第8話 猫に小判 4



 「もう疲れたわ黒猫さん」


 長い街中をしばらく歩いていた俺とリンは、野菜売り場の近くまで辿りついたのだがどうも、このお嬢さんはご機嫌斜めである。


 そろそろ日が暮れそうな時間であるので、なんとしてもママを見つけなくてはならない。


 「一体ママはどこに行ったんだニャン? 全然見つからないニャンよ」


 「実はね……」


 リンは、バツが悪そうな態度で渋々その訳を話してくれた。


 「実は、喧嘩をしちゃってね 私が勝手に逃げて来ちゃったの ママもきっと怒ってるわ」


 そうだったのかと、俺も呆れざるを得ない。


 だってそれは、今もママは、怒ってはいないと分かりきっているからだ。


 「そんなこと無いニャンよ きっとママは必死になってリンを探してるニャン、保証するニャンよ」


 「本当かな? 信じられないけどなぉ」


 「親を舐めんなニャン 我が子が大事に決まってるニャンよ」


 「信じてみるよ黒猫さん! まだ探してみよ!」


 「よっしゃーー! 走るニャンよーー!」


 そう、親は偉大なのである。


 甘えられていた内が幸せであったように、失った悲しさも吾輩は理解しているのだから。


 

 「リーン! リーン! どこにいるのー? 返事してー!」


 この近くでリンを呼ぶ声が微かに聞こえる。


 「ママだ! ママが呼んでる!」


 そう言って、走り出したリンを俺は夢中で追いかけて行くのであった。




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