第7話 ギックリ腰はガッカリ腰

40歳を過ぎてから毎年のようにやらかす。


1回目、春 靴下を履こうとした瞬間にギクッ

2回目、秋 タイヤ交換でタイヤを棚から降ろそうとした瞬間にギクッ

3回目、春 職場のデスクの引き出しに手をかけた瞬間にギクッ

4回目、秋 車内から荷物を取り出そうとした瞬間にギクッ


2回目のタイヤ以外は、生活の中によくある何気ないワンシーンだ。

 初めてギックリ腰をやったときは、その痛さに運転ができなかった。屈んで運転席に乗れず、ドアの前で一人うずくまっていた。会社を休むこともできず、地をはって出勤した。大概周りから言われることは、痺れていなければ大丈夫というお見舞いの言葉だ。


 確かに手足の痺れは無いが、何をしても痛いのだ。痛いのを我慢して出勤していると、動けるんだから大したことないという認識をもたれてしまう。長時間座って立ち上がる時には激痛のあまり腰の曲がったお爺ちゃんみたくなる。


 厳しい視線が飛ぶ。


 「痛いアピール?パフォーマンス?」


 ギックリ腰を経験していない奴らの思考回路はこんなものだろう。


 とんでも無い奴もいる「ギックリ腰ってメンタルからくるんでしょ!気持ちで治るんじゃないんですか?」

 

 ガッカリ発言、アホは放っておこう。


 病院でレントゲンを撮っても異常は見られないことも、メンタル説に拍車をかける。


 「昨日、病院で注射を打ってきました。」と同僚に報告すると、大概、いたそーと声を揃えて同情をするが「仕事できないアピールもここまで」と同僚の単純思考はフル回転する。


 事実、外科で注射をして薬とシップをもらうと、2週間もあれば治ることが多い。

痛みが取れると、パキパキ動き出せる。


 腰の痛みとセットで周囲から受ける痛みもプラスされるのが、ギックリ腰であり、ガッカリ腰でもある。


 






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雑談力 ビダイ物語 @kamibuu04

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ