第18話 限界
ミチエは別の日、顔に糸を入れる
さらに別の日、
さらにまた別の日には、首に
アパートの立ち鏡は、こんにゃくをむさぼるミチエを映していた。
「うう、痛い。痛い」
痛みを
ミチエはスマホの画面と鏡を
ネットサーフィンをしていると、
『〇〇は珍獣!××と並ぶと
「……もっとやせなきゃ。もっと
ミチエは鏡を見た。
ミチエには、鏡にブサイクの太った女が映っているように思えた。
『ブス!デブス!』
中学のころ言われた言葉がふと頭をよぎった。
自分は
だけどがんばってもがんばってもどんどんブスになる。どんどんデブになる。
「あとどれだけがんばればいいの」
ミチエは涙を流した。
ガリガリのミチエの前に、医者が座っていた。
「その
「どうしてですか?」
「どうしても何も、できる者がいません」
「そんな。まだ私こんな顔じゃ外も出られません。せめて
「
医者に渡された紙を、ミチエは
「
「いいえ。あなたが『
アパートに戻り、ミチエは医者からもらった
それから立ち鏡に布をかけ、
「あの先生は何にもわかってない。ブスすぎて鏡も見られなくなったのに」
次いでミチエはスマホを手にし、
ある
「あ、すみません。
「はい、
「あ、
「ええ?
道ゆく人たちがギョッとしてミチエを見た。
ミチエは周りの視線が怖かった。
ミチエは背を丸め、髪で顔を
『何あの人。すごいブス』
『太りすぎじゃない?』
みんながそう言っているような気がした。
『ブス!』
『デブス!』
昔聞いた声と似た、男の子の言葉も聞こえた気がした。
ミチエは悲しくて悔しくて、胸が不安でいっぱいになった。頭がぼんやりして足もうまく動かない。
だめだ。飛行機に乗らなきゃ。
人生を変えるんだ。
ちゃんと人間になって誰かに愛されるようになるんだ。
乗らなきゃ。行かなきゃ。
ミチエはめまいがした。足取りがふらふらし、急に視界が灰色になった。
ドサリと、ミチエはその場に倒れこんだ。
遠くで救急車の音がした。
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