春のベンチは

星海ほたる

春のベンチは (ショートストーリー)

 まだ自身しか春を感じられていないだろうと思っていた、寒い立春のこと。あとは枯れた木の多い公園のベンチに一人で座っていた。


 回りには散歩やランニングをする人たちが数人程見えている。

 咲くことも散ることもない桜の木には、みんな見向きもせず、その場を去って行く。


 与は空を見上げ、ずっと先まで高く続く電信柱を見つめながら春風を感じた。

 すると与が座っている隣に、初めて見る同い年くらいの女性が座ってきた。


 ――それから時間はゆっくりと過ぎていき。

 だんだんと心のどこかにあった寂しさが消えていくような気がした。すると突然、隣の女性が立ち上がって与を見ながら、「春が来たような気がしません?」と言ってベンチを離れて行った。

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春のベンチは 星海ほたる @Mi510bunn

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