コみケッとスペシャル5 in 水戸~或る同人サークルの忘備録

漆目人鳥

第1話 水戸に行ったのは初めてだったので、何も知りませんでした。

2010年3月21日 (日)・22日 (月・祝日)

水戸、旧京成百貨店跡の廃ビルにて、5年に一度のコミックマーケットスペシャル版『コみケッとスペシャル5in水戸』が開催されました。


楽しみにしていたんですよ~。


うちのサークル姫蓄亭は、スペシャル4から参加させて頂いているのですが、

S(スペシャル)4は『24時間コミケ』!だった。

ビックサイトを不夜城と化し、設営からイベント撤収までを24時間で行うと言う荒行に加え、なんと言ってもそのスペシャルさが『狂ってる』レベルの文化祭と言ったイベントでしたからねぇ~。

S5の期待はただものでは有りませんでしたよ。


今回のテーマは『まちおこし』。

と、言うことで、観光協会や自治体に開催地を公募。

決定したのが茨城県水戸市という。


余談なんですけど、企画書を提出した市役所の『町おこし対策室』みたいな部署はコミケを知らない人ばかりで、

たまたまそこに一人いた奇特な方が、まちおこしの会議中に、自暴自棄になって、

「もう、『コミケ』でもやるしかねんじゃね?」

って言ったのが発端になり、どんどん話が広がって……。

的な事を風の噂で聞きましたが、真偽のほどは定かで有りません。

今度聞いてきます(笑)


イベントそのものが始まる前から、人気作家さん達のイラスト入りパッケージによる地元特産品をネットや地元で販売。

街の大通りに飾るスタンド花の設置協力者をつのったり、会場のみならず、ライブハウスやゲームセンター、果ては水戸芸術館の会議室をつかってのシンポジュウムやディスカッションまで行うという!

そんな情報が、じつは開催前の年の夏頃からネットのコミケ公式サイトでつぎつぎ発表されていたのは、知らない人はまったく知らなくていい事実です!


前回S4に出店した際、じつは猛烈に後悔したことがあった。


それは何かというと、『なんで出店してしまったんだろう』と言うこと。


いや、ホントに同人誌即売会とともに行われた一般有志による企画物が半端なくすごいものだらけだったのだ。

早食い大会有り、ミニ四駆あり、男の娘メイドあり、西洋鎧の模擬戦あり、ライブあり、ちゃぶ台返し有り、痛車の展示あり、ホスト倶楽部あり、同人誌図書館有り、コスプレ衣装貸し出し有り、ダンボール売ってたり、ゲーム配ってたり……etc

とても24時間では回りきれないイベントが目白押しで、そのうえ、24時間どっかかしかで突発イベントが発生……開催されているという。


正直、本売ってる場合じゃない状態だった。


だから、本当は今回、サークルとしての参加はせずに純粋にコミケの一般参加者として、遊びに行こうかとも考えていた。


ところが……。


フタを開けてみれば、驚愕の2日間開催!(過去4回の開催日は1日)

なら、ダメもとでサークル登録しておいて、せっかく水戸まで足を伸ばすのだから、落ちたら1日は水戸観光、受かったらサークル参加!残り1日はコミケに一般参加!

てな事を考えた。

結果としては、なんと今回、申し込みサークルがまさかの全員合格!という実行委員会の粋な計らい!

やばい……。

コミケが始まる前からデンジャラスなくらいにイベントテンション急上昇!

なにか、マッドな予感を感じながらも、わくわくしながらその日を待ったのでした。



水戸入りはコミケ前日の20日 (土)とした。

出席者は俺と店主。

いつものコスプレイヤー兼売り娘のキッコは仕事でパス。


今回は、コミケにサークル参加する事よりも、コミケで一般参加として遊ぶことを最優先と考えたので、

サークル外からの応援は呼ばず、2人の参加でヨシとした。


それと……。

荷物の運搬や機動性を考えれば、絶対車の方がいいんだけど、やっぱりこれもとことん遊び尽くそう!と言う思いから、帰りはへたばってもいいように交通手段は電車とすることに。

実は、コミケットスペシャルという催しは、唯一、公認で会場内やサークルスペースでイベント中に酒が飲めるコミケ。

多分飲むだろうし、心底飲まなきゃ楽しめないし、という思いがあったので『車じゃ帰ってこれないじゃん!』てな心づもりがありました。

それに伴い、非常に残念なことだったんだけど、

水戸までの運搬の際のアクシデントや、到着してからの移動の際のアクシデントがあまりに未知数(飲んでるし……)だと言うことで、

いつもの『看板娘(カスタム・ドール)』風小は今回お留守番。


コミケにサークル参加してからずーっとS4の時も何とか出席させていただけに……ホントに残念でしたが。

風小の皆勤賞これにて終了です(笑)


千葉から水戸まで電車で行くとなると、大まかに考えて二つの行き方が有る。


一つはJR成田線の各駅停車を使って、ただひたすら鹿島神宮方面をめざし、電車に揺られて3時間~3時間30分!

これも情緒があって捨てがたかったのだが、喫煙をする店主が3時間超えの禁煙に耐えられそうにないのと、コミケが始まる前に疲れてもねぇ……と言うことで、(ちょっとばかり、水戸でやりたいこともあったし)柏に回ってフレッシュひたち17号を使うことにした。


これだと一気に1時間短縮の2時間で水戸到着!

それでも長いけど……orz


予定の時刻に店主と地元のJR駅前で待ち合わせ。



柏まで出て、フレッシュひたちに乗り換え。

フレッシュひたちのキップは事前に『指定席券』を購入済み。

うーん、キップを購入する際に、『自由席』にするか『指定席』にするかで、すっごく悩んだんだけど、

今回頒布分の新刊は印刷会社のポプルスさんにお願いして一足先に会場へ搬入してもらっていたのだけれど、お祭りらしく売り場を賑やかにしたいし、風小を飾るスペースを確保する必要も無いことだし、在庫本を少し持っていくことにした。

とはいえ、本は5種類ばかり有るので、小さなダンボール一個の手荷物に。

それと二泊三日のお泊まりグッズとスペースの飾り付け用品一式が入ったトランクケース一個。トランクの方は大して重くは無いのだが、ダンボールに入った本の方は結構な重さに。

そんなわけで、折りたたみ式のキャリーにダンボールとトランクをくくりつけ、牽引で移動。

で、もし、自由席で座れれば問題ないんだけど、座れない、最悪立つ場の無いくらいになったら、この荷物どーする?

とか、考えたら、500円追加で指定席買ってました。

そしたら、それが大当たり!

うちらの乗ろうとしたフレッシュひたち17号の到着の時間が迫ってくるに従って、

隣駅で自由席の乗車率100パーセント超えました!のアナウンスがホームに繰り返される。『もう自由席には座れませんぜダンナ』と言うことらしい。

で、柏の駅から自由席に乗り込もうとしているお客さんも結構ホームにたまってる。


ラッキー!つーか、備えあればナントやら?

さい先イイかもとか思いつつ、フレッシュひたちに乗り込んで一路水戸へ!


特急ですしね、止まる駅少ないし、リクライニングな席に座りっぱなしだし、あっという間に着いちゃいました。


で、まず、1日目に少し水戸の街でやりたいことがあった。


ソレは、スタンプラリー!


『コみケッとスペシャル5in水戸』で姫蓄亭が参加する第1イベント!

水戸漫遊1日フリーきっぷによるスタンプラリー!


茨城交通 (株)のバス1日フリー券とコラボしたスタンプラリー台紙に、バスで周遊しながら、6カ所のスタンプ設置場所


・川又書店駅前店

・弘道館

・偕楽園レストハウス

・映画「桜田門外ノ変」オープンセット

・プレビジョイカム水戸50号バイパス店

・南町自由広場(ただし3/21、3/22のみ)


各場所に設置された人気作家さんの原画によるスペシャルスタンプを押印!

見事6カ所を回りきればコミケスタッフが『よかったね』と言ってくれて、達成感による喜びが、

……ちがう!

レアな景品と交換出来る!と言う訳です!


もちろん、周遊券は購入済み!事前にアキバのとらのあなまで行ったんだぜ!

水戸以外で買おうとすると、そこしか売ってねぇのダゼ!

もちろん水戸まで来れば普通に茨城交通さんの水戸駅前案内所で買えるんだぜ!

売り切れるんじゃないかと思ったが、そんなことは無かったぜ!


と、なれば手荷物がじゃま。

水戸駅南口よりのコインロッカーへと移動。

ところが。

コインロッカーの空きが無い!


ええー!なんでぇー?と、一瞬思ったけど、もう時間的に昼に近かったし、そうであっても不思議じゃないか。


で、店主と協議。


「どうしようか、店主。荷物持ったままじゃバス乗るのも不便だよねぇ」


ラリーのスタンプ設置場所は、なにげに観光名所にもなっており、ラリーをしながら水戸の街を観光してもらおうと言う企てが見て取れたし、もちろん俺たちもその気まんまんだった。


「ホテルへ行くぴょ!チェックインには時間が早いが荷物ぐらいなら部屋に入れてくれるはずぴょ!」


おお!そうか!さすがだな店主!

そう、じつは、今回、コミケに参加するに当たり、『ホテルサトー水戸』さんを予約させて頂いたのだけれど、このホテルが駅から徒歩10分ほどの所にある好立地のホテルさんなのだ!

で、急遽、寝床の下見も兼ねて、ホテルへ。

向かう道すがら、妙な事に気づいた。

土曜日、時間はお昼前……というよりお昼そのものと言ってもいい時間。


なのに……。

駅前から100メートルほどを過ぎると、人がいない。

ほんとーに人がいないのだ。

駅前を走る大通りは、国道50号線。

ここにはさすがに車がひっきりなしに通っている。

と、いうより、そこにしか通っていない。

もちろん、まったく人がいないわけではない。

えーと、なんと言っていいかというと。

街が沈んでいる。寂しい風景。


そんな感じにしか人がいない。

これ、国道の通りが無くなったら、ホントに閑散とした……というより沈黙した風景になっちまうんじゃない?

あちこち改装中なのかと思ったビルや建物は、みんな閉店してシャッター降ろしてるだけだし。

うわっ、なんだこれ?


「なあ、店主……まちおこし……って、これ、かなり本気なんじゃないか?」


店主は何も語らずタダ呆然とたたずむのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

コみケッとスペシャル5 in 水戸~或る同人サークルの忘備録 漆目人鳥 @naname

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ