ロールケーキエクレア

超絶千神斬

俺この娘好き

「ホテル行こっか」

「ほわーい」

 何故?というように少女が首を傾げる。

 とっっても可愛らしい少女である。垂れ目で声が小さくて控えめでくぐもってて聴き心地が良いナチュラルボーンASMRで背が150cmくらいで髪の毛は肩を越し、肉付きは薄めでまな板なのだ。

 愛してる。

「いやなに、俺たちもそろそろ、新たな一歩を踏み出すべきだと思わないかい?」

「ホテルは付き合ってる恋人たちが行くところだよ」

「一緒にホテルに行く友達がいてもいいだろう?」

「それはセフレっていうんだよ?」

 ほんの少し、少女の目が細められる。

 批判じみたその目を喰らい、少年がたじろいだ。

(あ〜、なんでこんな不機嫌そうな顔も可愛いんだろう。結婚してぇ)

 たじろいでたけど別に怖がってる訳ではなかったらしい。

「いや、ほら、こー、責任は取るから。行こうぜ、ホテル。なんだったら付き合って結婚して家庭作るからさ……」

「………………」

 少女が難しい顔をして考え込む。

 少年は考えてるのかわいーと思いながら少女の言葉を待った。

「…………ん、んー、ん〜、違ってたらごめんなんだけど……私のこと好きなの?」

「違うぞー。結婚したい。愛しくてたまんない。大好き超好き結婚したい。何がなんでも一緒になりたい…………あごめん間違えたうそうそ、冗談冗談。大事な友達として、大好きだぜ」

「……………………」

 少年の言葉は他人に理解されることを好まないかのように難解である。他者に理解を要求する上で必要な情報が足りないのだ。別の言い方をすれば日本語が雑なのだ。

 こんなロマンチックのかけらもない言葉に少女がときめくはずもなく、どう振ったものかを思考を回す。

 でも、少女はこの少年が優しいと知っている。

 だから自分が本気で拒絶したら傷ついて身を引くのだろうと分かっている。 

 じゃあ、そうするか。できるか。

 この難解な少年。恋愛対象として意識するかと言われたら、しない。けれど、わざわざ関係を断つほど、心を傷つけるほど嫌いなわけでもない。

 なんとも中途半端で、悩むには、少年の存在が少女の中で小さ過ぎた。あるいは少女自身の存在も、少女の中では小さすぎたのかもしれない。

 ……その葛藤を、否、動力源すらない惰性のような思考を少年は見越して、けれど、どうすればいいかはわからない。

「ともかく、好きだよ。なんの意味もないけどさ」

「……………………ありがとう」

 そこで終わり。

 無理矢理に少年が話の流れを絶って、少女がそれに追従する。

 話題の発展なんてものはなく、退屈な言葉の掛け合いがそこで終わる。

「じゃ、送ってくよ」

「ありがとう」

 何事もなかったかのように、2人は歩き出した。

 覚えていたくないことは忘れる。気にしないように無意識に押し出す。

 少しだけ、似ている2人だった。

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