第10話 祖母の話を聞くレオナ

「ねえ おばあちゃんって どんな人だった?」


夕食を食べながらレオナとしては出来る限りさりげなく聞いたつもりだった。が 両親は揃ってわかりやすく驚いた顔をした。


レオナが祖母を思う時は 懐かしく大事に思う気持ちと同時に深淵を残していった事に対する恨みがましい様な気持ちが同時に思い出される。その為 レオナが祖母の事を積極的に話題に出すことは無い


両親も 祖母の死をきっかけにレオナが変わったことで祖母の話題を避けるようになっていたから 驚くのも無理は無い。 


「今ね ガーデンでいろいろと教えてくれる友達がいるんだけど その人がお祖母ちゃんの事聞いてみたらいいよって言うから 聞いてみようかなって思って」


師匠と言いたいところだが 友達と言う事にした。

顏を見合わせた両親のうち 先に話を始めたのは母親だった


「そうねえ 行動力がある人だったかな?

お父さんとお母さん お見合いだったんだけど その時のデザートに出た 桃をお母さんが美味しいですって言ったからって 次のデートの時にお父さんが山の様に持たされてきたのよ ビックリでしょ? お祖母ちゃんが生きている間は 毎年送られてきたのよ」


「あれ?お母さんって桃好きだったっけ?」


「そうでもないのにね。思い込みが激しい人だったのよね」


そこに父が割り込んでくる


「レオナの名前だって なぜか男の子だと思い込んでレオにするって しかも大帝って書いてレオって読ませろとかすごかったよな」


そうそう と両親が笑いあい 実の息子である父親が続ける


「愛情深いって言えばそうなんだけどなあ  お父さんと大きい伯父さんは10歳離れているだろ、 父さんが5歳くらいの時に お祖母ちゃん右手をお父さんとつないだら 左手を兄貴、伯父さんとつなごうとしたんだよ。


 15歳の男子なんて 親と手をつなぎたくないだろ? 兄貴に振り払われてお祖母ちゃん なんで?って顔をしてたの覚えてるよ ちょっとずれてる人だったなあ」


 そうだね 私だってもう お父さんやお母さんと手は繋ぎたくないなあ まあ 親にとっては子供なんだろうけど子供にとってはちょっと迷惑だよね っとレオナは想像してクスリと笑う


「3歳のお祝いに行った時よね?レオナをみたお祖母ちゃんが”この子は私の血を継いでいる 視る力がある”とか言って それから また溺愛ぶりに拍車がかかったのよね 観る力って…ねえ?」


母親が 複雑な表情を浮かべながら言い 父親が何かを言いかけた時


「僕も おばあちゃんに会いたかったなあ」


弟のレオンが 不満そうに口をはさんだ


「レオンのレオンって名前はおばあちゃんがつけたんだぞ レオって一番いい名前なのにってずっと言ってたからな まあ 漢字は採用しなかったけどな」


「おばあちゃんは レオンの事今も見てるし 守ってると思うよ」


(レオンの周りに深淵見たことないもの)

心の中で付け足しながらレオナが言うと レオンがそうなんだ!とニカっと笑った。


「おばあちゃんは レオナがタスケテっと言えば 従兄弟たちとくすぐりあっていてのタスケテでも お父さんに叱られてのタスケテでも レオナに何をするのって怒りながら飛んできてさあ それでカン違いって分かると今度は謝られた方が引くほどに謝るんだよな 素直な人でもあったんだよなあ」


父親が懐かしそうに言う そして 少し不安げにレオナに聞く


「レオナ もう おばあちゃんの事いいのか?」

「うん なんかね 分かったの お祖母ちゃん 私の事大事にしてくれているって」

「そうか やっと 分かったか 父さんはずっと前から知ってたんだけどなあ」

「言ってくれたらよかったのに!!」


ふざけた調子で言うがレオナは分かっていた。父親がそれまでも言ってくれていただろうこと、レオナの心が受け取ることが出来なかったことを…そして 思った 私もおばあちゃんと同じだね 大事な所が抜けている と


そうだ 大事な事といえば 塩塩 塩もらっていかなくちゃねっなどと思っていると母親が提案してきた


「いろいろと忙しくて 子供たちずっとおばあちゃんのお墓参り行ってないけれど、もう10年たつのね 今年は皆でお墓参りに行かない?」


レオナは 少しだけ考えて答えた 


「うん 行こう ずーっと行ってなかったもんね」

「僕も行きたい 行きたい」


レオンも言いだして 両親は再び 顔を見合わせて微笑んだ


祖母の家は レオナたちの住む四ツ葉市からかなり 離れていることもあり この10年は法事や墓参りは父親が一人で行っていた。


レオンが生まれたり 引っ越しがあったり 受験があったり 何かと忙しかったのも事実だが 一番はレオナの精神状態を心配してのことであった


レオナが行こうと言えた今年は家族で父親の実家へけると 両親は非常に喜んで計画を立て始めた



その日からレオナは(家に家族がいる時間 明るい時間 限定だが)閉めがちだったカーテンを開けて 外を眺めることにした。まだ 気軽に外に出ようとは思わないが 部屋の中から深淵を視るならば安心だ。


覚悟を決めて 外を観察したレオナだが3日目の今日まで 発見したのは 黒い日傘だったり カラスや誰かが捨てた黒っぽいごみ袋が風に飛ばされていく様子 などで


まだ深淵と確信できるものは見つけていない。


師匠の言う通り 私の見てきた深淵は ほとんどが私の”思い込み”や”早とちり”だったのだろうか?


レオナが ガッカリしたり 安心したり いろいろな感情を抱えながら リビングのエアコンの前で丸くなっていると 母親が「どうしたの?」っと言いながら 手作りのサイダー寒天を出してくれた。



レオンと母親と三人でそれを食べながら レオナはとても幸せな気持ちになった。



 

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