37話

「おいおい、なんだなんだ」

「またエリスか」

「まったくあいつは・・・・・・・・・」

「まぁまぁ騎士団長、少し落ち着かれよ」


 ある者はやれやれと苦々しく。ある者は和やかに見守り。ある者は悩まされる。

 

「あ、おいエリス! 今度俺達にも体術教えてくれよ!」

「わかった、じゃあ僕も弓との闘い方教えて!」

「あ、エリスちゃんこんにちは」

「ごきげんようエリス様」

「エリス様、これお礼です。クッキーを焼きました」


 また、ある者は強さに敬意を持ち。王子と国王を救った英雄として。親しい隣人として接している。

 

 王宮の人々は、エリスにすっかり慣れた。


 それは王都にとっても同じだった。


 敵国の謀略を防ぐのに尽力したエリスは、すっかり王都の噂の的だ。しかも女の子で、武器も無しに素手で成したのだから、人々は手放しで称している。


 エリスを称える詩が紡がれ、王国を越えて各地に広がっていく。


「ウィリアムごめん、大丈夫?」

「大丈夫なわけあるかぁ! 城直す前に俺が壊されるわぁ!」


 けど、当のエリスはいつもと変わらず、呑気に王子を振り回しながら、愉快で非常識で物騒な日常を送るのだった。

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