャルル・ガンレイピア卿はただそっと抱き締めた。



「それでも君が生きていて嬉しい」



「ジャンヌ」



***



 エピローグ



「で、そなたの国が一番うまい汁を吸っておると」

 クレオパトラ・ミッドランド女王はワインをごくり。


「戦力ほとんど西に来てたからねー」

 マリー・ウェストランド皇后はお菓子をぱくり。


「え~~玉環が悪いの~~?」

 と言いつつ唐玉環皇后はライチをぱくり。



***



 歴史の裏舞台で……



 停戦の前の日、イーストランド連邦、ルーシ帝国イヴァン・ルーシ皇帝に極東連合共和国の大名、五三桐紋秀吉ごさんきりもんひでよし公、三葉葵家康みつばあおいいえやす公が征夷大将軍、織田木瓜信長おだもっこうのぶなが将軍のめいでイーストランド連邦、ルーシ帝国東部に進行を開始したとの報が入ったのだ、それは極東連合共和国がイーストヨーランド連邦との平和条約を一方的に破棄した事を意味していた。


 これによりイーストランド連邦ルーシ帝国イヴァン・ルーシ皇帝はアレクサンドル・ウラジーミル・スーズダリ大公をつれ、ルーシ帝国東部戦線へ行かざるおえず、ルイ・ウェストランド皇帝を仲介者としたスヴェーア・フィン川での停戦が実現したのだ。



***



「なんか~征夷大将軍の~信長ちゃんが~~平和条約なんて信じるほうが悪い! って言ってた~~」

 ライチぱくり。


「平和条約軽! そんな軽く条約破るなよなのじゃ」

 ワインをごくり。


「征夷大将軍って玉環ちゃん所の家臣なんだよね?」

 お菓子ぱくり。


「そうなの~~でもね~~和国は~~経済も軍事も独立してるから~~いう事聞かないみたいなの~~」

 ライチぱくり。


「ダメなのじゃ! それシビリアンコントロール出来てないのじゃ! 家臣じゃないのじゃ!!」

 ワインをごくり。


「世界にはいろんな国かあるんだねー♪」

 お菓子ぱくり。


「しかし和国のサムライは殺伐としておるの」

 ワインをごくり。


「あの人達~~基本~~戦の事しか考えないみたいなの~~♪」

 ライチぱくり。


「危ない奴らなのじゃ……」

 ワインをごくり。


「でもマリーは助かっちゃった♪ 持つべきものは友だね♪♪」

 お菓子ぱくり。


「妾の国はそんな危ないの飼っとる国と向き合っとるのか?」

 ワインをごくり。



 三人はこのお茶会を心から楽しんだ。



 今日も外に待機しているライオン着ぐるみの機士、ヘラクレス・トゥエルブ卿がマリー・ウェストランド皇后を守りきれなかったらこのお茶会はなかったのだ。



 そしてこれからも世界は平和と争いを繰り返しながら進むのだろうか?



***



 神様は思いました、せっかく手に入れた知恵をどうして戦争ばかりに使うの?



 人間ってバカなの?







第一章・マリーの七色機士団(完)

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ロケットナイト~戦うイケメン機士~ 山岡咲美 @sakumi

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