おわりに

結果

 あの日から三年。

 怪異調査なんてちょっと……かなり変な自由研究を発表して、クラスを騒がせてから三年。

 先生からも、少しヤバい奴だと思われてたけど無事大学には合格して、今も勉強に励んでいる。

 そんな俺が、再びじいちゃんがいる実家に戻ってきたのはお祝いをするためだ。

 今年俺は、20歳。

 七つ星家の伝統ではなく、法的に成人を認められる年齢だ。

 じいちゃんは三年前にもお祝いをしたのに、また盛大にするみたいだ。


 本音を言うと、あまりここに来たくはなかった。


 怪異を恐れているわけじゃない。

 あの日、歴史を変えてしまって怪異を六つにしてしまった罪悪感でもない。


 思い出すんだ。

 彼女を。

 あんな別れ方をしてしまったから。


 ずるいじゃないか。

 素直に言ってくれれば、俺だってそれなりに返事ができたのに。

 まだ二人の思い出はあまりなかったけれど、それでもこれからがあったのに。


 どこを探しても、彼女はいなかった。

 あの石に触れても、彼女は出てこない。

 怪異録だって、彼女抜きで六つしか書いてない。


 もう会えないんだと思うと、余計に悲しくなる。

 それに、悔しくなる。

 彼女の気持ちにもっと早く気づけたらと思うと。


 どうして彼女は最後にあんなことを言ったんだ。

 なにも言わなかったら、俺もこんなに苦しまなかったのに。


 もう怪異録からは消えているのに、深い呪いを俺の心に残した彼女。

 幸せにやっているのだろうか。


「明ー、準備できたわよー」


 母さんが呼びに来た。

 暗い顔してちゃ、いけないよな。

 今からお祝いなんだから。


「今日は向かいの木村さんとそのお孫さんも来てるんだけど、いいかしら?」


「え、ああ、うん」


 木村おばあちゃんと言えば、彼女に会いに行く前に取材をしたよな。

 忘れようとしてるのに、こんなところにも思い出が。

 だから帰ってくるのは嫌だったんだ。


「じゃあ、ご挨拶しなさい」


 俺は広い客間に入る。


「こんに……」


「明ー! 久しぶりだな!」


 元気がいいお孫さんだな。

 ……一瞬懐かしい彼女が脳裏をよぎる。

 思い出すような声だったんだ。


「あら、明と花華ちゃんは知り合いなの?」


 そんなわけない。

 初対面だ。


「うん、前に会ったことがある……のじゃ」


 のじゃ?

 その特徴的な語尾。

 うん、忘れもしないぞ。


「まさか、お前……!」


「にひひ」


 その笑顔は、俺と大富豪をしていたときの意地悪なものだった。


(完)

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七つ星家の怪異調査(のメモ) 砂漠の使徒 @461kuma

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