第8話ロディの心情③
自分に姉がいた。
父の告白に、ロディはそんなに驚かなかった。
むしろ――ああそうか、やっぱりなといった感情の方が大きかった。
姉など今更なんだというのだ。
知ったことか。
冷めた感情。
分かっていたことではないか。
何を父に期待する?
何もない。
何も。
もっとも、自分に父の指示を無視することが出来ない。
金銭的に父の方が圧倒的に優位なのだから。
自分と母を苦しめた「あの女」の娘、つまり自分の姉との生活。
どうして今更になってそんなことを父が自分に命令するのか、理解できないし、しようとも思わない。
興味がない。
ただ、自分は好きな絵を描き、生計を立てることが出来れば、それでいい。
それまでの辛抱だ。
ロディは心の中で父に唾を吐きつつ、提案に乗った。
そして荷物をまとめて、ロディは家を離れ、父が用意した新たな地へと向かった。
☆★☆
事前に父から姉が来る日付は伝えられていたし、彼女が精神的にショックを受けて、精神が不安定である事を、手紙で知らされても、特にロディの心に変化はなかった。
姉の事など吹き飛ぶぐらいに、思ったより、ココでの生活が彼は気に入っていたのだ。
誰にも邪魔をされず、のびのびとできるこの生活が。
だから、「ごめんください」と外から扉が叩かれるまで、姉の来訪の事をすっかり忘れていた。
また近所の人が採れたての葡萄を差し入れにくれるのだと勘違いして、何も考えずに扉を開けーー。
☆★☆
ロディは初めてマリーに出会った。
血の繋がりは本能で理解するものなのか、フードで顔を隠していても、直感的にすぐに姉だと理解した。
そしてその時、ロディは彼女が手紙の通り、辺りをキョロキョロするといった不審な行動をとりつつ、決して自分ではなく地面の方を見たままオドオドと喋るマリーを見て、彼女も自分と変わらずに不遇な目に遭ってきたのだと、悟った。
ただ、この時はまだロディはマリーに対して、同情こそすれ、歩み寄る気は毛頭なかった。
最低限の会話で十分。
そう思って、特に姉を意識することはなかった。
だが、ロディは嫌でもマリーを意識することになる。
自分の心に発作的に生じる強迫概念に苛まれ続けて。
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