第10話 ロバの話。

 古代ユダヤ時代の寓話~ロバの話。

 むかし、ロバの背中に乗った親子がいました。

 親子はローマに向かって旅を急いでいました。

 あるとき、親子は寂れた町中でこんなことを言われました。


 子供のロバに親子2人も乗るなんて、なんて可愛そうなことをするんだ。見ろよ、ロバが泣いてるじゃないか?


 親子は仕方なくロバから降り、ロバを引いて歩くことにしました。

 5里ほど歩くと、今度は通りすがりから、こんな暴言を受けました。


 あの親子はバカなのか?

 せっかくロバを引いているのに、なぜ誰も乗らないんだ?

 親子は相談して、子供だけロバに乗ることにしました。


 途中、岩陰で休もうとしたところ、今度は女性達が眉をひそめ、親子にこんなことを言いました。


 あの子供はなに?

 年老いたお父さんをロバに乗せず、自分だけ楽をしようとしている。


 仕方がないので、今度は父親がロバに乗りました。

 夕方になり、またしても親子に、こんなことを言う人が現れました。


 なんて可愛そうなことをするんだ。

 見ろよ、ロバが泣いてるじゃないか?

 仕方ないので、親子は、ロバを背負って川を渡ることにしました。


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