調査結果 その3

1.はじめに


 第三の怪異は「魂の叫びを聴く者」だ。「七つ星怪異録」の説明によると、この怪異は「現世を血に染める」そうだ。そして、「その者の手にかかりし死すべき魂、現世に残りさまよい続ける」とも書かれている。このことから、この怪異は人の命を奪う危険なものであることがわかる。しかし、その詳細は不明である。また、魂がさまようとはどういうことか。謎多きこの怪異の手がかりとして、まず私は「血に染める」に注目した。


2.過去の記事


 私は図書館に出向き、新聞記事の検索をした。怪異録の記述が本当なら、大事件となっていると考えたからだ。場所はおそらくここ開封村であると推定し、「開封村」と「事件」というキーワードで検索する。その結果として、「30年前の悲劇 開封村連続殺人事件の記録」と見出しがつけられた記事が出てきた。殺人事件が前述の血に染めると関連していると考え、詳しく読むことにした。内容は見出しのように開封村で起きた連続殺人事件についてだった。私はこの事件について聞いたことがなかったので、整理のためにここに要約を記す。

 30年前の8月13日、ここ開封村で一人の死体が見つかったと警察に通報がある。時間は真夜中。警察が到着すると、通報者である女性も死亡していたそうだ。さらに、その警察官ものちに死亡することになる。このように、次々と被害者が出たこの事件は、村民の半数が死傷する結果となった。

 ここで、記事でも注目されていることなのだが、事件の数日前から村周辺で動物の死体が頻繁に目撃されたようだ。私はこれが、犯人が殺人をする前の予行練習として動物を殺害しているように感じた。

 そして、もう一つ不可解なことは死体が大きく動いていることだ。死体が引きずられた跡がかなりあるのだ。犯人は次々と村民を襲っているので、そんな時間はなかったはずだ。これについては、後述する。


3.襲撃


 上のように、私が図書館で調査をしていたときだ。突然カラスが窓にぶつかって死んだ。そして、帰り道では見知らぬ野良犬が私を襲い、その最中に目の前で死んだ。どちらも大量の血を流しており、何者かに傷つけられたようだった。動物が死ぬこの状況は、前述の事件に似ている。

 さらに私が帰宅し、トイレにいたときだ。誰かが家に侵入してきた。そのとき家族はおらず、私もトイレにいたので、留守だと思われたのだろう。危険を感じた私は、トイレに籠ることにした。すると、その泥棒が突然叫んだ。再び何者かが侵入したようで、物音や声がした。しばらくの沈黙の後、私が外に出ると泥棒の死体があった。もっとも、これは私の幻覚だと考えられる。後にわかったことだが、この死体の目撃者は私だけで、家族はそのようなものを見ていないと述べている。話を戻そう。私はその幻覚に動揺し、外に出た。そこで犬に出会ったのだ。さきほど私の目の前で死んだ犬にだ。ありえないと思うかもしれないが、その犬は奇跡的に生きていたのだ。しかし、かなり凶暴になっており、私は身を守るために家に帰宅した。だが、家ではさきほどの泥棒が起きており、双方に襲われることになった。ゆえに私はなんとか攻撃をかわし、裏山に逃げた。


4.地下室


 裏山で私は犯人らしき人物に出会った。背丈は二、三メートルほどあり、右手に鉈を持っている。私を見ると、それを振り下ろした。たしか「七つ星、殺す」と言っていた。身の危険を感じた私は、すぐにその人から逃げた。そして、道中で謎の地下室を発見した。そこに入ると、一冊の本が置いてあった。タイトルは「七つ星追いし者止める術」。そこには七つ星家を狙う忍がいることが書かれていた。これは推測だが、私が山で出会った人物とこの忍、三つ目の怪異は同一人物だと考えた。なぜなら、山で出会った人物は私を狙ってきているからだ。また、この本には「又奴に殺されし者、魂今世に残りて屍のまま徘徊す」とある。この特徴は怪異録の記述と似ており、根拠となる。ここで全てがつながることとなった。最後に弱点として、後頭部が挙げられていた。私は身を守るために、この怪異を攻撃することを決意した。

 その後先ほどの地下室を落とし穴として活用し、動きを止めることに成功した。その隙に後頭部をスコップで殴った。動きを止めた彼の体は、地下室に落ちていった。今もその中だろう。もし興味があれば、見ることもできるだろう。一つ注意点として、扉の上の石には二つ目の怪異が宿っていることを覚えておいてほしい。


5.おわりに


 以上の出来事はどこまでが本当のことだろうか。今になって振り返ると私が出会った人物が殺人犯だという確証はない。私が見た死体もきれいに消えていた。もしかすると、全ては幻覚だったのかもしれない。しかし、私が見た生々しい記憶は今も記憶の片隅に残っている。

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