【 1つ目の選択 】


 私が記憶している限り、小さい頃に両親から1つ目の大きな選択を迫られた。

 あれは、小学校6年生の時だったと思う。


美琴みこと、お前は父さんと母さん、どっちについて行きたいんだ……?」


 父は、娘の私にそう選択を迫った。


 父と母は、離婚しようとしていたんだ。


 父は大工をしていて、この家も全て父が木だけで作り上げた、こだわりの『昔ながらの木造家屋』。

 父について行けば、経済力は十分あり、生活には何一つ困ることはない。


 でも母は、ずっと専業主婦だったこともあり、これから働くとなると、とても今の生活を維持することは難しいと小さいながらにそう思った。

 それに母とは仲が悪く、父とはとても仲が良かったこともあり、私は父の問いにこう答えたんだ。


「パパ……」


 そう私が言った瞬間、母は声を上げて床に泣き崩れた。

 ショックだったんだと思う……。

 いつまでも泣いていた。


 でも、そんな難しい選択を迫られた私自身もショックだったんだよ……。


 結局、母は一人家を出て行った……。


 それから、母とは一度も会っていない。

 どこにいるのかも分からない。生きているかさえも……。


 父を選んだ理由には、経済力だけでなく、もう一つ理由があった。

 この時、私には好きな人ができたんだ。

 その人と今の生活水準を落とさずに、付き合って行きたかったことも理由の一つ。


 辛い選択ではあったけど、あの時、母を選んでいたら今ここにいたかどうかも分からない。

 命があったかさえも……。


 私の人生で、まず一つ目の大きな選択がこれだ。



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