第3話 感染2日目

 起床し体温を測定するが、37.0度と平熱。自覚症状もなし。朝食をとり職場へ。いつも通り、仕事用メガネとサージカルマスクを装着。新しい白衣を出し、聴診器も変えて朝回診へ。いつも通り病室への入室前後は必ずアルコール消毒を行う。接触時間は短時間にしようと思い、回診では患者さんとの接触時間は数分程度とした。特に患者さんからの訴えがなければ身体に触れて熱感の有無、胸部背部の聴診を行い、フローシートや看護師さんの記載を確認し、SOAP形式でカルテ記載を行なっていく。


 本来の始業時間は、医師以外の職種は8:30~、医師は9:00~だが、普段からほぼ8:30までに回診、指示出しを終えておく。今日は医局に戻ると作成すべき書類が机の上に2冊。それを横目で見ながら、訪問診療の準備を行う。


 この日の午前は訪問診療の日。複数の患者さんを診察する。ほとんどの患者さんは状態が落ち着いていたが、施設入所中の方が一人、当日の早朝、ベッドから落ちた状態で発見され、右上肢の痛み、右小指の屈曲に内出血があるとのことで、診察に時間を取られた。左と比べると右上腕骨頭が肩関節の前方に変位している印象もあるが、画像評価ができず、判断は困難。キーボードサインはなし。右上腕骨の触診では外科頚骨折など、骨折はなさそうであった。右小指も触診を行ない、明らかな骨折や指の変位は見られなかった。寝たきりの患者さんであり、施設から病院に転院しての評価、整復についてはご本人のADLを考えると不要と判断したが、時間を取られてしまった。この日はもう一人、新規の患者さんの診察、ご家族へのお話などで時間を取られてしまった。患者さんは悪性腫瘍末期の方。大学病院から、「在宅困難時は某病院緩和ケア科への入院を希望されている」との紹介だった。


 以前、同様の紹介で、「在宅療養困難時は別病院ホスピスへの入院を」となっていた方が、腰椎の病的骨折で動けなくなり、自宅療養困難となった際、別病院緩和ケア科に入院依頼をしたところ、「大学病院には受け入れますと返事をしたが、そちらの病院から受け入れる、とは聞いてもいないし伝えてもいない」と訳の分からないことを言われてしまい、非常に困惑した経験があった。なので今回は初回の訪問診療後、某病院緩和ケア科に「主治医が大学病院からこちらに変わりました。何かの際はこれまでの話通りでよろしくお願いします」とあらかじめ紹介状を作成し、送付するように段取りした。


 この日は忙しく、午後から新しい方が予定入院され、それとは別の入院中の方の病状説明があり、大慌てであった。いつも出勤時に「3時のおやつ」という事でローソンの「大きなツインシュークリーム」(多分これが一番スイーツでコストパフォーマンスがいい)を買ってくるのだが、忙しすぎて食べるのを忘れて帰宅するほどだった。


 そして、帰宅の車の中で、心配していた「咽頭不快感」が出現したのに気付いた。


 前日と同様に自宅では隔離状態。寝る前には熱感を自覚し。体温を測ると37.6度だった。布団に入ってから、発熱時に感じる「寒いけど暑い」感覚があり、「まずいなぁ」と思った。



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