第31話  柚花への気持ち

「久しぶりな感じですね。この映画館も」


「そうだね、最近来れてなかったし。今日はワンデーパスだし思いっきり楽しもう!」


「楽しもーう!!」


 日曜日の朝イチで僕と柚花はお馴染みの映画館へと足を運んでいた。




 昨日の夜は、どのスケジュールで映画を見るか決めたのだが、結果的に2時間も話し合うこととなってしまった。


 なぜかと言うと……2人で合計7つも見たい映画があったからだ。


 その内の5つは見たい映画が同じ……相変わらず映画の趣味は同じみたいだ。


 結局5つしかどう頑張っても見ることができなかったので、公開したばかりのやつを今度にして前々からやっているやつを見ることにした。





「何か食べたいのとかある?」


 映画館で僕は柚花に恒例の質問をする。


 ちなみに僕が食べたいのは、久しぶりだしキャラメルポップコーンがいいと思っている。


 食べたいものがあるなら、2人で別々なのを頼べばいいと思う人もいるだろう。けど、買うとしても2人で話し合って決めると言うのが2人で決めた映画を見るときのルールなのだ。


「そうですね……私は久しぶりですからね、キャラメルポップコーンが食べたいのですが。凛くんは?」


 やっぱり僕と柚花は考えてるいることが似ている。


 こう言う時に、僕が食べたいと思う物は大体柚花に聞くと同じものも食べたいと言ってくる……時々違う時もあるけど。



「僕もキャラメルがよかったんだよね。大きいやつ買っちゃおうか!」


「ふふ、やっぱりですか。そうですね!買いましょう」


 僕たちは色々なことで意見が合う。

 だからこそ、ここまで仲良くなれたのかなとは思う。




 映画が始まりそうだ。

 浮かれていないで、映画に集中しようと思う。









「楽しかったですね」


 5本全ての映画を見終わった僕たちはファミレスへと来ていた。


 時間も21時を回っている。今から家帰ってご飯を作ると言うのは、少しばかりめんどくさいのだ。


「そうだね!やっぱり映画は最高だって思った」


「そうですね!でも、ここまで楽しめてるのは凛くんと一緒だからだと思います。本当にありがとうございます」


「なに言ってるんだ。僕だって柚花と一緒に見れてるからだよ。こちらこそありがとう!」


「ふふ、ならこれからもよろしくお願いしますね」


「もちろん!よろしくね」


 何度も言うようだけど、柚花と見る映画はやっぱり面白い。



 だからこそ、時々僕は思う……もし、あの時出会っていたのが柚花ではなかったのならどうなっていたのだろうかと。


 ここまで仲良くすることは出来ていたのだろうか。


 一緒にご飯を食べたり、同じバイト先で働いたりしていただろうか。


 お互いで名前を呼び合う仲までいけただろうか。


 実際のところは起こってみないとわからないだろうし、柚花とあの時に出会った……それがこの結果なのだが、それでも僕は断言できる。


 柚花でなければ僕はここまで心を開かなかっただろうと。



 誰かと付き合うとかってよくわからないけど、付き合いたいと言う感情がその人を独占したいと思うこととイコールであるのなら僕は柚花と付き合いたいと思う。


 それほど僕は柚花のことがもう好きなのだ。


 だが、柚花は僕に対してそう思っていない可能性がある。

 いつも意見が合うし、ここだけ意見が違うとか悲しすぎるけど、男に苦手意識を持っている柚花のことだ可能性はゼロではないのだ。


 これからもこの関係を続けていくには、柚花への気持ちを今は隠しておくべきだと思った。


 柚花が離れていく方が怖いから。




「あの……凛くん」


「ん?どうした?」


 まさか……心の中を読まれていた??


「夏休み一緒に遠出するって約束……行くなら海と山どっちがいいですか?」


 よかった、違ったみたいだ。

 てか、本当に僕と行ってくれるのか……嬉しいな。


 海と山か。それなら答えは決まっている。


「僕は……」


「あ、待ってください。一緒に言いたいです」


「あ、ごめんごめん。じゃー言うよ。いっせーのーせ」


「海」「山」


「「え……」」


 まさか、この大事なタイミングで意見が分かれるとは……。


 とりあえず僕の心の中で、当分の間は柚花への気持ちを隠すことで決まった。


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