第10話

【 鮭とかえる 】

◎ 第2章 夏

第7話 田んぼ

鮭くんたちと別れたあと。

しばらくは悲しみに沈んでいたかえるくんです。

が、また会えるその日まで、元気に、過ごさねばなりません。


「さて、どこへ行こう?」


どこに行こうと悩んでいたかえるくんの目線の先に。

群れて泳ぐメダカたちの姿が。

一列に並んで進んでいきます。

みんな、なにやら楽しそうです。

どこへ行くんだろう?

かえるくんもそのあとをついていくことにしました。


メダカたちは、川の支流に進み、支流からさらに小さな流れの小川に進んでいきます。

メダカたちに遅れまいと一生懸命に泳ぐかえるくん。

川の流れもだんだんとおだやかに。

小川の先はやがて流れのほとんどない浅い水の場所に着きました。

水が張られた田んぼです。


ここには、たくさんの小さな生きものがいました。

先ほどのメダカの子どもたちが集まって学校を作っています。

かえるくんとはちょっぴり姿かたちの違うかえるもいます。

そんなかえるの子どもたちの学校もあります。


めだかの学校やかえるの学校で、いっしょに遊ぶかえるくん。

めだかの学校の先生が言います。


「なかまで仲良くしましょう」


かえるの学校の先生も言います。


「なかまで仲良くしましょう」


仲間は同種族ばかりの学校です。



「みんな違うからおもしろいんだよ」


かえるくんの話はなかなかみんなに受け入れてもらうことはありませんでした。


そんなある日。


いつものようにめだかの学校やかえるの学校で遊んだかえるくんです。

たまたまあぜ道をぴょんぴょんと歩いていたときです。


突然。


目の前には見たこともない大きなヘビが現れました。

舌をぺろぺろとしながら音もなくかえるくんの目の前へ。


じっとかえるくんを睨むヘビ。

その鋭い目つきにまったく動けなくなったかえるくんです。

鮭くんといっしょにいたとき、とかげに襲われたことを思い出しますが、あの時よりも圧倒的な恐怖感。

はるかに危険です。

右に逃げても無理。

左に逃げても無理。

飛び上がっても無理。

どうしてもヘビの口の中に入っていく未来しか浮かびません。

さすがのかえるくんも諦めて目を瞑りました。


(鮭くん、ごめんね)

こう呟いたかえるくんです。

ヘビが大きな口を開けてかえるくんを飲み込もうとします。

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