最近疎遠だった幼馴染を遊びに誘ったら何故か超積極的な件

久野真一

最近疎遠だった幼馴染を遊びに誘ったら超積極的な件

 ファミレスで対面に座る制服姿の俺こと田山祐樹たやまゆうき

 それと親友の葉山瑞樹はやまみずき

 小中と同じだったけど別高で時々会って遊ぶくらいの間柄だ。

 平日ほうかごの夕方なので人はまばらでドリンクバーで粘っても平気。


「話は変わるんだけどさ。ゆかりんって最近どうしてるんだ?」

「ゆかりんかあ……」


 幼馴染のゆかりんこと烏丸からすまゆかりの近況を聞いてみたのだけど瑞樹は何やら思案している。一体どうしたんだ?


「やけに含みがあるなあ。ゆかりんがイジメにでもあったとか?」


 高校で進路が別れたからゆかりんとは疎遠気味だ。

 当初はラインでよく連絡を取り合っていた。

 ただ、いつしか返事が返って来るのが遅くなって来て。

 しかも、ゆかりんから俺に話しかけるメッセージはほとんどなかった。

 だから「あいつは律儀に返信してくれるけど迷惑なんだろう」と実感。

 それ以来ゆかりんとは没交渉だ。

 ただ、初恋の相手でもあり未だに諦められないのは往生際が悪い。


「女子絡みでトラブル・・・・はあったけど、今は元気でやってるわよ」

「ゆかりんは気が強いから人間関係のトラブルはあるだろうな。元気なら良かった」


 初恋の相手が元気でやってるというのは嬉しいことだ。

 でも、俺が居なくても元気なんだなという身勝手で寂しい気持ちが湧いてくる。


「あの子、小学校の時から男子グループに交じって遊んでる子だったでしょ」

「パーティーゲームとか格ゲーとか誰よりも強かったなあ」

「懐かしいわよね……て脱線してる。でも一つ気になることがあるのよね」


 急に神妙な表情になって話し始めた事はと言えば。


「あの子、Twitterの何さんだったか相互フォローの人と仲が良いっぽいのよね」

「Twitterで仲良い相互の人とか俺もいるけど」


 瑞樹にとっては何か不思議なんだろうか?


「はっきり言えないけど、相互の人以上に夢中になってる感じがするのよ」

「相手をアイドル化してるとか?」

「近いかもしれないわね。あの子、idは教えてくれなかったけど」

「相手が瑞樹でも垢バレするのはやだろ。俺だって拒否るぞ」

「それはそうよね。でも、そういうことじゃないのよ」

「というと?」

「あの子って昔っからちょっと危なっかしいでしょ?」

「小学校の頃から割とガチ喧嘩する事も多かったしな」

「でしょ。だから、その人ともトラブったりしないか心配なのよ」

「中学の時も時々ハラハラした覚えがあるからわかるけど」

「でも。私が心配し過ぎなだけだと思うから気にしないで」


 一呼吸おいて。


「ところで。ユウキはゆかりんの事、どう思ってるの?」

「大事な友達だし、また仲良く出来るならそうしたいけどな」


 いかんせん疎遠なんだけどと付け加える。


「なら遊びに誘ってあげたら?ライン交換してるでしょ」

「出来れば苦労しないって」


 高校に入ったばかりの距離感ならともかく。


「でもあの子よくユウキの近況聞いてくるわよ」

「マジか」

「マジよマジ。ユウキに気があるんじゃないかってくらいよく聞いてくるわよ」

「初耳だわ」


 俺への興味は失ったのかと思い込んでた。


「ラインでも色々やり取りしてるんだろうなって勝手に思ってたんだけど」

「ここ数か月ラインでやり取りとか一回もしてないぞ?」


 どういうことだ?


「とにかく、今もあの子がユウキのこと気にしてるのは確実だから」

「誘っても大丈夫だろう、と?」

「そうそう」

「なら誘ってみてもいいか。ところで親友としては警戒はしないのか?」

「警戒?なんのこと?」

「俺も男なわけでゆかりんに変な気を起こしたらとか」


 自意識過剰かもしれないなけど。


「ぷっ。何言ってるのよ。あの子がユウキの事を気にしてる・・・・・・・・・・・・・・・のは確かだし、もしユウキが実は気になってる・・・・・・・・のならいいんじゃない?二人の友達としても嬉しいし」


 見透かすような目線。

 俺がゆかりんの事を憎からず思ってることを気づいてるんだろうな。


「あの子次第だけどね。ユウキと良い仲になってくれるなら私としては万々歳」

「俺の気持ちはともかくとして誘ってみるわ」

「一つ言っておくけど。あの子は結構重いからね。付き合うなら覚悟しなさいよ」


 冗談だろと言いたくなったけどその瞳は真剣そのものだった。


「なんで付き合う前提なのかわからんけど。重いの根拠は?」

「中学で仲が良い友達が居ても、自然と連絡しなくなった相手ならずっと気にはしないでしょ。でもあの子はユウキのこと今でも気にしてるわけで。わかるわね?」

「了解。心に留めとくよ」


 茶化しが一切入らない真剣な忠告。だからこそ本気度が伝わる。

 瑞樹は嘘は言ってないんだろう。

 しかし、俺とゆかりんが疎遠だったのは事実だ。

 だから、彼女も俺の事を……ていう推測は勘違いじゃないのか? 


 その夜。


 Twitterでやり取りしている、高校生の @ykr さんを思い出していた。

 同クラの女子にイジメにあったという事で色々相談に乗っている相手だ。


 元々は同じ年代らしい人ということでフォローした相手だった。

 ただ、よく悩みをツイートしていたので、ほうっておけなかった。

 気がつけばいつの間にかDMで悩み相談を引き受ける羽目になっていた。

 そして、今日もDMで彼女とやり取りをしているのだった。


【なんかまた暗い話になっちゃってごめんなさい】

【いいって。@ykrさんも大変だろうし】

【この恩はいつか返すからね】

【気持ちだけ受け取っておくよ】


 彼女はどうもフォロワー同士の関係なのに過剰に俺に話を聞いてもらっているのを気にしている節がある。そんなところは少しゆかりんを思い出す。自分の感情を処理するのが下手だったから、ゆかりんの話もよく聞いたっけ。


【@t_ykさんも同じ高校生なのに全然大人だよね。羨ましい】

 

 @t_ykは俺のidだ。@ykrさんはこうしてよく俺のことを持ち上げる。


【いやいや。話聞く側だからそう見えるだけ。過大評価だって】

【@t_ykさんはいつも謙遜するよね】

【謙遜じゃないんだけど】

【じゃあ、それでいいから今日あったこと聞かせて欲しい】


 俺の日常生活を知りたがるのもよくあることだった。

 ま、個人情報を渡さなければ大丈夫だろと思ってる。


【そうだなあ……】


 こうして、彼女との交流も今や日常の一部となっていた。

 といってもSNSでのつながり。いつか縁もなくなるだろう。

 でも、それならそれでいい。

 俺のちょっとした言葉でいつか幸せになってくれるなら。


 ただ、最初のツイートが辛そうで世話を焼きたくなっただけだし。


(しかし……)


 ゆかりんも女子同士でトラブルがあったらしい。

 イジメとまではいかずとも似た悩み抱えてるんだろうなあ。

 瑞樹もそこが心配なんだろうし。


 さて、彼女との交流はいったんここまで。

 ゆかりんとのことを考えよう。

 といってもあれこで策を弄しても仕方がない。

 単刀直入に誘ってみよう。


【久しぶり、ゆかりん。唐突なんだけど今度一緒に遊ばないか?】


 瑞樹から聞いた事情について言おうかとか近況が気になってとか色々書き足そうかと考えたけどシンプルにそれだけを書いてみる。


 既読が一瞬でついた。はやい。


【いいよー。ユウキと遊ぶのも久しぶりだからね。どこ行きたい?】


 あっさりと承諾の返事が返って来たので拍子抜けだ。

 瑞樹がゆかりんは俺のことを色々な意味で想ってると仄めかしてたっけ。

 あいつはこういう誘いを心待ちにしていたのかもしれない。


【どっか気合いいれてってガラでもないし。駅前を冷やかす感じでどうだ?】


 駅前にはショッピングモールもあるしゲームセンターもある。カラオケだってあるし、良さそうな喫茶店だってある。地方都市の中心駅ならではの風景だ。


【賛成。冬物の服も買い足したいんだけど、付き合ってくれる?】


 目が点になるかと思った。

 中学時代のゆかりんはファッションに興味がない女子だった。

 女子らしく清潔感は保っていたけど基本的には機能性重視。


【ゆかりんが服選びに付き合って欲しいとか意外過ぎるんだが】


 気が付いたら軽口を叩いていた。


 あれ?既読がついたと思ったら今度は10分以上もの間返事なし。

 これまでぽんぽん返事返って来てたのに軽口が過ぎた?


 少し後悔しているとライン通話の着信。発信はゆかりんだった。


「ユウキ。私だって女子高生なんだけど。人並みにファッションには興味あるよ?」


 開口一番、抗議をして来たゆかりんは、不思議と楽しそうな声色。


「悪い悪い。じゃあ、会うときには期待してるさ」


 ゆかりんとはこんな風なことを言い合う仲だった。

 その空気が戻って来た気がしてなんだか楽しい。


「見てなさいよ。会った時には「ごめんなさい、ゆかり様」と言わせてあげるから」

「なーにがゆかり様だよ。ま、期待しないで待っておくよ」

「その物言い、やっぱりユウキだね。でも、私も楽しみにしてる」


 その後も少しだけ近況を話して通話を終えたのだった。

 園芸部で楽しくやっていることとか。

 ネットワーク対戦系のゲームで夜な夜なバトルをしているとか。

 Twitterで相互の人が面白いとか。


 しかし、本当に彼女は俺のことをどう思っているんだか。

 ゆかりんと約束した日曜日を心待ちにしつつも色々考えてしまったのだった。


◇◇◇◇日曜日◇◇◇◇


(駅前の時計台で待ち合わせとか……デートぽいな)


 周囲を見渡しながら小声でぼやく。

 ゆかりんが待ち合わせに指定したのは最寄り駅の駅前にある時計台。

 ひときわ目立つから待ち合わせ場所にはいいんだけど。

 

(久しぶりに会った友達と遊ぶだけだ)


 なんて言い聞かせてみるけど、初恋相手で今も割り切れていないのは事実。

 ということもあって、自分なりに服には気を遣ってみた。

 ファッションには自信がないので瑞樹に相談したのは秘密だ。

 「やっぱりゆかりんのこと好きなんじゃないの?」

 などと勘繰られたけど、安いもんだ。


「ユウキー。久しぶりー」


 10m先くらいだろうか。

 艶やかな髪を肩まで伸ばした少し痩せた女の子が駆けて来た。

 膝くらいまである桃色のスカートとかヒールとか。

 なんか中学の頃のゆかりんのイメージと全然違うのだけど。

 髪だってあの頃はばっさり短くしてたし。


「お、おお。ゆかりん。久しぶり」


 確かにゆかりん本人だ。

 でも、別人じゃないか?と思うくらい印象が変わってしまっている。

 思わず声が上擦ってしまっていた。


「どう?似合ってる?」


 人差し指で自分を指す様子はチャーミングなんだが違和感がある。

 ボーイッシュなあの頃のイメージと全然違う。

 しかし、それでもいいかといえばいいわけで。


「似合ってる。髪も伸ばしたんだな」


 中学の頃は活発な印象があったけど、ファッションもあって落ち着いて見える。


「うーん。ちょっと心境の変化ってやつ。ユウキのも似合ってるよ」


 心境の変化。

 確かにそう言っていいくらいあの頃のゆかりんとは何かが変わった気がする。


「店員さんに聞いたんだけどな」


 瑞樹に相談したというとややこしそうなので黙っておく。


「だと思った。ユウキがこんなに恰好いいとかおかしいもん!」

「ゆかりんの癖に言いやがる」

「まいっか。それじゃ行こ?」


 言うなり何故か腕を組んで来た。待て待て。

 

「あのさ。こういう腕を組むとかは……」


 胸の感触や肌の柔らかさを感じて色々意識してしまうのでやばい。


「私も女の子なんですけど?」


 ふくれっ面をして言うゆかりんはやっぱり普通の女の子で、自意識過剰を承知で言うなら気のある男へのアプローチにしか見えない。


「まいっか。小学校の頃は手を繋ぐくらいはあったし」


 こちらから異性を意識する言葉は言わない。

 再会していきなり意識するのもなんか負けた気がするし。


「さすがに小学生の頃とは意味合いが違うけど。でも、懐かしいね」


 二人で歩いていると、小学校や中学校の頃の話に際限なく花が咲いて、ときどき肩を寄せてくる様子はやっぱり一人の女の子という感じがする。


「ところでさ。今日の仕草とか色々違和感があるんだけど。狙ってるのか?」

「ちょっと自分の気持ちに正直になってみただけ」

「そっか」


 自分の気持ち。俺への想いなのか、あるいは別の何かなのか。

 しかし、彼女居ない歴=年齢の俺としては。

 いや、初恋で小学校の頃から彼女のことが好きな俺としては、か。

 腕を組んでくるとかいう仕草は破壊力が強すぎる。


 ゆかりんはどういう顔をしてるのやらと思ってみてみると。

 顔を真っ赤にしていて、息も微妙に荒かった。


「久しぶりで言うのもなんだけど無理してるだろ」

「無理?」

「顔真っ赤だぞ」

「そこは言わないでよ。今日は勇気を出すって決めたの。ユウキだけに」

「上手い事言ったつもりか」

「滑った?」

「さあ。とにかく言いたいことはわかった」


 さすがにここまで来るとゆかりんのアプローチは本気なんだろう。

 しかし数か月のブランクがあるのになんでとか。

 ならなんで連絡くれなかったのかとか色々疑問が湧いてくる。


 ゆかりんへの初恋が忘れられない俺も人の事は言えないんだけどな。


 その後もゆかりんの服選びに付き合って、あれが似合うだの、ゆかりんにはこの色合いがいいだのを言い合ったり。ゲームセンターで久しぶりに格ゲーに興じたり。喫茶店でどうでもいい話をひたすらしてみたり。


 気が付いたら日が暮れてもう帰る時間だった。


「そろそろ帰らないとな」

「その前に一つ寄っていい?」

「別にいいぞ」


 たどり着いたのは小学校の頃よく遊び場に使った公園。

 滑り台が一つに砂場、ベンチがいくつかあるだけの殺風景な公園だ。


「ユウキ。今日はデート・・・してくれてありがとうね」


 ベンチで俯いたゆかりんは、さっきまでと打って変わってテンションが低かった。


「俺も楽しかったわけだし。こちらこそありがとな」


 ふと、中学生の時や小学生の時の記憶が蘇る。

 時々こうして彼女とベンチで隣り合って座ったっけ。

 ゆかりんは悩むことも多くてよくベンチでこうやって話を聞いたのだ。


「好きな男の子とこうして久しぶりに遊べて本当に嬉しかった」


 唐突な告白だったけど不思議とすとんと腹落ちしていた。

 今日の彼女の様子はそうでなければ説明がつかなかったから。


「俺も好きな女の子と久しぶりに遊べて楽しかったぞ」


 今のゆかりんが抱えてる事情とか色々気になることはあるけど。

 結局はそれだけのことだった。


「一つだけ気になったんだけどさ。なんで返信あんましてくれなくなったんだ?」


 別に恨むつもりはない。ただ、この機会に理由を聞いておきたかった。


「う。ええと……少し待ってね」


 言葉を選ぶようにして話し始めた。


「あのね。たぶん、ユウキへの返信が遅くなり始めたのは私が人間関係でトラブルにあってたとき。返信しなきゃと思っても、なんとなくしんどくなることが多くて。でも、ごめん」

 

 そういえば、瑞樹も女子同士のトラブルがあったと言ってたっけ。


「そうか。それなら……気楽に話せないこともあるよな」


 俺だって日によってラインの返信をする気力がないことだってある。彼女の心情を想像すれば、返事をするのが億劫になることもあったのかもしれない。


「それでも、好きって言っておきながらちょっとひどかったかも」


 ゆかりんなりに罪悪感があったんだろう。


「いいさ。そのトラブルがどんくらいひどかったのかも本当には知らないし。それくらいで怒るほど器は小さくないからさ」


 それに。


「俺もだんだん鬱陶しがられてるんじゃないかって臆病になって、そもそも会う機会を作ろうともしてなかったしな」


 臆病だったのはお互い様。

 気を遣っているとは思ってたけど、結局のところ臆病だった。 

 会おうという誘いが出来なかったのも決定的に拒否されるのが怖かったから。

 だから、それよりも疎遠になることを選んだ。 


「じゃあ、お互い様だね。どっちも自信がなかった」


 二人で黙って冬の冷たいベンチに座っていた。


「一つ聞いていいか?なんで俺のことをそんなにも?」


 格好よく彼女のピンチを救ってあげただろうか。

 勉強とか運動でカッコイイところを見せただろうか。

 てんで覚えがない。


「昔から、悩みを抱えきれなくなった時にここで話聞いてくれたの覚えてない?」

「そりゃ覚えてるけど。ゆかりんも色々不器用だったしな」


 そんな風景をこうして再現してるのも不思議だ。


「ユウキがいつも味方でいてくれて。話聞いてくれて本当に嬉しかったの」

「そ、そうか……。なら光栄だ」

「本当にユウキは女の子たらしだね」

「別にそんなつもりはないけど。なら、ついでに一つ聞いていいか?」

「何?」


 これを言うのは大変勇気がいる。

 もし外れてたら恥ずかしいなんてもんじゃない。

 ただ、ブランクがなかったかのような今日の気安さ。

 一つだけ説明できる仮説がある。


「間違ってたら笑って欲しいんだけどさ。@ykrってid聞き覚えあるか?」


 聞いた瞬間、うあーという言葉にならない呻き。

 そして、顔を覆い隠して肩を落としてしまった。


「なんでわかったの?」

「瑞樹から、女子同士でのトラブルがあったとは聞いてたからな。あいつはイジメとは言ってなかったけど、今のお前が言ってたこととも@ykrさんの言ってた内容と妙に符合したし」

「ユウキは昔から頭良すぎるよ」

「あとさ。ykrってYuKaRiの子音を拾ったんだろ。そもそも、DMでやり取りしてた時もなんか既視感あったんだよ」


 それなら今日のゆかりんの態度も説明がつく。

 俺は俺で@ykrさんには色々打ち明けていたし。


「落ち込んでた時にあんな風に優しくされたら、忘れられるわけないよ」

「いいけどな。今度からはちゃんと俺本人に打ち明けてくれよな」

「わかってる。でも一つワガママ聞いてもらっていい?」

「別に少しくらいならいいけど、何を?」


 なんか妙に頬が赤いけど。


「キス、してみたい」


 気が付いたら俺をじっと見上げていた。

 心なしか、凄い嬉しそうな顔で。


「恋人になったばかりなのに、いいのか?」

「いいの。それとも、イヤ?」

「そんなことない。俺もしてみたかったし」


 なんか緊張感の欠片もないな。

 抱きしめて瑞々しい唇にそっと口づけたのだった。


「ふわー」


 何やら感慨深げな声だ。蕩けたような表情しやがって。


「なんて表情してるんだよ」

「少しくらい浸ってもいいでしょ?初恋が叶ったんだから」

「それを言うなら俺も初恋が叶ったよ」


 なんで好きになったとかはもう思い出せない。

 単に相性が良かったんだろう。


「ユウキの心の中には、昔から私がいたんだね」

「俺もゆかりんがそこまでってのは意外だったけどな」

「昔のユウキが私のことどう思ってたのか聞きたい」

「じゃあ、ゆかりんも言うことな」

「えー。ずるい」

「ずるいじゃねえよ。おあいこだろ」


 こうして俺たちは、日が暮れるまで昔から今までのことについてあーだこーだと仲良く語らったのだった。


「そういえば、瑞樹には色々報告しないとな」

「う。確かに瑞樹ちゃんには色々心配かけたし」


 考えてみれば今回のきっかけも瑞樹のお節介だったわけだし。

 ゆかりんとは別の意味で瑞樹には感謝だな。


「今度、瑞樹には何か奢ってやるか」

「そうだね。私も瑞樹ちゃんにはお世話になってるし」


 目を見合わせて二人笑いあった俺たちだった。


☆☆☆☆あとがき☆☆☆☆

疎遠からの再会のお話ということで、私の短編では多少珍しい系かも。

とはいえ、いつものノリで気軽にお楽しみいただければ。


楽しんでいただけましたら、応援コメントや★レビューくださると嬉しいです。

ヒャッホーという感じです。ではでは。

☆☆☆☆☆☆☆☆

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最近疎遠だった幼馴染を遊びに誘ったら何故か超積極的な件 久野真一 @kuno1234

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ