第15話 吾輩たちはあの電気ネズミの名前をよく知らない 5


 

 「可能性の獣ニャン」


 「ん? それはあなたもよ、黒猫さん!」


 「吾輩がニャンか? あり得ないニャン 吾輩には何の力もないニャンよ」


 「喋るじゃない」


 喋れるから何だと言うのか。


 それでもセレナは、笑いかけてくれる。


 俺もなれるのだろうか。


 「可能性の獣」 とやらに。


 「それにしてもこのラットは、早く政府に預けに行くわね! お留守出来る? 黒猫さん!」


 「それでも、それでも、それでもー! 本当は寂しかったニャン 早く帰って来るニャンよ!」


 「素直じゃないんだから! ダメですよ黒猫さん! 帰ったらいっぱい遊んであげるからね〜」


 「絶対ニャンよ! あとニュール!」


 「まぁ! 食いしん坊なんだから〜」


 そうしてセレナは、政府とやらに電気ネズミを預ける為に外へ出掛けて行った。

 

 ひんやりと冷たい床に腹を仰向けにして、ごろごろとセレナの帰りを待つ俺は、たまに思うことがある。


 今更だが、何で黒猫に転生してしまったのだろうか?


 自分のルーツを忘れてしまったのか……


 まぁ、当分の事は決まってますけどね!


 「死神の使者」


 この汚名を返上させてやる!





 吾輩は猫である。


 電気ネズミとの逃走劇を制して、絶対絶滅のピンチを乗り越えて来た。


 名前の記憶はまだ無いけれど、セレナは吾輩のことも「可能性の獣」の仲間だよって言ってくれている。


 今日は散々な目にあったけれど、セレナと遊ぶ為に優雅にお家でくつろぐ……
















                

                 




             ーーーー黒猫である。


 

 

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